[調査・レポート]

運用費が17億円の企業で重大な障害が年1回起こる─JUAS「ソフトウェアメトリックス調査」「企業IT動向調査」から

数字で見るITガバナンス

2009年3月2日(月)IT Leaders編集部

暮れも押し迫った2008年12月29日、JR東日本の新幹線を管理するシステム「COSMOS」に障害が起き、始発から運行できない状態が続いた。8時55分には復旧したものの、ダイヤが大幅に乱れ、運休や遅延によって13万人を超える利用客に影響が出た。ハイシーズンにおける臨時列車も含めた上下400本近い車両の運行データを設定する作業がタイムリミットの午前5時に間に合わず、データに不整合が生じたことが引き金となった。ミッションクリティカルな業務システムでひとたびトラブルを起こすと多大な影響を及ぼしてしまうことを改めて感じさせられた。

人手で開発したアプリケーションプログラム、何台ものサーバー群、ネットワーク機器などが複雑に組み合わさった情報システム。さらにそれを日々運用しているのは人間である。仕様通りに100%稼働し続けるというのは夢のまた夢であり、何らかの障害は付きものというのが宿命だ。

ではこの世の中、情報システムの障害はどのぐらいの頻度で起こるものなのだろうか。興味深い数字がJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)から発表されている。

まず「ソフトウエアメトリックス調査2008」の結果によると、業務システムにおける障害発生回数の1社当たり平均は年間で110回である。ただし、この中にはメールサーバーの応答低下といった軽微な障害も含んでいる。業務に何らかの支障が出る障害は年間平均2.9回(障害数の2.6%)にとどまり、現場では担当者がすぐに何らかの対策を打っている状況がうかがえる。

より深刻な障害については「企業IT動向調査2008」において調査結果が公表されている。441の回答企業の平均を見ると、役員以上が認識した障害数は年間で平均1.57件、このうち事業が中断したケースは平均0.65件(役員が認識した障害数の40%)だ。

ちなみに、回答企業の運用費の平均は10億9800万円である。単純計算で運用費1億円当たりで換算してみると、役員以上が認識する障害数は0.14件/億円、事業中断に至る障害数は0.06件/億円となる。後者の数字に基づくと、年間で17億円ほどの運用費をかけている場合、重大な障害が1回起きるという計算だ。

深刻なシステム障害を未然に防ぐために企業はバックアップ体制の整備など、ある程度の手を打っているのが一般的。それでも障害は根絶できない。障害発生の頻度を少しでも減らすには、テスト体制の強化やそれに伴う人員の増強、サーバーやネットワーク系統の多重化など、さらに運用費がかかることになる。

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