[市場動向]

NTTグループのSaaS戦略─技術持ち寄りでSaaS基盤を開発、品揃えや営業は個別展開へ

SaaS本番へ! Part2

2009年3月11日(水)IT Leaders編集部

NTTコミュニケーションズとNTTデータ、NTT(持ち株会社)の3社は2008年9月、SaaS基盤を共同開発することを発表した。通信や企業システムに実績を持つ巨大グループがSaaS市場にもたらす影響は大きい。どんな枠組みで、どう取り組もうとしているのかをまとめる。

電話やファクシミリを中心とした“レガシー”事業から、IP通信と各種ソリューションを組み合わせた新しいインフラ事業、すなわちNGN(次世代ネットワーク)に軸足を移してビジネス基盤を築きたいNTTグループ。そのNGN上のキラーアプリケーションと位置付けているのがSaaSである。

具体的な行動に打って出たのが2008年9月のこと。NTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)、NTTデータ、NTT(持ち株会社)3社がSaaS基盤の共同開発を発表した。「SaaS Over NGN」の旗印の下、SaaSの普及をグループ全体で後押しすると同時に、グループ内でSaaS関連分野の重複投資を避け、シナジー効果を上げることを狙ったものだ。

3社は現在、SaaS基盤整備に向けて合同で作業を進めている。構成の核となるのはNTTコムの「BizCITY for SaaS Provider」と、NTTデータの「VANADIS SaaS Platform」だ。いずれもSaaS基盤技術として別個に提供してきたものだが、相互の機能を補完し、技術的な連携をとるために、2社の担当者レベルの会合を毎週持ち、さらに月に1回はNTTの担当者も参加して歩調を揃えている。

具体的には「BizCITY」のVPN機能や料金回収機能、「VANADIS」のポータル機能やシングルサイオンなど、現在実現できている機能を生かし、相互に連携をとる(図2-1)。多少の機能の重複はあるものの、今までの両社のノウハウを生かす枠組みと言える。

図2-1
図2-1 共同開発で提供されるサービス基盤のイメージ図

この基盤の上でSaaSベンダーがサービスを提供し、ユーザー企業は、NGN、インターネット、VPN、モバイルネットワークなどから最適な通信手段を選択できる。提供側としての本命は当然NGNとなるだろう。

共通のSaaS基盤の上でどこまでシナジーを出せるのか

もっとも、主眼は「基盤の共同開発」にあり、その後のビジネス展開に大同団結のシナリオはない。NTTの端山聡・研究企画部門チーフプロデューサは「筋道は作った。ビジネスの展開は事業会社の仕事」と話す。事業会社サイドも「自社のアプリケーションをSaaSモデルで提供しながら、一方でSaaSベンダーも募っていく」(NTTデータの神田文男・執行役員 ビジネスソリューション事業本部長)、「NTTデータは、もっとも重要なパートナーだが、他のSIerや製品ベンダーとも組んでいく」(NTTコムの中山幹公・マーケティング部担当部長)といった具合で、基盤に乗せる具体的なサービスは個別に品揃えを図る。バックエンドのデータセンターにしても各社が保有するものを活用する方針だ。

しかも、NTTグループには「排他的な行為はできない」という事情がある。この点で、NTTコムの立場は微妙だ。同様にSaaS基盤を提供しようとしているNECや富士通など国内大手ITベンダーの各社は、通信回線を提供するNTTコムにとって重要な顧客であり、当然、NTTグループだけに便宜を図るわけにはいかない。

他の有力プレーヤーとの連携も各社それぞれの立ち位置で進めている(図2-2)。

図2-2
図2-2 NTTグループはNGNを主軸にSaaS市場で協業を加速

昨年12月に発表されたNTTとマイクロソフト(MS)との提携については、具体的なことはまだ見えてこない。オフィス製品や業務アプリケーションなどのMS製品をNTTのSaaS基盤で提供する形になるのか、MSのクラウド基盤となるAzure Services Platformを何らかの形でNGNと連携させるのか、どちらに聞いても「詳細はこれから」という答えが返ってくるだけだ。しかし、両者は別途インターネット広告での提携も進めており、関係は強まる。

また、NTTコムは、国産アプリケーションソフトの製品連携に取り組むMIJS(メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア)コンソーシアムとの業務提携を発表し、セールスフォースに続くアプリケーションの開拓に積極的に取り組んでいる。

こうした状況下で、NTTグループとしてどこまでシナジー効果が出せるかは、まだ不透明な部分もある。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

NTT / NTTデータ / NTTコミュニケーションズ / SaaS / NGN

関連記事

トピックス

[Sponsored]

NTTグループのSaaS戦略─技術持ち寄りでSaaS基盤を開発、品揃えや営業は個別展開へNTTコミュニケーションズとNTTデータ、NTT(持ち株会社)の3社は2008年9月、SaaS基盤を共同開発することを発表した。通信や企業システムに実績を持つ巨大グループがSaaS市場にもたらす影響は大きい。どんな枠組みで、どう取り組もうとしているのかをまとめる。

PAGE TOP