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「クラウド基盤上でSAP ERPを稼働させる」NECが400億円を投じ、グループ基幹系を全面刷新

2009年5月11日(月)

基幹業務システム NECは海外も含めた主要なグループ企業約50社の基幹業務システムを全面刷新する。(1)クラウド型のシステム基盤を構築する、(2)SAP ERP6.0を採用し、極力カスタマイズをしない、の2点が特徴で、総投資額は400億円に及ぶ。この取り組みを“ショーケース”として、コンサルティングやSI事業に生かす考えだ。

「業務アプリケーションのアーキテクチャの変更は実に20年ぶり。システム基盤の刷新も、メインフレームからUNIXサーバーにダウンサイジングして以来、7年ぶりのことだ。それだけに“紺屋の白袴”と言われないように、次世代のシステム像を具現化する」(NECの情報システム責任者である塚原修 経営システム本部長)。

塚原本部長がこう言い切るだけあって、今回のシステム刷新には気合いが入っている。「400億円」(同)というIT投資額の大きさはもとより、社内のシステム基盤事業部門であるOMCS事業本部の全面協力を得ることや、「業務プロセスの統合検証だけに200人、ピーク時の開発要員は500人を投入する」(同)といったことがそれを象徴する。

実際、構築する新システムは“次世代の”という形容詞が違和感なく当てはまる。クラウド型のシステム基盤を構築して、海外を含むグループ企業約50社のシステムをシェアードサービス化し、「持たざるIT」に移行させるのがその1つ。SAP ERP6.0を極力カスタマイズせずに利用し、業務プロセスの標準化と単純化による効率向上を目指すのも、NECクラスの大企業としては異例の取り組みと言える。「内部統制や国際会計基準に対応して、ガバナンスを確立する」(塚原本部長)という。

クラウド型システム基盤を構築

NECの取り組みで特に注目される点は2つ。1つは「クラウド型のシステム基盤」の構築である。原則として「Express5800/ECO CENTER」をはじめとする自社のサーバーやストレージ、ネットワークといったシステム資源を用い、仮想化技術を用いてプール化。必要に応じてリソースを配分できるようにするものだ(図1)。「リソースを効率的に運用したりする運用管理ミドルウェアを新規に開発する。まだ公表できないが次世代のネットワーク装置も利用してシステムの柔軟性を担保する」(執行役員兼OMCS事業本部長の富山卓二 上級システムズアーキテクト)。

図1 クラウド型システム基盤のイメージ。図の仮想化制御ソフトに相当するミドルウェアは自社開発する。システムの柔軟性を高めるネットワーク装置も開発中

プラットフォームは、サーバーOSにWindows Server 2008、データベースソフトにSQL Server 2008を採用する。基幹系へのマイクロソフト製品の採用について、富山本部長は「マイクロソフト製品の開発者と直接意見交換をすることで採用への確証がとれた。SQL Server 2008では障害対策の機能を強化しているなど、UNIX系のものよりも先進的なテクノロジもある」と語る。「不具合が起きた場合でも、一時凌ぎのパッチなどを適用するのではなく、不具合の原因を究明し、根本的に改修するアライアンスを締結している」(同)。

クラウド型の基盤を構築・運用するのは、自社の技術開発やショーケースという以上に、TCO(システムの総保有コスト)削減という意味がある。「シェアード化によりTCOを2割以上削減する」(塚原本部長)のだ。同時に、各社をシステム運用業務から解放し、IT活用に専念できる体制づくりも支援する。さらにこの基盤を用いたアプリケーションサービスを4月下旬に発表する。

SAP ERPで業務プロセスを刷新

もう1つはSAP ERPを極力カスタマイズせずに導入することだ。そのために今回刷新する「販売」、「経理」、「調達」の各業務に関して合計100以上あった業務プロセスを、5分の1程度まで減らして共通化・標準化する。

とはいえNECクラスの企業になると、業務プロセスの共通化は容易ではない。そこで今回、NECはその際の手順(ステップ、図2)や推進組織体制も決めている。NECにはSI事業やパソコンなどの量販事業、通信機器などの装置事業、半導体事業という4つの主力事業がある。まず各事業にある販売、経理、調達といった「業務機能領域(横軸)」に着目し、販売なら販売だけにフォーカスして、標準業務処理パターンを作成する(ステップ4)。

図2 業務プロセス設計のステップ(上)。下は販売業務のプロセスを標準化する際の手順。業務の洗い出し、共通化、標準化が基本だ

次にSI事業などの「事業領域(縦軸)」ごとに販売・調達・経理のバリューチェーンが最適になるよう、業務プロセスを設計する(ステップ5)。ステップ4と5で作成した標準プロセスの整合をとった上で(ステップ6)、導入するという手順だ。業務や商品によっては必ずしも共通化した業務プロセスにそぐわないケースも考えられる。「業務すべてを共通のプロセスとして実装しようとすると、プロセス自体が肥大化してしまう。業務内容によっては共通化しないプロセスの設計も考えている」(塚原本部長)。

業務プロセスの共通化と定着を目指すため、各部門から「プロセスオーナー」を選出。権限を与えてプロセス設計を進める。さらに各社、各部門、各業務に精通する人材を任命し、プロセスオーナーを補佐する。100名体制で業務プロセスの設計を推進する。

マスターデータを一元化へ

今回、SAP ERPを導入するのに併せて、「SAP Master Data Management」を活用するなどして、マスターデータの統合も図る。「これまでもデータ統合に取り組んできたが不十分だった。大変な作業だが、今、取り組まなければさらに大変なことになる」(塚原本部長)と危機感を持って取り組む。「コードオーナー」を選出し、商品や部品などの各コードを一元化する。グローバル、ローカルで使い分けできるようにコードを体系化するが、約100万にもなる顧客コードについては、グローバルで一元化する予定だ。コードを一元管理するための専任組織「コードセンター」の設置も検討しているという。

ただし、SAP ERPのカスタマイズをゼロにできるかというと例外もある。1外部企業とのデータ連携で必要な場合、2既存システムとの連携で必要な場合、3内部統制上、承認、確認機能を備えた方がいいと思われる場合については、機能を追加することも検討する。

新システムの全体設計は、同社の情報システム部門とOMCS事業部門が共同で進める。2010年4月に経理システム、2011年4月には販売、資材システムを稼働させる予定だ。NECはシステム刷新により、グローバルでの事業状況をリアルタイムで可視化できると期待する。「過去にもグループ会社に同じシステムを導入し、それを実現しようとした。しかし運用を各社に任せていたため、データの連携が困難になっていた」(同)。

だが大手コンピュータメーカーであり、システムインテグレータであるNECにとっても、今回のプロジェクトの難度は決して低くない。ぜひ、成功裏にやり遂げて欲しいものだ。

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