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「“IT版レッドクリフ”の表れだ」ガートナーの亦賀VPが買収劇を分析

2009年6月2日(火)

オラクルによるサン・マイクロシステムズ買収 2009年4月20日(米国時間)、オラクルがサン・マイクロシステムズを74億ドルで買収することが明るみになった。その直前まではIBMが買収するとの憶測もあっただけに、業界には驚きの声が上がった。オラクルの狙いは何なのか。ITプラットフォームの市場動向に詳しい、ガートナー ジャパンの亦賀忠明・バイス プレジデント兼最上級アナリストに聞いた。

今回のサン買収劇についていえば、必ずしも積極的理由が先行したとは言い難い。どうしても欲しい魅力があったなら、オラクルはこの時期を待たずにもっと早く行動に出たに違いない。しかし、ライバル企業IBMがサンを買収するかもしれないというシナリオが出てきた時点で態度は一変。IBM陣営の勢力拡大で形勢不利になることを避けようと、オラクルが一気に話をつけたものと推測される。サンが培ってきた技術力、ブランド力、そして顧客ベースをもってすれば、74億ドルという買収金額は決して高くはない。

それにしても、寝耳に水のしたたかな戦略。しかし、特段驚くべきことではなく、今後ともこうした話は幾度も出てくるだろう。

個別製品の優位性では勝てない

というのも、グローバルな大手ITベンダーは目下、市場で「勝つか負けるか」の熾烈な覇権争いを展開している。まるで“IT版レッドクリフ”といった様相だ。緻密な製品戦略を描き切っての買収は希で、多少なりとも有利にはたらくとの判断があれば、直ちに買収に動くのが最近の傾向である。

ただし、闇雲に手を広げているのではない。ベンダーはもはや製品個別の優位性だけで生き残れないことを十分認識している。大競争を制するのは、ユーザーが必要とする時に必要なITサービスを柔軟に提供する力だ。加速するクラウドシフトが時代を象徴しているように、ユーザーは「経営課題を解決する手段」を欲しているのであり、それを構成するパーツ、つまりデータベースやミドルウエアなどの製品に関心を寄せない傾向はますます強まる。

だからこそITベンダーは、ハードやソフトといったプロダクト志向の発想を捨てトータルでのポートフォリオを描くことに余念がない。ユーザーが真に求めるシステム、あるいはサービスを提供するために、時に大胆な企業買収を通じて自社に不足する機能スタックを寄せ集めているのだ。

クラウドベンダーを標榜?

2008年9月、HPとの協業でデータベース専用機を世に出したオラクルにとって、ハードはHPとタッグを組み続ける戦略もあったはず。だが、結局はサン買収に踏み切り、UNIXサーバーやストレージ装置などの事業を手に入れた。買収当初、目的はOS(Solaris)やJavaであり、ハード事業は早晩売却するという憶測もあったが、今のところオラクルはそのつもりがないことを表明している。

ハードを自分で持った今、オラクル全体としてサービスデリバリーを加速する戦略を練ってくることは間違いない。その時、最も意識するライバルはGoogleやAmazonなど、クラウドを旗印に巨大データセンター整備に力を注ぐプレーヤーだろう。ここにはIBMやマイクロソフトも参入している。すでに100万台超のサーバーを保有して先頭を走るGoogleにキャッチアップするのは並大抵のことではないが、サーバーハードやOS、それらに関わる技術力を自前で持つことは、メガデータセンターを築く上では有利に作用するはずだ。

MySQLの扱いに注目

今回の買収によって、オラクルはオープンソースのデータベース、MySQLも手中に収めた。サンが08年に開発元を買収していたためだ。かつてオラクルは直接の買収を試みたが結実しなかった経緯がある。オラクルにとって、オープンソースDBは煙たい存在であり、今後、MySQLをメジャーストリームから外すべく行動するのではという読みもあるが、それは簡単なことではない。あからさまに“下品な”ことをすれば、オープンソースのコミュニティから総スカンを食らうのは当然であり、想像以上のダメージを被る。しばらく間を置いた後、オラクルが本音の行動をどう起こすか要注目だ。 (談)

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