[技術解説]

ストレージの今─仮想化でストレージの投資を最適化、内部処理の工夫で性能や拡張性を向上

進化するITプラットフォーム Part6

2009年6月17日(水)IT Leaders編集部

企業が取り扱うデータ量の爆発的増加に伴い、ストレージの機能向上に対する要請は厳しくなっている。こうした状況を受けて、リソースの効率活用や高速処理、利便性向上などをうたうストレージ製品が充実してきた。(編集部)

日々のトランザクションデータはもちろん、社員や関係者が生み出す大量の文書データや電子メールなど、企業が取り扱うデータは増加の一途だ。2008年に日本版SOX法が施行されて以降、消去すべきでないデータも増えているから、なおさらである。必然的にデータを蓄積するストレージへのニーズは大きくなる。

一方でストレージへの投資を必要に応じて増やすわけにはいかないのも確か。そうした中で、ストレージベンダー各社は、「投資コストや運用コストを削減できる」と銘打ったストレージ製品を相次ぎ投入している。それは一体、どんなものなのか。Part6ではそこに焦点を当てる。大別すると、(1)仮想化技術を活用してストレージの利用効率や実効容量を高めるもの、(2)SSD(半導体メモリーディスク)やVTL(仮想テープライブラリ)を駆使して、データの性質に応じたストレージ階層を形成するもの、に分けられる。

ストレージの仮想化(1)
ディスク容量の無駄を解消、容量追加も容易に

当たり前だが、サーバーと同じくストレージの有効活用に対するユーザー企業のニーズは高い。例えば新システムの設計時には、将来必要となるデータ量を計画し、容量不足に陥らないようにストレージを用意する必要があった。いったん割り当てた論理ボリューム(OSやアプリケーションから見えるディスク容量)や、論理ボリュームが存在するディスクドライブを、あとで変更することが難しいからである。

結果として、専門家の間では「企業が保有するストレージ容量のうち、実際に使われているのは40%程度」というのが通説になっているほどだ。こういった容量設計の難しさや、使われない記憶領域が多い問題を解消する技術として、ここ数年、普及しつつあるのが、「シンプロビジョニング」と呼ばれる仮想化技術である。

文字通り、「Thin(薄い、少ない)」な「Provisioning(配置準備=容量設計)」を可能にするもの。実際には、ボリュームの容量を仮想化することで、少ない物理ディスク容量を大きく見せる技術である。例えば物理的には総容量1テラバイト(TB)のディスクしか搭載していなくても、OSやアプリケーションからは5テラバイトのストレージに見える(図6-1)。いうまでもなく実際にデータを保存できる容量は1TBしかないが、不足したら必要な分だけ物理ディスクを随時増やしていけばよい。国内外の主要ベンダーが、すでに製品に実装済みだ(表6-1)。

図6-1 シンプロビジョニングの仕組み
図シンプロビジョニングの仕組み
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図シンプロビジョニングの仕組み
表6-1 シンプロビジョニングに対応する主要ストレージ一覧

ストレージの仮想化(2)
複数のストレージを1つに見せる

ストレージの仮想化には、複数の外部ストレージをまとめて、1つの論理ボリュームとして構成する「ストレージ・デバイスの仮想化」もある。ベンダーや機種を問わず、社内に散在するストレージを一元的に管理・運用できる。サーバーとのオンラインを維持したままストレージ側で、データ移行やレプリケーションを行うことも可能だ。

この機能もすでに各社が提供中だが、実現方式はベンダーによって異なる。例えば日立の「Hitachi Universal Storage Platform V」では、内蔵するアレイコントローラにこの機能を持たせている。一方、富士通はファイバチャネルのスイッチである「ETERNUS VS900」、日本IBMはアプライアンス製品「IBM System Storage SVC」で、それぞれ実現する。EMCジャパンの「Invista」は、富士通と同じタイプだ。

こうした仮想化により、アクセスを高速化したり、安全性を高めるためのRAID構成の自由度も高まる。例えば日本HPの「HP StorageWorks EVA」では、論理ボリュームの必要容量とRAID構成(0/1/5)を設定するだけ。EVAのコントローラが物理ディスクを自動的に割り当てる。

関連キーワード

ストレージ仮想化 / シンプロビジョニング / フラッシュストレージ / SSD / VTL

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