[製品サーベイ]

企業向けファイル転送サービス比較─大容量ファイルも手軽に送受信、暗号化などセキュリティにも配慮進む

2009年9月2日(水)IT Leaders編集部

メールでは送信できないサイズの大きなファイルでも、手軽に送受信できるファイル転送サービス。当初は個人を中心に利用が広がったが、ここに来て、暗号化などのセキュリティへの配慮も進み、企業ユースに耐える機能を持ったサービスが充実してきた。最新サービスと選択のポイントを紹介する。

Excelで作成した見積書を取引先に送るといった場合、メールにファイルを添付して送るのが今や常套手段である。ただし、どんなサイズのファイルでも送れるわけではない。企業はサーバーやネットワークの負荷を軽減するため、「添付ファイルの容量は5MBを上限とする」といった制限を設けているのが一般的だ。このため、CAD図面などの大容量ファイルはメールでは送ることができない。

仮にメールで送れるサイズのファイルだとしても、それがとても重要なものだとメールに添付するのは躊躇してしまう。ネットワークの途中で第三者に盗み見/改ざんされる可能性は否定できない。そもそもセキュリティポリシーとして、個人情報を含むファイルや新製品開発にからむ設計データなど、機密性の高いファイルはメール添付を認めないという企業も増えている。とはいえ、逐一バイク便を頼んだり、複数の取引先と専用線を結んだりするのはコスト的に見合わない。

大容量もしくは機密性の高いファイルを安全確実、しかもメールのような手軽さで第三者に届けられないものかー。こうしたニーズに応えるものとして登場してきたのがファイル転送サービスである。当初は、「大容量ファイルの転送」だけを目的に個人用途のサービスとして広がった。最近では、通信路やファイルの暗号化といった2重3重のセキュリティ対策を施し、企業ユースにも耐えられるよう配慮したサービスが増えている。このレポートでは、最新のサービスと選択のポイントを見ていこう。

サービスは大きく2タイプ、サーバーを介して送受信

主要な企業向けファイル転送サービスを表1に示した。

ファイル転送の基本的な仕組みは以下のようになる。まず、送信者は自分のPCでファイル転送サービスの画面を立ち上げる。そこで転送するファイルと送信相手のメールアドレスを指定して「送信」ボタンを押す。すると、そのファイルのコピーがサービス提供業者が用意するサーバーに送られて保存される。同時に送信相手(受信者)には、「○○さんからあなた宛にファイルが届いています」という旨のメッセージ、ならびに、当該ファイルの在処を示すURLを記したメールを自動的に送信する。このメールを受け取った受信者が本文中にあるURLをマウスでクリックすると、ファイルがダウンロードされ、転送が完了する。多くのサービスでは、一定期間、あるいは規定回数のダウンロードを経た時点で、サーバー上に保存されていたファイルは削除される。

送信時/受信時に利用者がどのようなソフトを使うかによって、ファイル転送サービスは大きく2つに大別できる。(1)送受信の双方ともWebブラウザを利用するタイプ、(2)送信者のみ、もしくは送信者/受信者の双方に専用のクライアントソフトが必要となるタイプ、の2つだ。

(1)は、特別なソフトのインストールが不要ですぐに利用できることから、多くのサービスで採用されている方式である。ただし、ファイル転送の途中でうっかりWebブラウザを閉じてしまうと作業はリセットされ、最初からやり直す必要がある。

一方の(2)は専用ソフトのインストールの手間がかかり、送受信者の双方がサービス業者にユーザー登録する必要がある場合もある。だが専用ソフトの持つ豊富な機能は魅力的だ。ファイル転送作業を中断したとしても途中から再開できる「レジューム機能」や、ファイルの到着をポップアップで通知する機能など、各社は利便性を高める工夫を凝らしている。

表1 主要な企業向けファイル転送サービス、表2 主要な自社運用型ファイル転送ソフト(画像をクリックでPDFをダウンロードできます)
主要な企業向けファイル転送サービス

暗号化やサーバー管理で企業ユースに応える

企業が使うという前提に立った場合、もっとも重要視されるのがセキュリティの機能だ。SSLなどを使った通信路の暗号化は、企業向けファイル転送サービスには標準で搭載されている。さらに強固なセキュリティを実現するため、各社は様々な対策を施しており、ここがサービスを選択する際の1つのポイントとなる。

先に見たように、ファイル転送サービスでは一時的に事業者のサーバーにファイルを保管する仕組みを採用するケースが多い。まず気になるのが、このサーバー上でのセキュリティ対策だ。

NRIセキュアテクノロジーズの「クリプト便」は、同社が運営する「ファイアウォールネットワークセンター」と呼ぶデータセンターでファイルを一元管理。ファイルはAES方式によって暗号化して保管するほか、送受信時にウイルスチェックを実施する。さらにファイアウオールやデータセンターへの不正侵入防止装置を設置。センターはセキュリティ資格保有者が24時間監視し、データ漏洩を防止する仕組みを整えている。

こうしたアプローチとは別に、サーバーを介さず、送信者と受信者のピア・ツー・ピア(P2P)通信でファイル転送を実現するサービスも存在する。イーパーセルの「e・パーセル電子宅配便」がそれだ。データ転送用途を前提に暗号化/認証機能などを備えた独自開発のプロトコルを使用。送信側・受信側双方に導入したクライアントソフト同士が直接ファイルをやりとりする。送信途中で回線が遮断された場合に自動で処理を再開するので、通信事情が良くない国の拠点にCAD図面のような大容量データを送るのに向くという。

多くのサービスは送信先として相手のメールアドレスを指定する。この方式だと、タイプミスをした際に、もしそれが実在するメールアドレスであれば誤送信してしまうというリスクがつきまとう。この問題を解決するために、サービス登録者に限ってファイルの送受信を認めるサービスもある。

GDX Japanの「GDX Drop Box」は、ユーザー登録型サービスの1つ。インスタントメッセンジャーのようなインタフェースを持つ「GDXクライアント」をインストールした利用者同士でなければファイルをやりとりできない。相手の在席状況をリアルタイムに確認できるほか、ファイルの受信履歴なども互いに把握できる。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
バックナンバー
製品サーベイ一覧へ
関連キーワード

ファイル共有 / ファイルサーバー / クラウドストレージ

関連記事

トピックス

[Sponsored]

企業向けファイル転送サービス比較─大容量ファイルも手軽に送受信、暗号化などセキュリティにも配慮進むメールでは送信できないサイズの大きなファイルでも、手軽に送受信できるファイル転送サービス。当初は個人を中心に利用が広がったが、ここに来て、暗号化などのセキュリティへの配慮も進み、企業ユースに耐える機能を持ったサービスが充実してきた。最新サービスと選択のポイントを紹介する。

PAGE TOP