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「COBOLアプリケーションは競争優位の固まりだ」--英マイクロフォーカスのCTO

2009年12月18日(金)

いまや話題に上ることが少なくなったCOBOL言語だが、まだいくつものアドバンテージがあると主張する。その実態はどういうものか。COBOL専業ベンダーである英マイクロフォーカスのCTOに聞いた。(聞き手は田口潤)

 「COBOLは廃れるどころか、今も多くの企業で使われている。競争優位を実現するアプリケーションの多くがCOBOLで書かれているからだ。今後も、他の言語と並んでCOBOLは使われるだろう。」--。COBOL専業ベンダー大手の英マイクロフォーカスでCTOを務めるStuart McGill(スチュワート・マギル)氏は、こう語る。

 そうは言っても、COBOLへの関心は低く、プログラミング言語で話題になるのはRubyやPerlなどのライトウェイト言語。McGill氏が、そう語る論拠は何なのか。COBOLを取り巻く状況は、どうなっているのか? 一問一答を以下に示す。

問 COBOLは1959年に開発され、2009年に50周年を迎えた、最もロングライフのプログラミング言語だ。しかしPerlやRubyなどの言語に比べると、ほとんど目立たない存在でもある。COBOLへの需要は、今やそれほどないのではと考えられるがどうか。

答 それに関しては2つのことをお話したい。1つは、COBOLプログラマの人数は全世界で200万人と推計されており、これは何年も大きく変わっていないことだ。確かに米国や欧州、それに日本では減っているかも知れない。しかしインドや中国、そして東南アジアでの増加が補っている。例えばインドには、現在50万人のCOBOLプログラマがいる。

 2つめは、COBOLアプリケーションが重要であるという認識が高まっていることが挙げられる。ITがビジネスの中枢に近づくにつれ、企業の競争優位を実現するアプリケーションの重要性が高まっている。そうしたアプリケーションは、実はCOBOLで書かれたものが多いのだ。ユーザーはゼロから再構築することに関心はない。

 一方、技術的な観点で、別の話をしておきたい。企業では情報システムのユーザーインタフェースをWebに統一したいというニーズが強くある。実は、COBOLのアーキテクチャは、そうしたニーズに適合する。こういうと我田引水に思われるかも知れないが、(我々のパートナーであるマイクロソフトも昔開発した)C++のアプリケーションをWeb対応にするより、COBOLアプリケーションをそうする方が簡単だと言っている。

 実はこれは秘密でも何でもなく、COBOLはプログラムロジックの部分と、外部インタフェースが明確に分かれていることから来ている。COBOLアプリケーションは、Web技術に対応しているのだ。

問 2番めの点について聞きたい。競争力に直結するCOBOLアプリケーションもあるだろうが、そうでないアプリケーションも少なからず存在するのではないか。

答 その通りだ。しかし現在も稼働しているCOBOLアプリケーションは、それが必要だから捨てられずに稼働していることを、理解してほしい。我々自身、どんなCOBOLアプリケーションであっても死守しようと訴えているわけではなく、パッケージソフトなどで置き換え可能なものもあることは承知している。

 一方で長年利用され、保守されてきたアプリケーションには価値があることも確かだ。そこで我々は「アプリケーションモダナイゼーション」を提唱している。つまり、まず既存のCOBOLアプリを、そのままオープン環境に移行する。その際、ユーザーインタフェースをWeb対応に変更する。

 我々が提供するツールを使えば、その過程で必要不可欠なアプリケーションとそうでないアプリケーションを把握できる。後者は捨てるか、パッケージで置き換えればいい。だが、そういったことをせずに、すべてをパッケージで置き換えたり捨ててしまうと、何が不可欠なロジックだったのかが分からなくなってしまう。ERPパッケージですべてを置き換えることを想像して欲しい。それでも業務継続は可能だが、強みを失ってしまうことを覚悟しなければならないだろう。

問 今の話がメインフレームベースで保有コストが嵩むレガシーシステムをオープン化する時、ERPパッケージなどではなく、COBOLのままマイグレーションすべきだとする理由か?

答 もちろん、それだけではない。英国で実際にあったことだが、SAPやOracleのERPパッケージへの移行を考えた企業がいる。ところが調査を進めるにつれ、それができるとしても何年もかかることが明らかになった。ERPパッケージに置き換えられる機能は多いが、そうでない機能もある。このため整合性を持たせるには膨大なプログラムを記述する必要があるのだ。

  「そこまでしてERPパッケージに移行する必要があるのか」という理由から、その会社はCOBOLによるマイグレーションを選択した。あまり知られていないことだが、Oracle EBSやPeopleSoftは、実はCOBOLベースのERPパッケージだ。とすると必要なCOBOLプログラムを捨ててまで、これらに移行する強い理由があるだろうか?

 重要なのは、Web対応やシステム連携、不要なプログラムの排除などアプリケーションのモダナイゼーションだ。企業にとって、ERPパッケージに移行することは本質ではない。

問 少し話を変えたい。COBOLは今後も使われるし、Webなどの技術にも対応しつつある。とすると、課題はないのか。あるとすれば何か?

答 1つ言えるのは、昔からCOBOLを担ってきたプログラマは保守的な人が多いことだろう。彼らはIDE(統合開発環境)など、最新のツールを使おうとしない傾向がある。品質追求の姿勢は強いが、その分、手慣れたやり方にこだわるわけだ。ただ、それが大きな課題というわけではない。COBOLのプログラム規模は非常に大きく、一部のIDEは役立たないこともあるからだ。

問 ではCOBOLの利点は?

答 いくつもある。まずポータビリティ(移植性)だ。COBOL言語は30年以上にわたってポータビリティを提供してきた。これが今も多くのプログラマに使われている理由だろう。COBOLはDBアクセスが言語仕様にあるので、ライブラリなどを使う必要がない。タイムスライスの管理方法も、COBOLが優れている。

 一方、他の言語、例えばJavaはOSレベルはともかく、ミドルウェアを含めるとポータビリティが弱い。すべてがJava言語で書かれているプログラムは意外に少ない。これはマイクロソフトの.NET環境でも同じで、移植には最新のアプリケーションはともかく、昔のそれは苦労する。

 特筆すべき点が、会計、つまりお金にまつわる計算能力だ。金利計算などは、小数点以下5桁や6桁まで正確に計算する必要があるが、10進数の計算をCOBOLなら1行で記述できるし、扱う金額の桁数には制約がない。Javaでは何行もコードを書く必要があるし、扱う桁数に制約がある。ライブラリを使っても同じだ。

 もう1つ、プログラムの属人性が低いのも、COBOLの利点と考えられる。データを管理し、処理するために作られたCOBOLは他の言語に比べてプログラムの可読性が高い。だからメンテナンスも容易だし、何が書いてあるかも分かりやすい。

問 だからマイクロフォーカスは今後ともCOBOL事業を強化していく?

答 その通りだ。他の言語やパッケージなど代替手段が出てくる中で、多くの企業において今もCOBOLで記述されたシステムが稼働している。それは、そのシステムがビジネスを支え、なくてはならないことを意味している。全く新しい事業を立ち上げる場合はパッケージなどを使えばいいが、そうでない事業やシステムは多い。若手の人材にCOBOLを教育したいという相談も増えている。

 ただし、どんなシステムも100%COBOLだけで構築されることはない。ユーザーインタフェースはJavaやAjax、あるいはC++などで記述するだろう。だから我々はアプリケーションライフサイクル管理(ALM)を推進している。システム企画から設計、テスト、運用、保守までを、複数の言語を使いながらこなす、IDEだ。

 そのために過去5年間で7社のツールベンダーを買収した。初期に買収した5社は、いずれもCOBOL関連のツールベンダーであり、ポートフォリオを埋めることができた。2009年5月にはコンピュウェアからアプリケーションのテストや品質管理のツールを、また開発ツール大手だったボーランドそのものを買収。ALMのためのツールをそろえることができた。既存ツールも含め、Microsoft Visual Studioで稼働する。
 

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