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[技術解説]

グループウェア最前線─眠れる「知」を競争力に肩の力を抜いた自然体の情報発信促す

進化するグループウェア Part1

2010年2月2日(火)IT Leaders編集部

グループウェアが着実に進化を遂げている。注目すべきは、(1)ソーシャル系技術の融合、(2)ワクワクするような操作性、(3)他の業務システムとの連携、といった動きだ。自由な振る舞いを促しながら、コラボレーションに対する当事者意識の鼓舞を狙う。

景気低迷はもとより、市場の一巡、規制の緩和、新興国の攻勢などで企業は厳しい攻防を強いられ、相当の知恵を絞って手を打っていかなければ安定的な成長は見込めない。そうした中、「1人」の知識や経験、気づきには自ずと限界がある。従業員や取引先などの関係者が、互いの知見を持ち寄ることで、組織としての力を高めたいという切実な願いがある(図1-1)。

図1-1 企業が情報共有や協働に取り組む主な狙い
図1-1 企業が情報共有や協働に取り組む主な狙い

そこで、ますます期待と注目が集まっているのが情報共有を支えるITだ。PCやネットワーク技術が企業に浸透するのに伴い、1990年代半ば以降、グループウェアや社内ポータル、エンタープライズサーチなど情報共有を実現/加速する様々なソリューションが登場してきた。それらは、時に融合し、時に新たな技術の土台となりながら綿々と進化を続けている。

とりわけ、2000年代の後半にかけては、2つの動きが情報共有基盤に大きな影響を与え始めた。

1つはストレージの低価格化で、企業は大容量の「器」を手軽に導入できるようになった。キャパシティを気にせず、「とにかく情報の蓄積を優先し、後から検索エンジンで強引に探し出す」というスタイルを採りやすくなった。もう1つはコンシューマ向けインターネットサービスとの歩み寄りだ。ブログやSNSなど、Web2.0あるいはソーシャルメディアと呼ばれる仕組みをビジネス用途に仕立て上げて実装する取り組みが盛んになった。これらは、「従来ながらの“気構えた情報共有”から脱却する上で大きな役割を果たした」(日本IBMのソフトウェア事業Lotusテクニカル・セールスの行木陽子氏)。

進まぬコラボレーション
組織の力が眠ったままに

もちろん企業はこれまでも情報共有に取り組んできた。グループウェアに代表される情報共有基盤は、「一定規模以上の企業にはかなり浸透した」(サイボウズの開発本部副本部長の関根紀子氏)というのが一般的な見方だ。

もっとも、そこで進んだ情報共有は、カレンダー/アドレス帳の共有、ワークフローといったプリミティブなものが中心だった(次ページの図1-2)。徹底したファイル共有や、電子会議室での活発な議論といった「コラボレーション」の観点では、まだ十分な効果を発揮できていない企業が少なくない。

図1-2 導入が進んだグループウェアだが、コラボレーションの観点では効果はまだ低迷する
図1-2 導入が進んだグループウェアだが、コラボレーションの観点では効果はまだ低迷する

なぜ、コラボレーションが進まないのか。価値創造などをテーマにコンサルティングを手がけるシグマクシスの河津敬ナレッジマネジメントダイレクターは、「自発的な情報発信の壁」を指摘する。全社員に見られる場に情報をアップするとなると、「明瞭にまとめなければ」「本当にこの内容でいいのか」といった精神的プレッシャーがつきまとう。しかもそれが個人の評価につながらないとなれば、あえて公の場に情報発信するまでもないという意識につながってしまう。

フォーマル感が強い情報共有環境では、自発的に活躍するメンバーが限られてしまいがちだ(図1-3)。独創的な情報を自ら発信する「プレーヤー」と、それにレビューやコメント付与などの形で関与する「サポーター」はごく一握りで、大多数は“見るだけ”を決め込む「オーディエンス」となる。

図1-3 情報を積極的に発信する人は、少数派であるのが現実
図1-3 情報を積極的に発信する人は、少数派であるのが現実

この状況でも、知識や生産性の底上げには一定の効果を発揮する。しかし、「それだけでは組織の潜在能力を生かし切れない。1人でも多くが参加し互いに刺激を与え合うような環境作りの巧拙が、業績に大きく影響する」(みずほ情報総研の吉川日出行ビジネスコンサルティング部シニアマネジャー)。

ソーシャルな仕組みまとい
気安い情報発信を促す

プレーヤーとサポーターの2層を、いかに裾野に広げていくか。創発的コミュニケーションを支える基盤として、グループウェアが再び進化を始めている。その特徴は、大きく3つに分けられる(図1-4)。

図1-4 グループウェアにおける最近の機能強化のトレンド
図1-4 グループウェアにおける最近の機能強化のトレンド

最も顕著なのは、先にも触れた「ソーシャル系技術の融合」だ。ブログやSNSなど、個人向けで一般化した情報発信のスタイルを社内システムにも実装する動きが活発だ。Lotus Notes/Dominoを展開する日本IBMは、Lotus Connectionsを市場投入。サイボウズも「サイボウズ ブログ」をリリースした。ともに既存グループウェア製品に、ソーシャル系の機能を追加する位置づけだ。他にも多くのグループウェアベンダーが同様の取り組みを今まさに繰り広げている。

狙いは、情報発信に対する精神的な“垣根”を取り払うことにある。自分が経験したこと、ふと考えたことを書き留めるブログ/SNSのスタイルは、その気軽さが売りだ。「表舞台で演じる」のではなく、「マイルームで鼻歌」の感覚を持ち込むことで、自然な情報発信を誘発する効果が見込める。タバコ部屋やアフター5の居酒屋での会話からアイデアが湧くという話がよくあるが、そんなカジュアルな情報交換の場を社内ネットワーク上に創ろうという試みである。

学生時代からインターネット文化に慣れ親しんだ、いわゆるデジタルネイティブ世代にとってみれば、考えをブログで表現したり、コミュニティで意見交換するのはごく自然な行為。固定観念に縛られない若手のアイデアを募りたいというニーズがあれば、そんな彼ら彼女らのライフスタイルと透過性のある仕組みを取り入れるのは有効な手段の1つと期待できる。

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