[河原潤のITストリーム]

サッカーW杯の誤審問題で再浮上した「機械の目」導入議論:第19回

2010年7月7日(水)河原 潤(IT Leaders編集委員/データセンター完全ガイド編集長)

南アフリカで開催中の2010年サッカー・ワールドカップが佳境を迎えています。ご存じのように日本代表は決勝トーナメント1回戦でパラグアイ代表にPK戦の末惜敗しましたが、大方の予想を覆し(私も予選リーグ突破は無理だと思っていました)、自国開催以外で初のベスト16入りという快挙。素晴らしいというほかありません。この場を借りて私にも言わせてください――「岡田監督、ゴメンナサイ」。

そんな日本代表の活躍や、前回の優勝・準優勝チームであるイタリア、フランスの予選リーグ敗退、耳をつんざくブブゼラの轟音、波乱を生んだ一因の公式球ジャブラニなど数々の話題の中、世界中のサッカーファンの間で物議を醸したのが「誤審」の問題です。決勝トーナメント1回戦のドイツ対イングランドとアルゼンチン対メキシコの2試合で、誰の目にも明らかな大誤審が発生。得点に絡む不利な判定を受けたイングランドとメキシコが共に敗退する結果となり、両国のサポーターを中心に大ブーイングが巻き起こりました。

ワールドカップでは毎回のように誤審が問題になりますが、今回の事態を重くみたFIFAのジョセフ・ブラッター会長は、両国のサッカー協会に公式な謝罪を行ったうえで、誤審問題の根本的な解決に向けて、ビデオ判定あるいは別の判定テクノロジーの導入をあらためて検討していくと明言。その是非をめぐって賛成/反対の議論がわき起こっている状態です。サッカーの世界では、「判定は、人間がその目で行うもの。誤審のような運・不運も含めてのサッカーである」というスタンスが長らく支配的でしたが、他の幾つかの競技と同じように、今後、この基本スタンスにも変化が訪れるのでしょうか。

ところで、これが単にビデオ判定を導入するか否かの話であれば、本連載で取り上げる必要性がありません。注目してみたいと思ったのは、今回の議論で名前が挙がっている「ゴールライン・テクノロジー(GLT)」という判定システムです。このシステム、センサー/ワイヤレス・ネットワークを駆使した、実に先進的な仕組みになっているのです。

GLTシステムは、アディダスとカイロス・テクノロジーズというドイツ企業2社の共同開発によるもので、ペナルティエリアとゴールエリアのラインに埋め込まれた細径ケーブル、センサーとマイクロチップが埋め込まれた専用ボール、ピッチ上に設置されるデータ受信機、審判が身につける腕時計型の液晶モニターによって構成されています。判定のプロセスは――試合中にボールがペナルティエリア付近に入ってくると、ケーブル上の磁場を利用してボール内蔵のセンサーが自らの位置を測定します。そして、ボール内蔵のマイクロチップはその位置情報からオフサイドやゴールライン通過を瞬時に判定して、情報をデータ受信機と審判の液晶モニターに送信する――こんな仕組みです(カイロス・テクノロジーズによる概念図を参照)。

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