[インタビュー]

「中小企業向けにクラウドサービスを自動化する」─米Parallels幹部

2010年9月29日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

米Parallelsは、SaaS型アプリケーションの提供事業者や仮想サーバーのホスティング事業者などのクラウド・サービス事業者に向けて、仮想環境の運用を自動化するミドルウエア製品群「Parallels Automation」を提供しているベンダーである。

主に中小企業において、クラウド型アプリケーションの利用が進むのに合わせ、各種の業務アプリケーションをSaaS型で提供できるよう、サービス事業者を支援する。

インプレスビジネスメディアは2010年9月29日、同社でサービス事業者部門の社長を務めるJack Zubarev氏に、SaaS型アプリケーション基盤の運用自動化の動向を聞いた。

---仮想環境向け運用基盤を手がける背景は。

会社の創立は2000年。当時から現在にいたるまで、中小企業を対象としたサービス事業者のために、事業者のサービスをデリバリ(配信)する基盤ソフトを提供してきた。

もともとは、サーバー・ホスティング事業に向いた機能として、仮想サーバー環境のデリバリ/管理機能で事業をスタートした。現在では、これらサーバー上で動作する業務アプリケーションのデリバリ/管理が可能になっている。

サーバーやアプリケーションのホスティング事業は、2007年まではニッチな市場だった。ところが、2007年以降、“クラウド”の波が登場したことで、IT利用の形態として立場が上昇、一般的なものになった。

今後、中小企業によるIT投資の大半は、従来のオンプレミス(自社保有)から、クラウド・サービスに移行する。この市場規模は、約50兆円に達する。

---中小企業がクラウドに移行する理由は。

大きく3つの理由がある。

1つ目の理由は、料金の安さだ。多くの場合で、オンプレミスよりも、月額制のクラウド型サービスのほうが、利用料金が安くなる。

2つ目の理由は、より高度なアプリケーションを利用できるようになることだ。これまで膨大なIT予算を持つ大企業だけが享受できていたソフトウエア・イノベーションを、お金がない中小企業でも享受できるようになった。

3つ目の理由は、使いやすさだ。専任のITスタッフがいない中小企業において、使いやすさは重要な要素だ。

---クラウド運用基盤が備える主な機能は。

大きく4つの機能を提供する。

1つは、セルフ・サービス型のポータルだ。サービスを利用する中小企業みずから、ポータルを介して利用したいサービスを設定・購入できる。

2つ目は、任意のアプリケーションをプロビジョニング(配置)する基盤だ。カタログ化されていて、いますぐに配信可能なアプリケーションは、CRM(顧客関係管理)ソフトやグループウエア、各種業務アプリケーションなど、900種類を超える。

3つ目は、受発注・課金システム基盤だ。SaaS型アプリケーションの課金方法を、開発会社・販売会社やサービス事業者などのステーク・ホルダーみずから、自由に設定できる。卸値や中間マージンをどうするか、などを容易に設定し、運用できる。

4つ目は、これらを可能にする、仮想化ソフト群だ。

米Parallelsは、仮想化ソフトという下位のレイヤーから、サービス事業の運用基盤という上位のレイヤーまで、一貫して提供している。このうち、中小企業向けにアプリケーションを配信するという用途にとって、より重要な要素は、上位の運用基盤だ。

---アプリケーションを配備・配信するための仕掛けは。

APS(Application Packaging Standard)と呼ぶ、アプリケーションをパッケージ化して仮想化運用基盤の上で配備・配信できるようにする標準形式がある。APS形式のアプリケーション・パッケージであれば、米Parallelsの基盤ソフトで利用できる。

APS形式のアプリケーション・パッケージには、大きく3つの種類がある。

1つは、業務アプリケーションの開発会社が作成したAPSパッケージである。1つは、サービス事業者などが自社開発したアプリケーションをAPSパッケージとして作成したものである。

残りの1つは、第三者が開発した任意のアプリケーションをカプセル化/ラッピングしたAPSパッケージである。この手法を用いると、著名なSaaSや任意のWebサービスなどのオンライン・サービスも、APSパッケージとして扱うことができる。

APSパッケージの仕様は公開されており、誰でもAPSパッケージの作成が可能だ。また、APSパッケージの作成を容易にするためのツールとして、Eclipse用のプラグインとVisual Studio用のプラグインを用意している。

---APSパッケージを扱っている国内サービス事業者はどれだけいるのか。

米Parallelsの運用基盤を使っている日本国内のサービス事業者は、米Parallelsの直接の顧客で約40社ある。このうちの1割ほどが、APSパッケージをサービス提供している。代表的な会社が、GMOホスティング&セキュリティだ。

写真1 米ParallelsでService Provider部門の社長を務めるJack Zubarev氏(写真右)と、パラレルスで代表取締役社長を務める富田直美氏(写真左)
写真1 米ParallelsでService Provider部門の社長を務めるJack Zubarev氏(写真右)と、パラレルスで代表取締役社長を務める富田直美氏(写真左)
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