[Gartner’s Eye]

過去に固執していては変革は起きない、今こそ未来志向にシフトせよ

第13回

2010年10月18日(月)ガートナージャパン

コスト削減や効率向上だけではなく、変化に追随して商機を拡大するためにITをどう戦略的に使うか。欧米や新興国の企業のIT部門は、既にそうした取り組みを始めている。グローバル競争が当たり前になった現在、固定観念に縛られずいかに「未来志向」で物事を考えるかが、重要性を増している。

経済状況は刻々と変化し、企業間競争のグローバル化もますます加速している。こうした状況下で競争優位を獲得するには、自社の将来像を明確に描き、それに向けて適切な施策を迅速に打ち続けなければならない。その際には過去や現在の状況に捕われない「未来志向」で物事を考えることが不可欠だ。

過去と現在だけでは、将来は展望できない
図1 過去と現在だけでは、将来は展望できない
出典:ガートナー

未来志向のきっかけとして7つのトレンドをつかむ

未来志向で物事を考えるといっても、何を足がかりにすればよいのか。1つの参考として、社会、ビジネス、テクノロジーの主要トレンドに関するガートナーの調査「Business Innovation and Emerging Trends(BIET)」で、2010年に調査対象とする7点のトレンドを挙げる。これらは、今後3〜10年かけてアーリーアダプターが中心となって適用可能性を議論するに値すると、ガートナーが考えているものだ。今後進むべき方向性を考える際のたたき台にしてほしい。

トレンド(1)
パターン・ベース・ストラテジー

社内外の膨大なデータの海から機会と危険を予見できる情報を探知し、行動に直結させるパターン・ベース・ストラテジー(PBS)は、経営環境の変化を受動的に収集し、素早く対応することに焦点を当てた従来の「Sense & Respond」型から、ビジネスに影響をもたらす“兆し”となる情報を自ら探し出して行動に移す「Seek & Act」型の情報活用に移行する助けとなる(詳細は前号の本コラム参照)。

トレンド(2)
オーグメンテッド・リアリティ

目の前の現実世界に、関連するデジタル情報を重ねて見せる─。これを実現するのが、オーグメンテッド・リアリティ(AR)だ。GPSや加速度センサーといった高性能なチップの価格が下がり、スマートフォンなどにも内蔵されるようになったことが、AR普及のハードルを押し下げている。ARは、一般消費者や外出中の営業スタッフなどに、状況に応じた情報を提供するための革新的な手段となり得る。

トレンド(3)
プレディクティブ・アナリシス

クレジットカードやWebブラウズ、携帯電話の利用履歴─。現代生活では、様々な活動の形跡がデジタルデータとして残る。こうしたライフログは、個々人の将来の行動を予測可能にする大きなポテンシャルを持っている。収集した大量のデータを分析し、業務改善や顧客ニーズの把握に生かそうとする企業が増えている。

トレンド(4)
ツァイトガイスト

特定のものごとに対する、ある時代の共通認識である「ツァイトガイスト」。この共通認識は、普遍的な概念ではなく、その時々で変化する、いわば「時代の精神」だ。社会的ニーズを捉えた施策をいち早く実施するには、この時代の精神を理解する人材の育成が重要になる。たとえば近年は環境保護への関心が高いが、25年前はそれとは正反対の大量消費が時代の潮流だった。

トレンド(5)
タブレット/スレート端末

米アップルのiPadやiPhoneなど、タッチインタフェースやタブレット型の新しいデバイスの普及が進む。エンドユーザーにコンピュータの新しい利用のスタイルを可能とするこれらの新デバイスは、伝統的なノートPCを置き換える勢いだ。一方こうしたデバイスの普及は、印刷業界やメディア業界にとって、自らの役割に再定義を迫るものとなる。

トレンド(6)
人口統計と経済

企業や顧客に対するこれまでの認識を塗り替える社会情勢にも注目する価値がある。たとえば雇用情勢の変化が自社の中長期の戦略に与える影響を考慮すべきだ。

トレンド(7)
産業変化

電子書籍による流通の変革が起こりつつあるメディア業界や、オンライン取引が普及した金融業界。デジタル化による変革が早くから起こっているこうした業界の先駆者の取り組みには、業界に共通して参考すべき点がある。

※本連載は米ガートナーのリサーチ「Five Eras of IT Business Value Add: From Automation to Pattern-Based Strategy」および「Introducing Pattern-Based Strategy」をもとに日本法人アナリストが一部編集し、加筆したものです

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