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「番号制度の実現のために第三者機関を設けよ」、NRIが政府の成長戦略に提言

2010年10月25日(月)

 野村総合研究所(NRI)は2010年10月25日、日本政府の「新成長戦略(基本方針)」(2009年12月)に対する2回目の提言「新成長戦略への提言II」を発表した。番号制度など産業経済面の成長を支える基盤の実現には、政府や官僚とは独立した第三者機関が必要であること、および、前提として政府自身の意思決定プロセスの改革が必要であることを示した。

番号制度の実現には第三者機関が必要

社会保障制度の基盤として番号制度が有益だが、前提として個人情報保護の仕組みが必要になる。この一方で、日本は、個人情報保護を専門とする機関が存在しないなど、諸外国と比べて遅れをとっている。同社では、番号制度の実現のため、政府や官僚とは独立した、個人情報保護を目的とする第三者機関を設立すべきであると提言する。

同社によれば、番号制度の実現には、2つの施策が必要。1つは、国民にとってのメリットを分かりやすく伝えること。例えば、給付付き税額控除や戸別所得保障などのために番号制度が必要になることを伝える。もう1つは、不正利用や情報漏えいの不安を払拭するため、独立した第三者機関を設立することである。

第三者機関に求められるポイントとして同社は、以下の6個を挙げる。(1)法的根拠を持つ。(2)政治・行政機関から、組織、予算が独立している。(3)常設機関で、高い専門性を有した常勤スタッフがいる。(4)諮問をうけずとも、自ら監視・監督する。(5)苦情・相談を一元的に処理する。(6)個人情報保護、自己情報コントロールの教育をする。

番号制度の運用イメージとしては、個人情報を一手に管理する「国民IDサービス(仮称)」が、省庁と国民の間に介在する。行政サービスのために個人情報を必要とする個々の省庁と、個人情報をコントロールしたい国民との間に入り、個人情報を一元管理するとともに、省庁への個人情報の流れを制御する。

写真1 国民IDサービス(仮)の運用イメージ
写真1 国民IDサービス(仮)の運用イメージ

 電子自治体は法整備と第三者機関の設立を優先

現状では、行政サービスごとに国民を識別する共通の番号が存在しない。このため、特定の個人を識別する「名寄せ」の作業に労力を要している。しかも、正確な名寄せができていない。これを改め、番号制度を実現し、個人の識別と本人の認証を備えたシステムを構築することで、行政内部における情報連携が進み、行政サービスは効率化する。

同社は、番号制度による電子政府を実現していくためには、導入のステップを誤らないことが大切と指摘する。行政事務のほとんどを行っている自治体では、電子自治体の優先順位が低く、国主導のモデルでは普及しないからである。

同社が掲げる、電子自治体を普及させる正しいステップは、こうだ。第1に、法律の整備と第三者機関の設立を済ませる。第2に、自治体の業務プロセスを再構築する。最後の第3ステップで、自治体と国をつなぐサービスを構築する。これまでは、第3ステップを最初に取り組んでいたため、うまくいかなかった。

同社は、電子政府ランキング世界一の韓国の例を挙げ、あるべき姿を示す。韓国では、行政機関から行政機関へと個人情報を流通させる仲介役と、行政機関から個人への情報確認を最小化する法律が存在する。法律では、「電子的に確認できることを、個人に確認して提出させてはならない」ことや、「他の行政機関から得られる情報と同一の情報を、別途収集してはならない」ことが定められている。

政府自身の改革が大前提

番号制度と電子自治体の普及の大前提として、同社では、まず第1に「政府自身の改革が最重要」(未来創発センター長の山田澤明氏)と指摘する。政府と官僚をつなぐ意思決定プロセスを再構築することが、新成長戦略の実現には欠かせないからである。

具体的には、政府の意思決定プロセスにおいても、独立した第三者機関を設置する。意思決定プロセスは、首相と政務三役、官僚組織、支援スタッフ(民間から大量登用)の3者で構成。支援スタッフには、プロジェクト・マネージャとしてのスキルや、分析・提言力が求められる。

支援スタッフを大量に採用するアイディアは、イギリスとカナダに学んだもの。例えば、イギリスでは、過去数十年のベスト・プラクティスとして、政策主導の政策決定プロセスが確立済み。カナダでは、2006年2月から少数単独政権体制が続いている。支援スタッフの働きにより、個々の政策レベルで野党との調整が上手くいっている。

なお、今回の提言IIは、2010年5月にNRIが提案した「新成長戦略への提言」に次ぐもの。2010年5月の提言では、政府の戦略をベースに、産業セクター別の戦略を立案した。今回の提言IIでは、戦略を推進するにあたって政府が取り組むべき組織面での課題を提示した。

写真2 野村総合研究所、未来創発センター長の山田澤明氏
写真2 野村総合研究所、未来創発センター長の山田澤明氏
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