[インタビュー]

「独自のやり方でストレージの信頼性と省電力を追求」─米Nexsan幹部

2010年12月7日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)

インプレスビジネスメディアは2010年12月7日、来日した米Nexsan Technologies幹部2人に、ミッドレンジ・ストレージに求められる機能と市場性を聞いた。

米Nexsan Technologiesは、ラックマウント型のミッドレンジ級SANストレージを手がける、1999年設立の新興ストレージベンダーである。特徴として、高さ4Uに42ドライブを実装する高密度実装、ディスクドライブの振動低減やストレス試験による信頼性、細かい制御が可能な独自の省電力機構などがある。

主力製品は、「SATABeast」(SATAドライブ)と、「SASBeast」(SAS/SATAドライブ)。いずれも、ホスト接続インタフェースはFC(Fibre Channel)およびiSCSI。日本オフィスによる参考価格は、SATABeastが最小構成(2Tバイト×14)で574万円(税別)、SASBeastが最小構成(300Gバイト×14)で630万円(税別)。

2011年第1四半期には、SATABeastとSASBeast向けの外部拡張ユニットとして、高さ4Uに60ドライブを収容する高密度SAS接続アレイ「NXS-B60E」などを発表する(製品はすでにパイロット出荷済み)。

インプレスビジネスメディアは2010年12月7日、来日した同社幹部2人に、ミッドレンジ・ストレージに求められる機能と市場性を聞いた。CTO(最高技術責任者)を務めるGary Watson氏と、APACおよび中東エリアのセールス担当VPを務めるGregg Pugmire氏である。

米Nexsan Technologies、CTOのGary Watson氏(左)と、Asia Pacific and Middle EastエリアSales担当VPのGregg Pugmire氏(右)
写真1:米Nexsan Technologies、CTOのGary Watson氏(左)と、Asia Pacific and Middle EastエリアSales担当VPのGregg Pugmire氏(右)

---ユーザーがストレージに期待していることは何か。

Gregg Pugmire氏:4つある。省スペース、信頼性、省電力、簡単さ、だ。これらは、ミッドレンジ・クラスのストレージ・ユーザーにとって共通の課題となっている。米Nexsan Technologiesは、1999年に設立してから現在まで、4つの課題を解決するための機能を開発・提供してきた。

米Nexsan Technologiesのユーザーは多岐にわたる。大量データを扱う必要がある企業や、データ量が急速に増加している企業には、特によく使われている。

事例の1つが、大型船クルーズを手がける米Royal Caribbean International。大型船にストレージを積んで、セキュリティ・カメラの映像を保存している。船にはITの専門家がいないほか、電力や冷却などの制約がある。こうした中で使われている。

日本に本格的に進出したのは、2009年後半のこと。そこから約1年で、ユーザー数は2倍、出荷台数は3倍、出荷容量は8倍になった。現在の出荷容量は、数ペタ・バイト規模になる。著名な顧客に、インターネットイニシアティブ(IIJ)がいる。

---4つの課題、省スペース、信頼性、省電力、簡単さ、を解決する機能の詳細は。

Gary Watson氏:1番目のポイント、省スペースは、こうだ。

主力機種のSATABeastとSASBeastでは、高さ4Uのラックマウント型きょう体に、3.5インチ型ドライブを42基搭載する。拡張ユニットのNXS-B60Eでは、高さ4Uに60基のドライブを搭載する。全面吸気・背面排気のエア・フローに沿ってドライブを高密度に配置しており、きょう体内に空きスペースはほとんどない。

2番目のポイント、信頼性は、こうだ。

ドライブの振動を抑えるため、2台のドライブを1組として、背面同士を向かい合わせて設置している。こうすることで、プラッタの回転方向が逆になるため、回転による振動を打ち消し合うことができる。

ドライブの信頼性を調べるためのストレス・テストを実施している。全ドライブを2日間テストし、回転速度が規定に満たないなど、条件に合わない不適格なドライブを排除している(経験上、回転数が遅いドライブは故障率が高い)。テストの結果、全体の1~5%のドライブが不適格となる。

このほか、きょう体やコントローラの機能として、HA(高可用性)構成をとった複数台のストレージ同士でディスク・キャッシュをミラーリングする機能や、停電時などにディスク・キャッシュを内蔵バッテリでバックアップしてディスクに退避書き込みする機能などを備える。

3番目のポイント、省電力は、こうだ。

AutoMAIDと呼ぶ、細かな制御ができる独自のMAID(Massive Arrays of Inactive Disks)機能を備える。以下の4段階のMAIDレベルを使い分けることができる。

レベル1は、ヘッドをアンロードする。アイドル状態でMAIDなしの状態と比べて15%~20%電力を低減できる。ディスク・アクセスの再開時は数秒で復帰できる。

レベル2は、ヘッドをアンロードするとともに、プラッタの回転数を4000回転/分に減らす。これにより、電力を35%~45%低減できる。ディスク・アクセスの再開時間は15秒ほどだ。

レベル3は、ドライブの電源をオンにしたまま、プラッタの回転を停止する。60%~75%の電力をセーブできる。30秒~45秒ほどでアクセスできるようになる。

Auto MAIDでは、このように、互いにトレード・オフの関係にある、電力の削減効率とディスク・アクセス時の復帰時間を考慮し、業務の用途に応じて適切なMAIDレベルを設定できる。

これに対して、従来のMAIDでは「使っていないドライブの電源をオフにして回転を停止させる」といった単純な制御が一般的だった。細かい制御ができなかった。

Auto MAIDのレベル4は、NXS-B60Eで使用可能であり、スロット単位(ドライブ20基)やきょう体単位で電源をオフにできる。87%の電力を低減させるほか、アクセス時には瞬時に復帰できる。

4番目のポイント、簡単さは、こうだ。

専門のストレージ管理者でなくても、GUIベースの管理画面を使い、各種の設定ができる。管理機能は、Windows Server 2003が備えるディスク装置仮想化管理機能であるWindows Virtual Disk Service(VDS)に統合している。

---SATABeast、SASBeast、NXS-B60E以外の主な製品ラインは。

Gary Watson氏:

(a)「DEDUPE SG」は、重複排除機能を備えたストレージである。

(b)「ASSUREON」は、ハッシュ値でデータの差異を管理するCAS(Content Addressed Storage)機能を備えたアーカイブ用途のストレージである。

(c)「Nexsan iSeries」は、FCストレージに接続して使う、iSCSIヘッド・ユニットである。仮想ストレージ機能や冗長化など各種の付加機能も提供する。

(d)「DATABeast」は、SANストレージであるSATABeastをベースに、NAS機能、シン・プロビジョニング、スナップショット、レプリケーション、同期ミラーリング、マイグレーションなど、現在のストレージに求められる各種の機能群を1ラックに集約したストレージ・システムである。

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Nexsan Technologies / SATA / iSCSI

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