まず、先日CIOの集まりで話題になった1冊から。「ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか」です。これは、金融サービス会社の融資担当者が、突然CIOに任命されるところから始まる物語。全く畑違いの職場に異動してからの1年、IT知識のない主人公を、プロジェクトの遅延や外部からのDoS攻撃といった難局が次々に襲います。どれもITに携わる者にとって他人事ではないトラブルばかり。主人公はどう対処したのか、興味をそそられるでしょう?
ロバート・D・オースチン、シャノン・オドンネル、リチャード・L・ノーラン(著)
淀川 高喜(訳)
ISBN : 978-4822262433
日経BP出版センター
2100円
ハーバード・ビジネススクールの教授の著作だけあって、読み手に考えさせる仕掛けも巧みです。随所に「あなただったらどうする?」という問いかけがちりばめられているんですよ。小説仕立てですから、ちゃんと“色恋沙汰”もあります。恋人からメールの返信が来ず、主人公が思い悩むとか(笑)。詳しい結末はあえて言いませんが、いかにも米国らしいハッピーエンドです。
「超MBA進化論」は、ちょっと刺激的な1冊です。利益最大化を追求する米国流マネジメントの限界を指摘。日本企業が目指すべきは社員が成長への高い意欲を持つ“学習する組織”であると論じています。「資本主義vs日本の文化」という見方はやや二元論的ですが、組織管理や経営に対する自分なりの考えを整理するのに役立ちます。実は、著者の大中氏はカーネギーメロン大学の後輩です。彼が日本を発つときには、壮行会を開いて送り出したことを覚えています。
カーネギーメロン大学のMBAコースで学んだのは、1979年からの2年間。ちょうど、デリバティブが出てきたころでした。これはぜひ、金融工学の授業を取ってブラック=ショールズ方程式などの最新理論を学ぼう。そう考えていたんですが、ほかの授業との兼ね合いで受講しそびれた。帰国してからも、ずっと心残りでね。それで、専門書に親しむようになりました。金融工学を学ぶ人は必携と言われるジョン・ハル教授の著作をはじめ、今まで20冊以上を読みました。たいてい、原書を購入します。日本語より、英語のほうがロジックを追いやすいんですよ。ま、難解な数式は飛ばしながらですが(笑)。
ちなみに、ブラック=ショールズ方程式とは、不確定性下における投資を決定するための数理モデル。これは、技術開発の費用対効果を評価する際の枠組みに応用できるんです。実際に、社内で試行したこともあります。
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