[中島洋の特別対談]

【特別対談企画】成長の原動力は海外にある!NTTデータのグローバル戦略とは

2011年4月7日(木)

海外の成長市場を目指す──国内のIT投資が伸び悩むなか、新たな市場を求めてグローバル化することは日本の情報サービス産業の「待ったなし」の取り組み課題である。とりわけ、これまでもっぱら内需志向に傾きがちだった情報サービス企業にとっては重い課題だ。その中で、2013年3月期に現在の約3倍の3000億円の海外売り上げを目標に掲げたNTTデータの海外展開の意気込みは注目を集める。先頭に立って国際事業を率いる榎本隆副社長に聞く。(本文中敬称略)(聞き手は中島洋MM総研所長)。

海外の成長市場を目指す──国内のIT投資が伸び悩むなか、新たな市場を求めてグローバル化することは日本の情報サービス産業の「待ったなし」の取り組み課題である。とりわけ、これまでもっぱら内需志向に傾きがちだった情報サービス企業にとっては重い課題だ。その中で、2013年3月期に現在の約3倍の3000億円の海外売り上げを目標に掲げたNTTデータの海外展開の意気込みは注目を集める。先頭に立って国際事業を率いる榎本隆副社長に聞く。(本文中敬称略)(聞き手は中島洋MM総研所長)。

榎本 隆氏
榎本 隆氏
株式会社NTTデータ 代表取締役副社長執行役員
1975年、日本電信電話公社入社。88年のNTTデータ通信株式会社(当時)分社以降、90年代に米国支店担当部長およびM.I.S.I.(米国グループ会社)社長として2度の米国勤務を経て、帰国後、産業ビジネス推進本部副本部長、人事部長と歴任。2005年より経営企画部長及び国際事業推進本部長として海外企業のM&A戦略を率いる。08年6月代表取締役副社長執行役員に就任。09年7月よりグローバルITサービスカンパニー長及びコーポレート部門担当(経営企画、人事、総務)を兼任。


中島 洋氏
中島 洋氏
MM総研所長
1973年、日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加し1997~2002年慶応義塾大学教授。現在、MM総研所長、国際大学教授、首都圏ソフトウェア協同組合理事長、全国ソフトウェア協同組合連合会会長等を兼務。


第一次グローバル化で、日本企業の海外進出が上手くいかなかったわけ

中島:日本企業は1980年代から90年代に第一次のグローバル化の大きな波がありましたが、そのころ、情報サービス企業も海外に出て行った。今回とはどのような違いがありますか。

榎本:80年代の日本企業のグローバル化は、急速な円高のなか、強い円を生かして、荒波を乗り切ろうという風潮でした。例えば日本の金融機関が欧米の金融センターに乗り込んでいき、ビジネスを展開しようとされました。金融機関はNTTデータの重要なお客様であったため、私たちもニュージャージーに本拠を置いてお客様をサポートしようとしましたが、従業員に高コストの日本人を出向させるなど日本でのやり方を踏襲した結果、採算は合いませんでした。その後、金融機関が欧米事業の縮小をされるにしたがい、私たちも海外事業を縮小していきました。80年代から90年代のグローバル化は、私たちにとって、世界を経験するという意味はあったが、事業として成功したとは言えませんでした。

中島:製造業も海外に出て、うまくいったところもあるが、失敗した事業の方が多かった。日経新聞記者時代に情報サービス企業が欧米に進出するという記事を随分と書きましたが、多くは製造業の進出が行き詰まると一緒に撤退を余儀なくされた。日本の仕事のスタイルをそのまま持ち込む、というグローバル化では、限界があったわけですね。

榎本:NTTデータも92年にM.I.S.I.社を買収して米国事業に乗り出しました。数年後、私が出向していってみると、労働契約を含めて非常に甘い経営だった。苦労はしましたが、従業員の入れ換えから始めて、現地の採用比率を高めると、生産性が上がって、1年で黒字に転換しました。その経験から、現地に腰を据え、困難があってもあきらめずに粘り強く取り組むことが大切であると感じました。

中島:それは凄いですね。第一次のグローバル化時代は、多くの企業が海外企業の買収の失敗で大きな損失を招いた時期でもありました。自社の哲学なしに他社の背中を追いかけるだけのグローバル化はうまくいかない、というところでしょうか。

榎本:哲学というか、世界経済がどこへ向かっているかという、グローバルワイドの情報、知識が必要になってくると思います。たとえば、金融機関に提案するにしても、当時の私たちでは、お客様の要望にあわせて情報システムをどう作るか、という提案しかできなかった。対して、IBMはこれからの金融ビジネスはどのように発展するか、ビジョンを示すところから提案する。その時代には勝ち目はありませんでした。

中島:そうした経験に基づいた戦略として今回のグローバル化を推進されているのですね。

榎本:日本の実力のある製造業が海外の大手企業を次々と買収し、競争力の源泉とされているのを見て、私たちも海外の実力ある企業を買収して企業競争力を向上させようと考えました。このため海外の情報サービス企業の買収に踏み出したわけです。きちんとした顧客基盤を持つ会社や、技術力のある会社に狙いを絞りました。たとえばSAPで実力があるドイツのアイテリジェンスがそうです。こちらから買収の話を持ちかけて、グローバルビジネスを一緒にやろうという話になりました。

中島:こちらから押しかけですか。

榎本:お客様が海外で展開していくために必要とされている技術やノウハウを持つ企業を探し、私自身がリストを作成し、アタックしました。アイテリジェンスにしても、向こうは突然、日本企業から買収話を持ち込まれて最初は冷淡な対応でしたが、2年がかりで信頼関係を築き説得しました。これによって、国内外のお客様の海外進出の際にSAPビジネスのサポートができるなど、大きな効果があったといえます。

利益を重視しながら、海外売上高を3倍へ
今後のグローバル戦略

中島:それにしても2年後に海外売上3000億円という計画は大きいですね。現在は1000億円程度ですが。

榎本:昨年12月に買収した米国のキーン社は売上高700億円程度です。今期の途中からグループ入りしたので、来期になれば大きく数字を押し上げる。既存のグループ企業でも海外の成長率は高いですし、そんなに非現実的ではありません。ただ、売上高ばかり意識していると、経営を間違える。そろそろ、利益を重視する数字の見方へと転換しないといけないと考えています。

中島:利益向上の方策は何ですか。

榎本:現在、30カ国、128都市に海外拠点がある。その統合再編制をしたい。たとえば米国でも4社も5社もある。これを1つにするとか、欧州をまとめるとか、効率良い体制に再編制することを考えています。小さな企業がたくさんある集合体では効率よく機能しないですからね。また、国内と海外はかなり事情が違うので、海外事業を統括する組織機能の有り方も重要な検討課題です。人材の採用も、技術もグローバルな競争の中で機動的に展開しなければ勝負になりません。

中島:IBMなどをみると、30年も前から、国内とグローバルの経営組織は異なるデザインでしたね。

榎本:すでにNTTデータグループは従業員数5万人ですが、大まかにいうとNTTデータ本体は1万人、国内のグループ企業が2万人。海外も2万人です。すぐに国内と海外は同数、あるいは海外の従業員数の方が多くなるでしょう。その視点から、経営を考えなければいけない。英語は必須になるし、外国人の採用も当たり前になる。また、NTTデータグループとしての統一イメージ、ブランド戦略もこれからは重要になると思いますし、今後の10年、20年先のNTTデータグループのありようを代弁するようなブランドをグローバルで展開したいと思っています。

中島:日本企業だけが、海外に出ても日本人のトップ、日本から出向してきた幹部で固める、という慣行がありました。いよいよ本物のグローバル化が始まったという事を実感します。

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