[製品サーベイ]

企業向けクラウドストレージ比較─安全性に配慮したデータ共有やファイル転送で活用進む

2011年4月14日(木)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

コンシューマ向けサービスの普及を機に注目が集まりつつあるオンラインストレージ。これまで安全性や使い勝手の面から企業はなかなか導入に踏み切れずにいたが、ここにきてセキュリティ対策や操作性を高めた「企業向け」が増えている。

クラウド上のディスク領域を貸し出すオンラインストレージへの注目が高まっている。

当初はコンシューマ向けのサービスとして人気に火が付いた。インターネット環境さえあれば利用場所を問わずに必要なファイルにアクセスできる、メール添付では扱えない大容量のファイルを第三者と受け渡しできる、などの利便性が評価されたためだ。やがて企業内個人が仕事でも使い始めたが、コンシューマ向け故にセキュリティ面の配慮から待ったがかかり、URLフィルタリングなどで利用を制限する企業も少なからず出てきた。

こうした中、アクセス制御による不正対策やデータのより安全な保管に工夫を凝らし、企業利用を想定したオンラインストレージがここにきて充実してきた。月額課金で必要な時に必要なだけ使え、用途に応じてきめ細かな運用ルールを適用できるものが中心だ。ファイルサーバーやFTPサーバーを自前で立てて運用するのに比べて手間がかからず、ディスク容量を持て余すなどのムダも排除できる。

用途により必要な機能は分かれる

オンラインストレージの用途は様々だが、ここではファイルサーバーのようにデータの保存・共有を主とした使い方と、大容量ファイルを第三者に転送する手段としての使い方に重点を置くものを取り上げる。市場で提供されているサービスには、どちらも視野に入れているものもあれば、一方に軸足を置いているものもある。選定の際には、実際の業務において、どのような使い方をするかを明確にしておくことが必要だ。

例えば前者の場合、1TB超のストレージ容量を利用できるサービスが登場しているが、安全性を考慮して「社内限定」(IPアドレスなどの情報で識別)とするものもある。後者では、社外の取引先などにファイルを安全に送信するための工夫を盛り込むが、容量あたりの利用料はファイルサーバー用途中心のサービスよりも高くなる傾向にある。

以下に、主要な企業向けオンラインストレージをまとめた(表)。導入時に注意すべきポイントを見ていこう。

表 企業向けの機能を備える主要オンラインストレージ一覧(画像をクリックでPDFをダウンロード)
表 企業向けの機能を備える主要オンラインストレージ一覧

[チェックポイント 1 ]
アクセス制御のしやすさ

企業向けオンラインストレージ、とりわけファイルサーバー用途では、アクセス制御機能が欠かせない。ここでは、ユーザー(もしくはグループ)やフォルダの単位で権限を設定するのが基本となる。付与する権限をどこまで細かく設定するかによって、各サービスを評価することが重要だ。例えば、登録ユーザーでなくても一時的に権限を付与するといった柔軟な運用をできるものもある。

アクセス権限の割り当ては、ユーザー数が多いほど手間がかかる。この点では、設定作業を効率化する機能があるかについても注意を払いたい。

ビック東海の「OneOfficeクラウドファイルサーバサービス」はActive Directoryと連携。そこに登録する権限(他の既存システムを使うために設定してあるアクセス権限)をそのまま割り当てられる。

ユニアデックスの「AirTriQドリームキャビネット」は、リードオンリー、取引先限定など、権限設定のひな形となるフォルダを4種類用意。これらを選択することで簡単に設定を済ませられるよう工夫する。これらで対処できない場合には、マニュアルで設定することも可能だ。「煩雑な設定作業を可能な限りなくしサービス利用の敷居を下げた」(インターネットビジネス部 インターネット営業G マネージャー 森健太郎氏)。

セキュアな環境で運用できることを特徴に打ち出すサービスもある。スターティアの「セキュアSAMBA」はSSL-VPNを用いてデータを暗号化。社外からサービスを利用する際の安全性確保に力を入れる。IDとパスワードによる認証に加え、利用するPCにSSL証明書を発行し、特定のPCからしかアクセスできない仕組みも備える。

[チェックポイント 2 ]
直感的な操作性

ファイル転送を主な目的としたサービスにおいては、PCに不慣れなユーザーでも間違えないように、直感的な使いやすさを追求するものが目立つ。

IIJの「DOX」は同社の「IIJ セキュアMXサービス」と連携し、大容量ファイルであることを意識せずに、これまでと同様に使い慣れたメーラーで転送できるように工夫している。

大容量ファイルを添付してメールを送信すると、当該ファイルはメールと分離され自動的にDOX上に保存される。本文にはファイルの所在を示すURLが自動挿入され、メール受信者がそれをクリックすると、目的の大容量ファイルがダウンロードされる仕組みだ。一連の通信は、暗号化やウィルスチェックにより安全性を確保する。ソリトンシステムズの「Net'Attest HiQZen サービス」も、同社のSMTPサーバー経由で送信した大容量ファイルを同様の仕組みでダウンロードできるようにしている。

定期的なファイルのアップロード/ダウンロードを自動実行して作業を効率化するサービスもある。ジャストシステムの「InternetDisk ASP」は、管理者が作成したスケジュールに基づき、ファイル転送を自動化する(図1)。各店舗の毎日の売り上げデータを本部で自動収集したり、複数社間で受発注データをやり取りしたりといった運用が可能だ。ソフトバンク・テクノロジーの「Share IT ! Fits」やNTTビズリンク「iTrustee」も同様の機能を備える。

図1ジャストシステム「InternetDisk ASP」のファイル自動アップロード/ダウンロードの仕組み
図1ジャストシステム「InternetDisk ASP」のファイル自動アップロード/ダウンロードの仕組み
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