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「顧客起点の機能強化こそが成長のカギ」--米ソリッドワークスCEO

2011年6月17日(金)

ミッドレンジ3D CADソフト「SolidWorks CAD」などで高いシェアを誇るソリッドワークス社。来日したCEOに成長戦略を聞く。

Windowsネイティブの3D CADソフトなどを展開する米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス社。このほど、同社CEOのベルトラン・シコ(Bertrand Sicot)氏が来日したのを機に、IT Leaders編集部がインタビュー取材した。日本市場への期待を含め、戦略を聞く。

■今年(2011年)1月にCEOに就任してから、今日までの業績をどう評価しているか。

写真 米ダッソー・システムズ・ソリッドワークスCEOのBertrand Sicot氏 写真 米ダッソー・システムズ・ソリッドワークスCEOのBertrand Sicot氏

シコ氏:すでに親会社のダッソー・システムズから発表されているが、第1四半期は好調に推移した。当社には主に4つのプロダクトラインがある。具体的には、メインストリームである3D CADソフトの「SolidWorks CAD」、設計検証製品の「SolidWorks Simulation」、製品データ管理の「SolidWorks Enterprise PDM」、テクニカルドキュメント作成支援の「SolidWorks 3DVIA Composer」だ。これらいずれにおいても、景気後退以前の2008年のレベルに戻りつつあると実感している。

収益の内訳を見ると、80%がメインストリームのCADソフト、残りが他の3ラインというのが現状。ちなみにCADのワールドワイドでのライセンス出荷は154万本に達した。これまでのビジネスの経緯からいってCADへの依存度が高いのは自然なことだが、PDMを中心にした新分野の製品のニーズが着実に高まっている。その点では、マルチプロダクトの会社に成長できたと評価している。

■経営戦略に自身なりの新機軸を打ち出そうとしている?

シコ氏:私はSolidWorksに16年勤務しており、黎明期からの経緯や、成功要因が何であるかは身をもって知っている。だから、CEOに着任したからといって特段に目新しいことをやろうとは考えてない。

もっとも、それは過去の延長線上で大丈夫という発想ではない。イノベーションが激しい業界だけに、常に自分を作り直す、つまりは将来に向けての成功要因は何かを見極めていかなければならない。英語の表現で「What Got You Here Won't Get You There」というのがある。ここまで来れた方法で、次の場所まで行けると思うなという戒めだが、まさにこのフレーズを自分に言い聞かせている。

特に経営者という立場で言えば、短期的な成長ばかりに目を向けないようにしている。他のITベンダーの中には、IPOを果たした後は、株主からの評価を気にするあまり“目先の利益”ばかりを追求するケースもあるようだ。ミクロな視点だけでは、永続的な成長は難しく、必ず壁にぶち当たる。ショートタームとロングタームのバランスこそが大事だ。その点、当社が“ファミリーオウン”系のダッソーグループの一員であることは幸いしている。四半期ごとの実績数値に追われることなく、大局的視点で戦略を描ける。

■日本市場をどうみているか。

シコ氏:とても重要視している。収益面で言えば、これまでも北米に次いで世界2位の市場だ(ちなみに3位はドイツである)。比率で言えば、ワールドワイドの15%強に達している。日本はメカニカルエンジニアリングが発達しているし、高度なスキルを身に付けた技術者も多い。他ベンダーに比べて日本市場の割合がいくぶん高い傾向にあるかもしれないが、この比率は妥当なものと考えている。

何よりも、我々は日本の顧客の厳しい要求によって、鍛えられている。ユーザーコミュニティはとても熱心かつ要求レベルが高く、そこからのインプットを、可能な限り機能強化につなげていくことが、我々の成長にもつながっている。中国などの新興アジア地域を視察するついでに日本に立ち寄る経営者もいると聞くが私は違う。日本の最新事情を体感するのが目的であり、来るとなれば最低でも1週間は滞在して顧客先を回るようにしている。

当社の日本法人については、ちょうど1年前に新しいトップ(大古俊輔氏)が就任し、他の幹部も布陣を強化して力強い組織体制ができあがった。このストロングチームと、リセラーチャネル、そして見識高い顧客という3つの脚で支えられているので、安定感はかなり高い。日本法人の現状を評価するなら…「A+」としておこう(編集部注:100点満点で評価すると?と尋ねたが数値では明言しなかった)。

■SolidWorks製品が日本企業に受け入れられている理由を、どのように分析しているか。

シコ氏:たくさんの理由があると思うが、ポイントをまとめると4つに集約されるのではないか。それは、(1)仕事が直感的に進められる使いやすさがあること、(2)毎年の新リリースの度に、これはと思わせる「イノベーティブ」な機能を実装していること、(3)世界中のトップレベルのデザイナー/エンジニアが使っているという“ポジティブネットワーク”があること、(4)ニーズを聞き入れてくれるという期待感を裏切らないこと、である。

例えば、SolidWorks CADの次期リリースには、設計者が原価を意識しながら作業を進められる機能を盛り込む。素材の違いや各種オプションの採否などによって原価は逐次変わるもの。現状では、設計を終えた時点になってコストが合わないという問題が露呈するケースが少なくない。設計段階からコストを把握する機能は、日本の先進ユーザーをはじめ多くの企業から求められていたもので、これを直感的な操作体系の中に落とし込んだ。こうした地道な取り組みが評価につながっていると信じている。

■クラウドについては、何か考えている?

シコ氏:IT業界のキーワードではあるが、私自身は「クラウド」という言葉そのものはあまり好きではない。ベンダーサイド、つまり製品やサービスの“提供者側”の論理で成り立っている言葉のような気がしてならないからだ。

第一、ユーザーは「クラウドがやりたい」とは言わないだろう。例えば、「仕事にモビリティを持たせたい」「マルチプラットフォームで設計データを共有したい」など、リアルに頭に浮かべられる課題をぶつけてくるはずだ。こうしたニーズを満足できる解を考え、そこに必要とあれば、いわゆるクラウド系の技術を積極的に使うことはいとわない。

例えば、当社にとって初の本格的オンラインソリューションとなる「n!Fuze」。遠隔のエンジニア同士が設計情報をネットワークを介して共有/コラボレーションするための場を提供するサービスだ。マーケティングありきの企業はこれをクラウドサービスとして前面に出すかもしれないが、当社の姿勢は違う。そうした遠隔協働のニーズがあるユーザーなら、n!Fuzeの機能にピンときて、ごく自然に受け入れてくれると思う。

ほかにも、ソーシャルのイノベーションなど目を離すことのできないITトレンドはたくさんある。当然、テクノロジーは重要視すべきだが、ユーザーニーズが一番大事であることは忘れないようにしなければならない。

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