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「ソーシャルは世界を変え、企業に変革を迫る」──SFDCのベニオフCEOが年次イベントで主張

2011年9月2日(金)

ソーシャルツールを使いこなして顧客との関係強化を図る企業、すなわち「ソーシャルエンタープライズ」に、いかに変化していくか―。米セールスフォース・ドットコムが2011年8月30日~9月2日にかけて開催中の年次イベント「Dreamforce 2011」の2日目の基調講演で、同社会長兼最高経営責任者(CEO)であるマーク・ベニオフ氏が、その必要性を会場に熱く訴えた。

基調講演で講演する米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者(CEO)
基調講演で講演する米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者(CEO)

「FacebookやTwitterをはじめとするソーシャルツールの普及が世に大きな変化をもたらしている。人々に新たなつながりの機会を与えるといったレベルを超え、時に一国の体制をも覆すポテンシャルを持つことが実証された」―。基調講演の冒頭でベニオフ氏は、中東で立て続けに起こった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動においてソーシャルツールが大きな役割を果たしたことを引き合いに出し、「今や『ソーシャル革命』が広がりつつある」と指摘した。「アラブの春で民衆が感謝の意を示したのはマイクロソフトでもIBMでもない。Facebookだ」(ベニオフ氏)。

ソーシャルツールは当然のことながら、企業や経営者にも変革を促すと会場にまくし立てた。「間もなく『エンタープライズの春』とも言うべき事態が訪れる。アラブの春では独裁者が退陣に追い込まれた。同じ構図で経営者は、顧客や従業員に対して今まで以上に耳を傾けなければならなくなるだろう」(同)。ベニオフ氏は「ソーシャルツールのユーザーが電子メールのユーザー数を追い越す」「Facebookの利用時間がYouTubeのそれを上回る」といった市場データを持ち出し、ソーシャルツールの影響力を強調した。

“ソーシャルデバイド”を乗り越え
ソーシャルエンタープライズの実現へ

一般消費者のソーシャルツールに対するリテラシーが高まっていく一方で、企業サイドはその動きに追随できていないというのが、ベニオフ氏の見解。その実態を「ソーシャルデバイド」と表現し、対極にある「ソーシャルエンタープライズ」に変容することの重要性を訴えかけた。具体的な取り組みを始める指針として挙げたのが次の3つのステップで、それぞれに支援サービスを用意していることをアピールした。

(1)ソーシャルカスタマプロファイルの構築

顧客を理解することが何よりも先決とし、ソーシャルツール上にある情報(人がどんな嗜好を持ち、どんなコメントを発し、誰とつながっているか)が非常に有用であることを強調。様々なサービスで公開されている情報を元に構築し得る顧客データベースを「ソーシャルカスタマプロファイル」と呼び、この整備が欠かせないという考えを示した。

このフェーズを支援するものとしてSFDCは、米Jigsaw(2010年4月に買収を発表)のサービスを基に開発した「Data.com」を提供する。FacebookやLinkedInなど代表的なソーシャルツールに登録された個人情報から生成した顧客データベースを、サービスとして提供するものだ。

(2)エンプロイソーシャルネットワークの構築

その次のステップとして、従業員を対象としたソーシャルネットワーク(エンプロイソーシャルネットワーク)の構築を挙げた。「新たにコラボレーションの場を作り出すことが目的ではない。ビジネスプロセスやワークフロー、そしてそれらを動かすアプリケーションを1つに統合するもの」(ベニオフ氏)と位置付ける。コミュニケーション手段を超えて、ビジネスプロセスのリアルタイム性を高めるために活用しようという狙いがある。

これを受け、SFDCは企業向けマイクロブログの「Salesforce Chatter」にいくつかの新機能を追加した。Chatterの会話画面に従業員からの申請内容を表示し、ボタンのクリックでただちに承認する「Chatter Approvals」、ユーザーのログイン状況を確認したり自分の画面を他と共有したりする「Chatter Now」などが代表例だ。

(3)カスタマ/プロダクトソーシャルネットワークの構築

3つめのステップは、従業員にとどまらず、顧客や製品までを対象とする「カスタマソーシャルネットワーク」や「プロダクトソーシャルネットワーク」の構築だ。顧客が自社や製品について何を考えているかを明らかにし、自社と顧客との距離をより近づけることを追求する。

ここで重要な役割を果たすのは、同社が2011年5月に買収完了したカナダのRadian6の技術を基にしたソーシャル解析ツール「Salesforce Radian6」である。投稿数が多いキーワードの一覧や、それらのキーワードが書かれたソーシャルツールの投稿内容、特定のキーワードに関する時系列での投稿数推移を表示する機能を備える。またSFDCは、Chatterのポータルに社内の従業員だけでなく他社の人を招待可能にする新機能の「Chatter Customer Groups」を新たに提供する。

製品そのものをソーシャルネットワークのメンバーとして加えるという、新たなコンセプトを具現化するものとしてベニオフ氏が挙げたのが、同社がトヨタ自動車と2011年5月に発表した「トヨタフレンド」である。「バッテリーが不足している」「メンテナンスが必要」といった情報を、クルマ自身がつぶやく、というもの。「製品が“友達”になり得る。これはコミュニケーションに大きな変化をもたらす」(ベニオフ氏)。

プラットフォームの充実や
モバイル対応を加速

ソーシャルエンタープライズを実現するための基盤となる開発プラットフォームの拡充も欠かさない。昨年のDreamforceで発表したオンラインデータベースの「Database.com」については、データの設置場所として、従来提供していたSFDCのデータセンターに加えて、自社データセンターを選択可能にするオプションである「Database.com Data Residency Option」を、2012年初期に提供する。「個々の企業によってセキュリティポリシーは異なる。そこで、データをどこに置くかを、顧客の判断で決められるようにするのが重要だと考えた」(ベニオフ氏)。また、プログラム言語「Ruby」のプラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)である「Heroku」においては、新たにJava言語を利用可能にした。

モバイルへの対応については、HTML5を利用した、同社サービスのモバイル端末向けユーザーインタフェースである「touch.salesforce.com」を発表した。標準技術であるHTML5を利用することで、Androidを含む幅広いモバイル端末で利用できるという。同社は現在、iOSやBlackBerry、Windows Mobile向けに、同社サービス用のクライアントアプリケーションである「Salesforce Mobile」を提供している。

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3日め以降の基調講演やユーザー事例、展示会場の様子などは、Web上の続報および小誌10月号(9月末発行号)でお伝えする。

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