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これからの10年は「ユニファイドスケールアウトストレージ」に照準――ネットアップの新戦略を聞く

2011年11月14日(月)

最近、ストレージベンダー各社がユニファイドストレージへの注力度合いを高め、この製品領域で先行するネットアップへの追撃の手を強めている。そうした動きがあるなかでネットアップは、ユニファイドストレージの進化を促すことで新たな市場を切り拓いていく準備を着実に進めてきた。

1つのストレージシステムでSAN(Storage Area Network)とNAS(Network Attached Storage)の両方の形態に対応するユニファイドストレージが活況を呈している。特に今年に入ってから、この製品領域で主要ストレージベンダーの動きが活発化しており、各社が相次いで新製品をリリースしている状況だ。

その動きを振り返ってみると、2月にEMCが新シリーズ「EMC VNX」を国内で発表。従来のSANストレージ「EMC CLARiX」とユニファイドストレージ「EMC Celerra」という2つの製品ラインをVNXに統合した。また、デルは8月より主力ストレージ「Dell EqualLogic」シリーズの中でユニファイドストレージに着手し始め、IBMはSANストレージ「IBM Storwize V7000」を拡張した「IBM Storwize V7000 Unified」を10月に発表した。オラクルも、Solaris OSとそのファイルシステム「ZFS」というサンマイクロシステムズの資産を活かした「Sun ZFS Storage Appliance」の展開に本腰を入れ始めた。

このように各社がユニファイドストレージに注力する背景には、仮想化やクラウドの進展に伴うストレージ統合ニーズの高まりがある。このニーズは今後も継続すると予想されるため、当面はユニファイドストレージの人気が衰えることはないだろう。

強みは密な“ユニファイド”

そうしたなかで、ユニファイドストレージの嚆矢を自認するネットアップは11月9日、エントリークラスの新モデル「FAS2240」を発表した。同製品の大きな特徴は、1TBのHDDを12台搭載した最小構成で179万円と、従来に比べて大幅な低価格化を実現したこと。既存のエントリーモデル「FAS 2040」が同等構成で457万7,000円であることを考えると、新製品がいかに意欲的な価格設定であるかを理解できる。

米ネットアップでプラットフォーム&ストレージ担当のシニアディレクターを務めるラジ・ダス氏は、FAS2240を含む同社ユニファイドストレージ製品の優位性について、「ハイエンドからエントリーまでの全モデルで、Data ONTAPという共通のストレージOSを搭載することで、運用手法やマニュアルを統一化している。エントリーモデルのFAS2240を導入した後、より大型のストレージが必要になった際には、管理者が新たな運用手法を習得しなくてもリプレースが可能だ」と語る。

ネットアップ日本法人の技術本部の本部長、近藤正孝氏も「ユーザー企業のIT支出のうち7~8割を運用管理費が占めていると言われている。教育やトレーニングへの投資を省けることのインパクトは想像以上に大きい」と、共通OSを採用するメリットを強調する。「徹底した合理化策で知られる米サウスウエスト航空は、運航する機体を1機種に統一することで、搭乗員や整備士の教育/トレーニングに要するコストを抑制している。これと同等の価値をもたらすのが、ネットアップのストレージだ」(近藤氏)。

また、米ネットアップのプロダクトマネジメント担当シニアマネージャー、パラグ・ジョシ氏は、「より上位のモデルにリプレースする際に、FAS2240をディスクシェルフ(ディスク拡張ユニット)として流用できる点も大きなメリット」と指摘する。「リプレース時にデータ量が多いと、その移行だけで数か月も要することになる。Data ONTAPを搭載するFAS2240の場合は、上位機種のディスクシェルフとして接続するだけで済むため、実質的にデータ移行期間はゼロだと言える」(ジョシ氏)。

以上のような同社ユニファイドストレージの優位性をダス氏は、「ネットアップは、全製品に渡ってOS、運用手法、マニュアルや教育/トレーニング、そしてデータと、すべてを“ユニファイド”しており、R&D(研究開発)への投資もユニファイドストレージとその関連領域に集中している。他のストレージベンダーとは“ユニファイド化”の度合いが大きく違うのだ」と総括した。

次の10年を見据えた新機能

共通OSを全製品に採用するメリットは、以前からネットアップが繰り返し訴えてきた主張と同内容であり、ここまでの3氏の話から新規性は感じられない。製品戦略に一貫性があるとは言えるが、前述のように他のストレージベンダーがユニファイドストレージ市場に積極的に攻勢をかけるなかでは、この製品領域におけるネットアップの存在感が縮小傾向にあるような印象を抱いてしまう。

とりわけネットアップの強みを生み出す源と言えるData ONTAPについては、現行バージョン「Data ONTAP 8」が2009年にリリースされて以来、これまで大きなアナウンスはなかった。ユニファイドストレージ市場の先行者として競合ベンダーに追撃を受け、“守り”に入っているのではないのか――この問いかけに対して近藤氏は、「当社がイノベーションを忘れた企業のように言われるのは非常に心外」と、不快感を露わにした。

「1992年の創業以来、ネットアップはストレージ領域において数々のイノベーションを起こし続け、最初の10年でNAS、次の10年でユニファイドストレージという新たな市場を牽引してきた。そうした姿勢は、今でも変わらない。実際に、FAS2240から新たに採用したData ONTAP 8.1には、次の10年に渡って新市場を開拓しうる機能を実装した。0.1とわずかに上がっただけのバージョン番号からは小さい変化に見えるが、その進化の度合いはきわめて大きい」(近藤氏)。

同氏は、ネットアップが次の10年に開拓しようとしている新市場を「ユニファイドスケールアウトストレージ」と定義した。スケールアウトストレージと言えば、EMCの「Isilon」が代表格だが、「IsilonはあくまでもNASのスケールアウト。当社が取り組もうとしているのは、SANとNASの両方の形態でCIFS、NFS、Fibre Channel、iSCSI、FCoEといった複数のプロトコルによるアクセスに対応しながら、スケールアウト型の拡張を可能にするもの」(近藤氏)だという。

従来のユニファイドストレージは、1台のコントローラーヘッドでマルチプロトコルアクセスに応じていたが、そのコントローラーヘッドをクラスタ化するのがユニファイドスケールアウトストレージである。このストレージクラスタの中には、Data ONTAP 8.1を搭載していればFASシリーズのどのモデルでも取り込むことができ、異なるモデルでクラスタを構成することも可能だ。

ストレージ統合のさらなる進展が見込まれる近い将来においては、ユニファイドストレージへのニーズが高まると同時に、統合したストレージ基盤の拡張性をいかに確保するかということが、大きな課題として浮上してくると予想される。その課題に対してネットアップは、ユニファイドスケールアウトストレージという形で、いち早く解決策を提示した格好だ。

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左から米ネットアップ プロダクトマネジメント担当シニアマネージャー パラグ・ジョシ氏、同プラットフォーム&ストレージ担当シニアディレクター ラジ・ダス氏、ネットアップ日本法人 技術本部 本部長 近藤正孝氏

[修正履歴] 当初、製品名に誤りがありました。本文は修正済みです。(2011/11/28)

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