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稼働率100%に向けた3つのポイント─計画的リプレース、運用、そして人

東京カンテイ、2年間ゼロダウンタイムを達成

2011年12月5日(月)瀧内 誠

システムは止まる、無謬性はない、というのが情報システムに携わる者の本音ではないだろうか。 しかし利用者が「動いて当たり前」と考える以上、ゼロダウンタイムを目指して手を尽くすのがシステム部門の役目。 不動産コンサルティングの東京カンテイ(東京都品川区)は2年間にわたり、1秒もサービスを停止させることなく基幹系システムを安定稼働させてきた。 4年周期でプラットフォームをリプレースする、システム経験が浅い担当者でも異常を察知できる仕掛けを導入するなど、 本稿では1万7520時間、稼働率100%を達成するために心がけてきたポイントを公開する。

新たなサービスや事業を展開するためのシステム整備は、情報システム部門にとって最大のミッションの1つだ。それと同様に、現行のサービスや事業を支える既存システムの安定稼働は、情報システム部門が最低限果たすべき重要な任務である。

これらは至極当然のことだが、「動いて当たり前」とされるシステムの整備に、今もなお多くの情報システム担当者が腐心している。特に2つめに挙げた既存システムの安定稼働は、「言うは易し行うは難し」の典型的なケース。“システム産業”とも言われる金融機関のように、システムの維持に数十億円規模を投じている企業でさえ、ノンストップでのシステム稼働につまづくケースが後を絶たないことが、それを物語っている。

しかし、である。ゼロダウンタイムを実現するための策がまったくないわけではない。インフラの見直しやシステムで提供するサービスの設計・管理など、1つひとつを体系立てて実行すれば、小規模の組織でも24時間365日体制でシステムを安定稼働させることができる。

本稿では、2年連続でシステム稼働率100%を達成した当社(東京カンテイ)の取り組みを紹介しつつ、ゼロダウンタイムを実現するためのポイントを共有したい。

2年間、1万7520時間
ゼロダウンタイムを達成

まずは、図1をご覧いただきたい。2008年10月1日から2010年9月30日までの2年間、当社のシステム稼働率が100%だったことを証する文書だ。24時間365日体制で基幹系システムを動かし続け、1秒もサービスが停止していないことを示している。このシステムの運用に携わっているのは実質2〜3人である。

図1  2008年10月1日から2010年9月30日まで東京カンテイの基幹系システムの稼働率が100%だったことを示す報告書
図1  2008年10月1日から2010年9月30日まで東京カンテイの基幹系システムの稼働率が100%だったことを示す報告書

ここで申し上げたいのは、ただ1点。少人数でも基幹系システムのゼロダウンタイムを達成できるという事実である。もちろんシステムに用いているハードウェアやミドルウェア、アプリケーションなどの構成は各社で異なるが、ゼロダウンタイムは決して不可能なことではない。

多くの企業と同様に、当社は長年にわたって蓄積してきた知見に基づいてシステムを運用している。サービスレベルの管理やシステムのキャパシティ管理など、ある意味で当たり前の施策を確実に実行し続けたことが、ゼロダウンタイムという結果につながった。

以下では、ゼロダウンタイムを達成するために当社がとりわけ心がけてきた点を、「プラットフォーム」「オペレーション」「ヒューマンリソース」の大きく3つの視点でみていく。

4年周期のサーバー刷新で不要なリスクを抱えない

当社が実施している施策の1つが、プラットフォームの計画的リプレースである。具体的には、4年周期で基幹系システムのサーバーを最新機種に入れ替えている。実は、この計画的リプレースこそ、基幹系システムの品質を落とさず、長期にわたり安定稼働させるための最大のポイントだと考えている。

ともすれば、問題なく動いているシステムのサーバーをリプレースすると、安定稼働を脅かす余計なリスクが生じると考えがちだ。性能劣化やシステムリソースの不足を補うために、ディスクやメモリーを追加するだけにとどめるという選択肢を採る企業もあるだろう。そのほうがコスト面でも妥当に見えなくもない。ところが、実際にはリプレースに踏み切らないために、システムは数々の不要なリスクを抱え込んでしまう。

分かりやすい例を挙げれば、ベンダーの保守サポート満了がある。7年の保守サポート期間を設ける機種も存在するが、5年というのが一般的。その間に基幹系システムのサーバーをリプレースをしなければ、万が一障害が発生した場合に対応を受けられなくなる。仮に保守サポート期間を延長しても、日進月歩の技術進化の渦中にいるベンダー側に、旧製品に関する技能を持った担当者が在籍し続ける保証はない。結果的に保守料が割高になったり、サポートの質が悪くなったりするリスクを抱えることになる。

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