[技術解説]

M2Mを支える要素技術─通信とセンサーに見る最新技術動向

M2Mを理解する Part3

2012年2月14日(火)IT Leaders編集部

M2Mを活用する動きが広まった背景には、あらゆる場所からデータを収集できる通信技術や、 対象とする機器などの状態を検出するセンサー技術の進化がある。 そこでPart3は、M2Mを支える通信、センサー技術の最新動向を整理する。

 M2Mシステムが求める要素技術を考える上で、まずはM2Mシステムがどのような仕組みで構成されるのかを把握しておきたい。全体像を捉えることで、要素技術がM2Mシステムにどんな効果をもたらすのか、必要な要件は何かを考慮しやすくなるからだ。

 一般的なM2Mシステムの全体像を図3-1に示す。中核を成すのが、データの収集・蓄積と、多様な装置の認証・制御などを司る情報管理基盤である。装置からデータを受信し、これらの中から意味あるデータを抽出してアプリケーションに提供する役割を担う(詳しくはPart4を参照)。

図3-1 M2Mを支えるインフラ基盤
図3-1 M2Mを支えるインフラ基盤

 一方、管理対象機器の挙動を把握する装置においては、さまざまな挙動を計測するセンサーと、センサーで得たデータを情報管理基盤に送信する通信回線の果たす役割が大きい。「昨今のM2M普及の背景には、こうしたセンサーや無線通信回線の技術革新が大きく寄与している。M2Mに取り組む際には、これら技術の最新動向に目を向けるべきである」(ユビキタス・コンピューティング サロンの組込みシステム開発コーディネーター 根木勝彦氏)と指摘する。

 現在のセンサーは小型化、省電力化などが進み、これまで取り付けが困難だった機器への設置を可能とし、さまざまな機器の挙動を把握できるようになった。通信方式も無線通信が一般化し、道路を走行中の自動車などの移動体からも情報を取得することが可能だ。

 通信およびセンサー技術はどんな進化を遂げているのか。以下ではそれぞれの技術動向をまとめる。(編集部)

進化する無線通信方式
大量データの送信も可能に

住吉 浩次
KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション推進本部 副本部長
 

 M2Mでは、端末との通信に無線方式を採用するケースが大半である。自動車のように移動するもの、工場のように有線ケーブルを敷設しにくい場所など、無線方式が適するケースが圧倒的に多いためである。

 しかし、無線といってもさまざまな方式が存在し、方式ごとにメリット/デメリットがある。M2Mシステムを構築する際には、通信速度や利用エリアの広さ、どのような用途を想定するのかを考慮した上で無線方式を選択することが重要となる。

 M2Mに用いる一般的な無線方式を表3-1に示す。無線方式は、無線局免許が必要かどうかで2つに分かれる。それぞれのメリットや主な適用領域について説明しよう。

表3-1  M2Mに用いる主な無線通信方式
表3-1 M2Mに用いる主な無線通信方式

敷居の低さがウリの自前構築方式

 自前構築方式は、無線局免許不要の規格製品を購入すれば、免許手続きをせずとも自前で無線ネットワークを構築できる。もっとも身近な例として無線LAN(Wi-Fi)がある。

 この方式は、通信費用がかからず誰もが自由に使えるという利点はあるが、以下の制約もある。

  1. 発射される電波の出力が小さいため、通信距離が短い。例えば無線LANの場合は20〜30メートル程度が目安である。M2Mの端末を広域に配置する場合、多数のアクセスポイント(親局)を設置し、維持・運用する必要がある。
  2. 周波数を共用するため、干渉を受ける可能性がある。無線LANでは、同じ周波数帯を使う医療機器や電子レンジなどから干渉を受けることが懸念される。また近傍で同じ周波数帯の無線LANを使われると電波が混雑する可能性もある。そのため、通信したい時にデータを送信できないことが起こるリスクがある。この問題は、いつどこで顕在化するか見通せないため、長期的に利用する場合や、広いエリアで利用する場合は注意を要する。

 このように自前構築方式は、「通信距離の短さ」や「通信の干渉」という制約があり、一般的には店舗内や家庭内など限定的なエリアで、通信品質が保証されなくても大丈夫なケースに適する。店舗内に展開するデジタルサイネージや監視カメラなどの用途が該当する。

 自前構築方式には、低速だが省電力性に優れるZigBeeや、電磁ノイズに強いIrDAなどの多くの方式があるが、M2Mで汎用的に用いられているのは、前述の無線LANと特定小電力無線である。

 無線LANはここ数年、対応製品が爆発的に増えている。通信速度も動画伝送などに耐えうる速さのため適用範囲も広く、最も手軽に利用できる方式である。反面、利用者が増えすぎたため、電波の混雑が問題視されてきている。このため従来の2.4GHz帯に加え、5GHz帯も利用可能な端末が普及し始めている。5GHz帯は2.4GHz帯より通信距離は短いが、干渉や混雑緩和に有効である。

 特定小電力無線は、無線LANに比べて通信速度は遅いが以下の利点がある。

  1. 通信装置の消費電力が低い。
  2. 利用する周波数が無線LANより低いことから(400MHz帯や900MHz帯など)、電波が届きやすい。

 こうした特徴から、高速性を必要とせず、少量のデータを間歇的に送信するようなセンサーネットワークなどに適する。

図3-2 左はWi-Fi専用デバイス
図3-2 左はWi-Fi専用デバイス。既存のセンサーと組み合わせればデータ送信が可能となる。右はマイコンを備えるWi-Fi用ボード。センサーと接続するインタフェースを備えるものもある
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