[シリコンバレー最前線]

シリコンバレー各社の“戦績”を総覧、IT企業に対する社会的評価は高い

2012年4月18日(水)山谷 正己(米Just Skill 社長)

シリコンバレーは相変わらず、活況を呈している。2011年におけるIT大手の売り上げは軒並み堅調。ベンチャー投資額は前年比42%の伸びを示した。ビジネス誌の調査では、当地のソフトウェア企業が高い社会的評価を受けていることが明らかになった。

シリコンバレーには、約400ものベンチャーキャピタル(VC)が軒を並べていている。それらVCによるベンチャー企業への投資総額は2011年、前年比42%増の112億ドル。リーマンショック以前の水準に戻った(図1)。

図1 シリコンバレーにおけるVC投資額の推移
図1 シリコンバレーにおけるVC投資額の推移

投資の内訳を見ていこう。分野別に見ると、ソーシャルネットワーキングとクラウドサービス、ビッグデータといったソフトウェア分野の企業への投資が全体の30%と最も大きい(図2)。これにITサービスの7%、サービスの実体はソフトウェアであるメディアの9%を合わせた合計は56%。投資の半分以上が、ソフトウェア関連企業に向けられているということだ。近年、ソフトウェアビジネスを起業するのに大金は必要ない。従って、案件の数がそれだけ多いと推測できる。こうしたことから、シリコン(半導体)バレーではなく「ソフトウェアバレー」と呼ぶべきであるとの声も上がっている。

図2 2011年のシリコンバレーにおけるVC投資
図2 2011年のシリコンバレーにおけるVC投資

ソフトウェア分野において、獲得した投資額の筆頭はFacebookである。Goldman SachsとDigital Sky Technologies(ロシアのVC)から、合計15億ドルを調達した(図3)。これで2004年の創業以来、総額22億4000万ドルに及ぶ投資を受けたことになる。同社のIPOを間近に控えた今、投資家たちは甘い夢を見ていることだろう。

図3 Facebook、TwitterへのVC投資額の推移
図3 Facebook、TwitterへのVC投資額の推移

ますます加速するM&A

新たなスタートアップ企業が生まれる一方で、企業買収が進んでいる。「自社に足りない技術やサービスを持つ企業を買収せよ」というのがシリコンバレー流ビジネスの鉄則だ。自分で開発するよりも、その方が手っ取り早く技術・市場を獲得できるからである。Googleは過去2年、年間26社ずつを買収。Oracleは平均して年間10社を買収し続けている(図4)。

図4 IT大手による企業買収
図4 IT大手による企業買収

例外はAppleで、年間1〜2社を買収する程度。目的も異なる。2009年に音楽配信サービスのlala.comを買収したのは、iTunesの妨げとなるからである。事実、買収後すぐにlala.comのサービスを閉鎖した。

シリコンバレー企業ではないが、IBMの戦略転換に注目したい。同社はかつて、企業買収を一切行わず、自社開発を貫いていた。しかし、21世紀に入ってからは一転、積極的に企業買収を行っている。シリコンバレー・スタイルを見習ってのことか。

働きたいのはGoogle

シリコンバレー企業は、投資対象としてだけでなく、社会的評価も高い。Fortune誌が毎年公表している企業評価によると、2011年における「賞賛すべき企業(Most Admired Companies)ランキング」のトップはApple。2位はGoogleだった(表1)。両社ともに、製品・サービスの開発と収益モデルが健全であることが評価された。2011年におけるAppleの売り上げは1082億ドルと、ついにIBMのそれ(1069億ドル)を超えた(図5)。

順位 賞賛すべき企業 勤めたい企業
1 Apple Google
2 Google Boston Consulting
3 Amazon.com SAS Institute
4 Coca-Cola Wegmans Food Markets
5 IBM Edward Jones
6 FedEx NetApp
7 Berkshire Hathaway Camden Property Trust
8 Starbucks REI
9 Procter & Gamble CHG Healthcare Services
10 Southwest Airlines Quicken Loans
表1 2011年、米Fortune誌による「賞賛すべき企業ランキング」の1位にAppleが輝いた
図5 主なIT企業の売上高の推移
図5 主なIT企業の売上高の推移

一方、「勤めたい企業ランキング(Best Companies to Work for)」のトップはGoogle。2007〜2008年に首位を獲得したものの、2009年からは第4位に甘んじていたが、2011年は再び首位に返り咲いた。興味深いのは、賞賛すべき企業の第1位であるAppleの名が、こちらのランキングには見当たらないこと。仕事上のプレッシャーが大きいからだろうか。

山谷 正己
米国Just Skill, Inc.社長/名桜大学客員教授/IT Leaders米国特派員
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