[[特別編集企画]エンタープライズ クラウド最前線 ~ハイブリッドクラウドの最適解 Windows Azure ~]

第3回:ユーザーが注目するIT基盤としてのWindows Azure

2012年4月17日(火)

ユーザー企業はWindows Azureをどう評価し、どのように活用し始めているのか。1つの例として、東洋ビジネスエンジニアリングの事例を取り上げる。同社は、製造業向けに提供するクラウド型サービス「MCFrame online 原価管理」において、データセンターとWindows Azureを連携。柔軟性確保や機能拡充によって、最終的には顧客のビジネス価値向上につなげている。

製造業のビジネス高度化に注力してきたB-EN-G

戦後、日本の経済成長を支えてきた代表的な産業が製造業である。卓越した職人の技術、きめ細かな品質管理、最先端技術の惜しみない投入、カンバン方式に代表されるサプライチェーン効率化、素材や構造などを考え抜いたデザイン力…。挙げればキリがないが、現場で培ってきたスキルやノウハウの集大成として「メイド・イン・ジャパン」の誇りがある。

日本の「ものづくり」の底力はまだまだ世界に通用するものではあるが、“ビジネス”として見た時には、かつてのように安穏と構えることは許されなくなっているのは周知の通りだ。人件費の安さや技術力向上などを背景にアジアを中心とする国々が勢力を伸ばし、日本は厳しい競争を強いられている。経営管理体制を強化し、常に収益性を考えて事に当たらなくては事業が成り立たない。ITを巧みに利活用した経営基盤が、従来にも増して重要になっている。

こうした中、かつてより製造業に食い込んで、業務改革や経営基盤の構築を支援してきたITベンダーの1社が東洋ビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)である。とりわけ、同社がオリジナルで開発したERP(統合業務)パッケージの「MCFrame」は、日本企業特有のキメ細かな管理を考慮した標準機能と、ニーズに応じた高度なカスタマイズ性が評価され、300社を超える多くの製造業に採用されている。

原価管理に豊富なノウハウと強いこだわり

MCFrameは、大きく「生産管理・販売管理」「原価管理」「共通機能」で構成。それぞれが密接に連携し、現状を把握しながら随時、最適な意思決定を図れるように配慮されている。中でも特徴的でアドバンテージになっているのが「原価管理」だ。標準原価、実際原価、実績原価、予算原価をサポートする一方、配賦ルールを実態に即して柔軟に設定できる。シミュレーション機能と組み合わせることで、目標値を基準に最適解を試行錯誤しながら導き出すなど原価の“見える化”を重視している(図1)。「経営者や管理者が“真に求める”原価管理をビジュアルに支援することを強く意識した製品だ」と、同社プロダクト事業本部の袴田隆マネージャーは説明する。

図3-1 キメ細かな原価管理にこだわったソリューション
図3-1 キメ細かな原価管理にこだわったソリューション

この原価管理のモジュールは、独自にマスターを保有する構造となっており、既存のBOM(部品構成表)などに異存することなく運用できる。他のマスターデータや実績データを取り込むインタフェースもある。つまりは原価管理を単独で導入することも可能だ。実際、他社のERPパッケージを使いながらも、原価管理だけはMCFrameで、という構成を採っている企業も少なくないという。

徹底したコスト管理と利益管理をしていく上で、実態に即した形で運用でき、しかも後からアドオンする敷居も低い原価管理システムはとても魅力的だ。それは、規模の小さな製造業にとっても同じ事。身の丈にあった投資でまかなえるなら、同社の原価管理システムを是非使いたいというニーズは根強かった。こうした市場の声に応えるため、同社は原価管理の部分を切り出し、SaaSモデルでの提供を始めた。2009年1月のことだ。それが「MCFrame online 原価管理」である。

DC環境とWindows Azureを組み合わせてサービス提供

さて、ここからが第3回の本題ともなるわけだが、B-EN-Gは、「MCFrame online 原価管理」のサービス基盤にマイクロソフトのWindows Azureを組み合わせて運用している。

原価管理の機能をサービス(SaaS)として提供する基盤の概要を示したのが図2である。中核となる機能は、B-EN-Gが契約するデータセンター(DC)業者のプラットフォーム上に実装されており、インターネットを介して顧客企業に提供している。これに加え、「実績入力支援機能」と呼ぶ補完的な機能をマイクロソフトのWindows Azure Platform上に展開。同じく、インターネットを介して顧客企業に提供すると共に、Windows AzureとDCの環境が密接に連携する構成を採っている。

図3-2 MCFrame online 原価管理を支えるサービス基盤の概要
図3-2 MCFrame online 原価管理を支えるサービス基盤の概要

なぜB-EN-GはWindows Azureを選択したのか。以下でその背景について触れていこう。

まず「実績入力支援機能」について簡単な説明が必要だ。原価計算にはいくつかのアプローチがあるが、その中で製品の製造や管理などに“実際に要した”額を積算するのが「実際原価」である。プリミティブな方法ではあるが、広く採用されており、とりわけ中小製造業にとっては「取っつきやすさ」がある。具体的な作業として、製造実績や作業実績などの値を入力してもらう必要があり、これをサポートするのが「実績入力支援機能」だ。

一般的には、工場などの製造現場の担当者に入力してもらうことになる。海外も含めて複数の拠点に分散しているケースは多く、さらに月次や週次など入力のタイミングには一定のサイクルがある。この結果、ある特定の時期にデータ入力が極端に集中することが起こり得る。

ここで、B-EN-Gにとってみればピークの処理ボリュームに合わせてDCの設備を増強するのは決して得策ではない。ハード/ソフトの資産を過剰に所有することになるし、当然ながら運用管理・監視の負荷も高くなる。社内で増えるコストはSaaSの料金にも転嫁せざるを得ない。

そこで白羽の矢を向けたのが、ハイブリッド型の運用を視野に入れたクラウド基盤、Windows Azureの活用だ。「処理量の変動(顧客企業の実績値入力サイクル)に合わせてコンピューティング環境を動的に配備できるのはクラウドの真骨頂。B-EN-G自身がサービスを使う立場で必要なインフラリソースを確保できる」(袴田氏)。

さらにデータの同期に悩む必要がない。Windows Azure上に実装している「実績入力支援機能」に打ち込まれたデータは、「Windows Azure サービスバス」を介してDCで稼働する「MCFrame online 原価管理」とセキュアな環境下で同期させることができる。ハイブリッド運用を想定した機能がここで生きるわけだ。

一方で、ユーザーインタフェースの作り込みという観点でもWindows Azureは魅力的だった。マイクロソフト「Silverlight」を活用することで、操作性に優れたリッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)をブラウザ上に展開できる。製造拠点の担当者は必ずしもPC操作が得意なわけではないし、海外の現地採用のスタッフが使う可能性もある。直感的な操作体系は不可欠であり、それを具現化する上でWindows Azureの環境は大きなアドバンテージがあると判断した。

サービスバスを介した外部連携を強化していく

「Windows Azure サービスバス」をうまく活用すれば、オンプレミスの既存システムや他のSaaSとの連携というシナリオもぐっと身近なものとなる。顧客企業の多様なニーズにキメ細かく対応していく上で、機能拡張のしやすさは重要なポイントだ。

B-EN-Gは既にステップを踏み出している。代表例としては、大塚商会の部品構成表管理システム「BOM Conductor」との連携が挙げられる。同製品は、図面や技術情報などの設計資産を台帳で管理し、標準化/流用化を図るもの。ここで管理しているデータをWindows Azure サービスバスを介してMCFrame online 原価管理に取り込む機能をサポートしている。

加えて2012年4月17日には、日本企業の海外法人向けとして同社が開発したオリジナルのERPパッケージ「A.S.I.A.GP」をWindows Azureに対応させたことを発表した。先のBOM Conductorのような使い方から、さらに1歩踏み込んで、A.S.I.A自体がAzureに乗るようにしたわけだ。これによって、MCFrame製品ファミリとより密接な連携が可能になる。

さらに現在、B-EN-GはMCFrame Online 原価管理のサービスを提供するDCの構成の見直しを視野に入れている。OSやミドルウェアの層をマイクロソフト製品に揃えていくことを1つの基本方針として検討しているという。運用・監視などの効率性を最大限に追求するのが狙いだ。それはひいてはサービスの品質やコストパフォーマンスの向上に寄与するはずだ。「顧客起点でもっともっと機能を磨いていく」(袴田氏)としており、今後も同社の事業展開から目が話せない。

日本マイクロソフトは現在、期間限定のトライアルキャンペーンを展開しています。1GB の SQL Azure データベースを持つ S の Windows Azure インスタンスを、試用開始から 90 日間無料で実行できます。

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