PR

PART1 高まるマスターデータ統合への機運

企業の貴重な資産であるマスターデータを見直す動きが活発になっている。その背景には、マスターデータがもたらす企業経営への価値の広がりと、SOAやSaaSに代表されるITのサービス化への対応といった、新たな視点がある。ここではマスターデータを取り巻く最新の状況を動向や効果など5つの視点からまとめた。

機運高まるマスターデータ統合

「当社のような海外でも展開しているメーカーにとって、個々の製品の売れ行きを睨みつつ、在庫の最適化や生産の調整、モデルチェンジなどを行うことは、極めて重要だ。2002年頃から進めてきたマスターデータを中核とするデータの一元化によって、それが国内でできるようになった。現在は欧州や米国など、海外拠点の情報を一元化するシステムの開発に取り組んでいるところだ」(オリンパスの西河敦執行役員IT統括本部長)。

オリンパスだけではない。大成建設社長室の成瀬亨情報企画部企画室長は、「厳しい経営環境の中、リアルタイムに経営状況を把握する必要がある。そこで過去数年かけて、マスターデータ統合に取り組んできた。大変だったが、事業実態の見える化はもちろん、業務の無駄やIT総コストの削減にもつながった。J-SOX法への対応がスムーズにいったことも大きい」と話す。今後は、海外工事管理にまでマスターデータ統合の範囲を広げ、データの集中管理を実現したい考えだ。このほか、味の素やセイコーエプソン、ソニーなども先駆的に、マスター整備を軸にしたデータ管理に取り組んでいる企業である。

海外に比べ、遅れている日本

しかしマスターデータ統合の動きは、海外企業に比べて遅れている。図1に、IBM Global Business Servicesの調査「The Global CFO Study 2008」を示した。企業全体での勘定科目の共通化・標準化は海外の56%に対し、日本は38%でしかない。

画像:図1

ユーザー企業にIT戦略をアドバイスするITRの浅利浩一プリンシパル・アナリストも、「日本は10年以上、遅れている」と指摘する。「米国の大企業では10年前から、マスターデータの保持に統括責任を持つ“データスチュワード”という役職を設けている。日本では専任の担当を置くところはほとんどないのではないか」。

経営実態の可視化からコスト削減まで

ユーザー企業の立場から見ると、マスターデータ統合の価値は、あらゆるところに見いだすことができる(図2)。

画像:図2

まずは、ITコストの削減。マスターデータの維持管理費用はもとより、データ重複に伴う無駄なITインフラ費用、システム開発時にデータ構造を調査するコストなどを削減できる可能性がある。

より大きいのが、事業・経営面に与える効果だ。社内の製品在庫の動き、顧客の購買動向、顧客サービスの向上など多くの面で、データ活用が可能になるからである。「企業内外の“人モノ金”の動きを、リアルタイムで把握しようとすれば、データの整合性や鮮度が大前提になる。そのためにはマスターデータの整備が欠かせない」(アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部の後藤洋介パートナー)。

第3が、経営品質へのメリットである。正しく鮮度のいいデータ(情報)に基づく意思決定はもちろん、日々の業務オペレーションにおける間違いや齟齬の防止などに役立つ。図にはないが、J-SOXへの対応や、SOAやSaaSといった最新ITの活用にも、マスターデータの整備は欠かせない。

マスター統合の壁は少なくない

様々なメリットがある中で、マスターデータ統合が進まなかった理由は何か。1つは、マスターを工学的に捉え、あるべき姿を明らかにするアプローチがほとんどなかったこと。例えば、一口にマスターデータといっても、管理項目やデータ形式を示す「マスターリファレンスデータ」と、顧客マスターや製品マスターといった「コアマスターデータ」がある。特に前者は、利用するIT製品の制約を受けてバラバラになりがちだった。

第2は、現場(利用部門)サイドの反発。すでに稼働しているシステムがあり、そこにはなじんだマスターも備わっている。現場からすれば、動いているものを、変更する必然性がないのだ。

さらに、いったん統合しても、顧客の企業名や製品名が変化する、つまり維持・メンテナンスの問題もある。顧客の社名や製品名が変わる、あるいは顧客のグループ企業の資本関係に変更があると、現場任せではメンテし切れない。

「何よりも大きいのは経営層、事業部門、システム部門のいずれにとっても、優先度が高くなかったこと。何となく必要なデータが入手できない不自由さを感じていても、業務上、重大な問題になることがなかった」。データスチュワード事業を専門に展開するリアライズの大西浩史社長は、こう指摘する。

増えるMDMツール

こうした状況や課題を受けて、マスターデータ管理を支援するマスターデータ管理(MDM)ツールが次々と登場してきている。ツールはその成り立ちから、①データベース管理システムの機能強化から進化したもの、②ERPのマスター管理機能を拡張したもの、③ETLツールやEDIツールから進化したもの、④CRMの顧客管理機能から進化したもの、の4つに区分される。

本来、それぞれ強みは異なるが、バージョンアップを重ねるにつれて様々なニーズに対応できるよう、多機能化が進みつつある。詳細は本特集の後半で解説するが、これ以外にもマイクロソフトが2007年7月にマスターデータ管理ツールベンダーであるStratatureを買収。Microsoft Office SharePointに統合する形で、2009年に発売する予定だ。同社のインフォメーションワーカービジネス本部エグゼクティブプロダクトマネージャの米野宏明氏は「重要なのは、日々の業務の中で情報を自由に活用できること。マスターデータのバージョン管理やモデリングにStratatureの技術を取り入れていく」という。

編集部

IT Leaders 毎月無料でお届けいたします

本誌は、読者登録いただくことにより、毎月無料でみなさまのお手元まで直接お届けいたします(書店などでは販売していません)。

企業の情報システムを担当する方々や事業部門のIT担当の方々、およびIT関連プロフェッショナルの方々を対象に、実践的に役立つ情報を掲載、幅広く業務にご活用いただけます。

IT Leaders新規購読お申し込みはこちらから
Ads by Google