PR
Part3 製品の系譜
BIは大きく3つの時代を経て進化してきた。具体的には「オープンシステム時代」「Web時代」、そして現在の「ERP統合時代」である。つまり、コンピューティングスタイルの変化と共に、機能や存在価値を変化させてきたのだ(図3-1)。
最初のオープンシステム時代は、1990年から97年ごろを指す。いわばBIの“黎明期”に当たり、クライアント/サーバー型での活用が基本だった。UNIXサーバーの普及によって情報系という分野が生まれ、それまでEIS(Enterprise Information System=経営者向け情報システム)とかDSS(Decision Support System=意思決定支援システム)などと言われていた分野がBIに発展。クライアント側のアプリケーションを開発するツールも多く登場し、いわゆる「ファットクラアント」でのコンピューティングスタイルが基本だった。
このクライアント/サーバー型アプリケーションの1つとして、汎用機やオフコンからデータを取り出し、それらデータをサーバーに移行した上でクライアントPCから分析するOLAP(オンライン分析処理)が始まった。キューブ型の多次元データベースを使って所定の集計処理をサマリーしておき、スライス&ダイスやドリルダウンといった手法で様々な分析結果を得るBIツールが、営業やマーケティングの分野で使われるようになった。
当時のOLAP分野における代表的なツールとして、フロント系では加コグノスのPowerPlay、多次元データベースでは米アーバーソフトウェアのEssbaseや米IRIのExpressなどが挙げられるが、ユーザーはパワーユーザーに限られ、それほど多くの人が使うものではなかった。
この時、BIと並行して市場の注目を集めていたのがデータウェアハウス(DWH)だ。ハイエンドマシンの登場によって生まれたDWHというデータの活用分野は本来、BIとは別の世界。そこでは、ITリテラシーが高くないエンドユーザーでもDWHのデータを活用できるように配慮した「Query & Report」ツールが提供され、情報システム部門主導で導入が進んだ。
具体的な製品としてはBuisnessObjects、BrioQuery、Cognos Impromptu、MicroStrategy、Oracle Discovererなどが挙げられる。機能としてはそれほど高度なものではなかったが、一般ユーザーを対象とした製品だけに数がはけて、ベンダーにとって手離れもよかった。例えばコグノスでは、看板製品はOLAPツールのPowerPlayでも、ビジネス面ではImpromptuが支えるという構図になっていた。
OLAPツールとQuery & Reportツールの時代は長く続いた。しかし、OLAPツールはメンテナンスが難しく、高度な技術スキルが要求されたことから、広く浸透するには至らなかった。一方、Query & Reportツールは、DWHのデータ「抽出」ツールへと変化していくことになる。
機能衰退を起こしながらもWeb対応でコモディティ化
インターネットの普及と共に97年ごろから始まったWeb時代は、ITインフラの変化によってコンピューティングスタイルが大きく変化した時代である。BIから見れば特に必要な変化ではなかったが、DB/アプリケーションサーバー/ブラウザの3層型に対応するのは時代の趨勢から必然だった。OLAPツールもQuery & Reportツールも、Web対応を余儀なくされた。
しかし、これは一時的にせよBIツールの機能の退化につながった。BIの中心的な機能をアプリケーションサーバーに置き、表示系をクライアント側で処理するわけだが、Javaアプレットの成熟度はまだ低く、ネットワークインフラも細かった。このため、ユーザーインタフェースが貧弱にならざるを得なかったのだ。
この流れの中で、Query & Reportツールは「Webレポーティングツール」へと変化した。もともとITリテラシーが高くないエンドユーザー向けのツールだったが、ブラウザベースでさらに簡単に操作できる点が受けてユーザー数は一気に増えた。これはBIのコモディティ化の始まりであり、高度な分析という意味からは、BIの空洞化ともとらえられた。ただ、BIベンダーにとっては、ビジネスを拡大するチャンスだったことは確かだ。
このころ、もう1つの大きな変化が起こった。RDBのキャッシュ技術の進化、ストレージとのデータ通信の高速化、CPUパワーの増大などによって、多次元データベースのようなキューブ型のモデルで分析を行う必然性が薄れたのである。
多次元モデルによるOLAP、つまりM-OLAP(Multi-dimentional OLAP)は、データをバッチ処理で取り出して、あらかじめ多次元DBにデータを格納し、ユーザーの要求に応じて切り出すことで、クロス集計などを高速化していた。スライス&ダイスという、BIの代名詞的な使い方は、M-OLAPの最も得意とする分野だった。
これに対してRDBで多次元分析するR-OLAP(Relational OLAP)は、分析要求に対して都度クエリなどの処理を行うため時間がかかり、実用的ではないとされてきた。ところが先に触れたコンピューティング能力の向上によって、問題なく使えるようになった。フロントのOLAPツールがWebへ対応すると共に、サーバーサイドでは単純なOLAPであればR-OLAPで十分対応できるという考えが広がり、M-OLAPの有意性が薄れてしまった。
もっとも、M-OLAPがどうしても必要な分野もあった。管理会計の分野である。勘定科目の体系や企業の組織は、「不均一階層」の構造を持っており、大量のデータを処理する上では、RDBで表現するのに向かない。管理会計ソフトウェアベンダーとOLAPツールベンダーの統合が始まることになった背景の1つはここにある。不均一階層とは例えば、「営業本部の下に営業部と営業企画部、営業管理課があり、営業部はさらに営業1課と2課に分かれる」といったように、組織や体系内の階層の数にばらつきがある状態を指す。
管理会計ソフトの大手である米ハイペリオンソリューションズがEssbaseやBrioQueryといったBI関連ツールを買収によって手中にする一方、BIベンダー大手の仏ビジネスオブジェクツが管理会計ソフトの仏カルテシスを買収したのは典型例だ(図3-2)。「単体ではビジネスにならない」といった認識のもとで統合が進み、今のERP統合の時代につながっている。
ユーザ側の明確な意思をベンダーに伝える
ERP統合時代は、メガベンダーの時代であり、BIという市場セグメントの終焉を意味しているのかもしれない。見方を変えれば、BIのマーケットがニッチで終わり、メジャーにはなりきれなかったということだ。
この時代は2007年7月にオラクルがハイペリオンを買収して幕が開けた。10月にはSAPがビジネスオブジェクツを、翌11月にはIBMがコグノスを買収。これら一連の大型買収によって、BIのマーケットはがらりと様相が変わった。多様なソリューションを持つメガベンダーに飲み込まれたことで、従来ながらのBIのマーケットを単独で見ることの意味が無くなったのだ。
今のマーケットは、メガベンダーと特定分野に特化したニッチベンダーが共存している状況にある。メガベンダー以外としては、データマイニング系で高度な分析を得意とする米SAS Instituteや米SPSSは独自の顧客を持つ。データベースのキャッシュ技術に優れた米MicroStrategyは大量データに対する強みを生かして米Teradataなどとの組み合わせで流通業などを得意顧客にしている。このほか、手軽に集計できることを武器とするDr.SumやWebFOCUS、DWHの世界に特化したNeteezaやSybaseIQといった、キャラクターの濃いプレイヤーが独自の世界を作っている。
一方、メガベンダーはBIツールを単体で扱おうとはしていない。メガベンダーの基本戦略は、業績管理や情報活用に必要なツールを「すべて自前で持つ」ことにある。もっと乱暴な言い方をすれば、一連の買収はツールもさることながら、その先の顧客に魅力を感じたともとらえられる。これからメガベンダー各社は、自社のソリューションが入っていない分野でのリプレース合戦を繰り広げることが予想される。前述したメガベンダー3社のほか、マイクロソフトもその土俵に上がってくるだろう。
こうした状況の中で、ユーザー企業には、今まで以上に明確な意思表示が求められる。「パフォーマンスマネジメントツールが欲しい」ではなく、「連結会計のプランニングツールが欲しい」といった具体的な要望を伝えることが何よりも大切になる。ソリューションを名指しするぐらいの気持ちでいないと、多様な提案にかえって混乱することになるだろう。
そのために重要なのが、エンドユーザーのリテラシーの底上げだ。今、BIツールを入れているのであれば、もっと使いこなすこと。ツールを入れ替えるだけでは問題は解決しない。どんなBIツールを入れるかより、活用するための教育に考えを巡らさなければならない。その上で、BIをどう活用していくかを明確にして、具体的な展望を描くべきだ。それがERP統合時代のBIとうまく付き合う方法である。
- 平井明夫
- アイエイエフ コンサルティング マーケティング部 マーケティングディレクター
- データセンター見積もりは「DC完全ガイド」
最新iDCやテクノロジ・製品情報が満載。iDC事業者・サービスカタログで見積もり資料請求にも対応 - レンタルサーバー比較検索「RS完全ガイド」
共用・専用・VPS、国内1600以上のレンタルサーバー/ホスティングから最適なサービスを比較検索 - クラウド比較検索「クラウドサービス完全ガイド」
企業に役立つクラウド関連記事、製品・サービス情報




