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Part5 選択肢が広がるBI製品

統計解析からエクセル代替までルーツは多様
機能拡張を繰り返してBI市場に投入

パート4で見たメガベンダー以外にも、数々のBI関連製品が市場に投入されている。 統計解析をルーツに適用分野を広げてきた製品や、DWHの高速処理技術をベースにするものなど、バリエーションは様々だ。 位置づけを整理しながら、それぞれの特徴を見ていこう。

先に見た日本IBM、日本オラクル、SAPジャパンのスイート製品以外で、国内市場で手に入る主要なBI関連製品をまとめたのが表5-1だ。その中から特徴的な製品をピックアップして見ていこう。

表5-1 BIの一般的な構成要素。最近はBI基盤全体をカバーする動きが活発化している
製品名(提供元) 概要
ARIS Performance Dashboard ほか
(IDSシェアー・ジャパン)
ビジネスプロセスの全体最適を図る製品群「ARIS Platform」上のソリューションとして提供。定めたKPIの実情を測定するとともに意思決定をサポートする。「ARIS Performance Manager」「同Performance Dashboard」「同Process Event Monitor」などで構成
WebFOCUS 7.6
(アシスト)
メインフレームやクライアント/サーバー環境における4GL(第四世代言語)から発展したBIツール。ERPや各種DBとのアダプタを介して分析処理を実行する「レポーティングサーバ」を中核に、ダッシュボードや非定型分析処理、Excelから使うアドインなどを用意
Dr.Sum EA Ver3.0
(ウイングアーク テクノロジーズ)
部署単位などでExcelでは扱い切れないデータ量の集計処理を担った製品が出自だが、機能拡張を続けて全社規模でのBI用途を視野に入れる。ETL処理を事項する「Connect」、ダッシュボードの「Visualizer」、集計分析の「Datalizer」などをラインナップ
ADVIZOR
(エー・エス・ジェイ)
分析対象データをメモリー上に読み込んで高速に処理する独自のオンメモリー型アークテクチャを採用。マウス操作で直感的に操作しながら分析作業を進められる。スタンドアロン型の「Analyst/X」、サーバーを使ってWebから操作する「Server AE」などがある
SPSS/Clementine など
(エス・ピー・エス・エス)
高度な統計解析ツール「SPSS」やデータマイニングルール「Clementine」を基盤とし、そのノウハウを活かして業績管理分野にも進出。キャンペーン分析やコールセンター業務管理といったマーケティング分野向けなど、特化型のアプリケーションを展開する
Sybase IQ
(サイベース)
独自のカラム単位のインデックス作成方式などで高速検索処理を可能としたDWH特化型DB。データ統合ツール群のData Integration スイートを用意。分析には関連会社アイエニウェア・ソリューションズの「AnswersAnywhere」などが使える
SAS Enterprise Intelligence Platform など
(SAS Institute Japan)
高度な統計解析ツール「SAS」を基盤とし、そのノウハウを活かして業績管理分野にも進出。データ統合、DHW構築、分析や将来予測、ダッシュボードなどスイート化を図る。財務分析、顧客行動分析、リスク管理、サプライチェーンマネジメントなど特化型アプリケーションも展開
myNavigtor
(ジール)
バランススコアカードによる経営戦略策定を起点に、予算編成などの財務業務や人材開発・評価などの人事業務も含めた総合的なビジネスプロセスを管理するツール群。ダッシュボード機能や、DWHを使った各種分析機能などを実装できる
Infor Performance Management 10
(日本インフォア・グローバル・ソリューションズ)
企業戦略からビジネス計画、予算策定までを統合支援する「BPA」(Business Process Application)と、特定の業務要件に対応したデータ分析を支援する「BSA」(Business Specific Analytics)で構成する
MicroStrategy 8
(マイクロストラテジー)
単一メタデータ管理の基盤上で、ダッシュボードやOLAP分析、レポーティングなどの機能を提供。Webブラウザーの使用を前提に、閲覧者向け、分析者向け、パワーユーザー向けなどきめ細かいツールを用意する。独自のキャッシュ技術による高速DB処理が特徴
Microsoft Office PerformancePoint Server 2007
(マイクロソフト)
予算編成や予測などの「プランニング」、活動の成果をリアルタイムに把握する「モニタリング」、原因分析する「分析/レポーティング」を主な機能とし、エクセルやWebブラウザを通じたワークフロー/情報共有で効率的なPDCAサイクルを支援する
myB3smart
(マクニカ)
ビジネスデータの可視化、ダッシュボード構築機能に特化したサーバーソフトウェア。RDB、Exce、CSV、XMLのデータを取り込むためのアダプタを備え、立体的なグラフやメーター形式、信号機など好みのパーツを組み合わせた画面を構築できる

BSCベースに業務を見える化

企業システムの分野において地歩を強化したいマイクロソフトが2007年11月に市場投入したのが「Microsoft Office PerformancePoint Server 2007」である。

予算編成や予測などの業務を担う「プランニング」、活動の成果をリアルタイムに把握する「モニタリング」、原因分析する「分析/レポーティング」を主な機能とし、ExcelやWebブラウザを通じたワークフロー/情報共有で効率的なPDCAサイクルを支援することを狙った製品だ(図5-1)。財務的な指標だけでなく顧客や業務プロセスの視点も交えて戦略策定と業績評価を支援する手法「バランススコアカード(BSC)」をベースに、業務全体の「見える化」を図ることがフレームワークになっている。「実際にマイクロソフトが自社内で使いながら機能をブラッシュアップしてきた製品だ」と、インフォメーションワーカービジネス本部の米野宏明 IWソリューションマーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャは説明する。必ずしもBSCに準拠する必要はないが、まずは管理指標を明確にしなければならない。

図5-1
図5-1 マイクロソフトは経営のPDCAサイクルの効率化・迅速化を訴求

Webブラウザをベースとした分析画面では、対話形式のウィザード機能によって望むデータを抽出できるほか、その時の検索条件などを保存して他のメンバーと共有したり、ダッシュボードに表示するパーツに流用できる。

プランニングはエクセルをインタフェースとし、シートに書き込んだデータは直接サーバー上の多次元DBに格納される。例えば予算編成などの場合、各部門の担当者がデータを入力した時点でサーバー上で直ちに再集計されるほか、予算達成に必要な差分額を所定のルールで配賦処理するといった機能を備えている。

統計解析から業務密着型へ

高度な統計解析やデータマイニングの分野から発展してきたのがSAS InstituteやSPSSの製品だ。例えば携帯電話のキャリアが顧客ごとの通話時間や利用時間帯、データ通信/通話の種別といった膨大なデータから、数カ月以内に解約しそうな顧客を選び出す予測モデルを作ってシミュレーションするといった分野で、分析の専門家が駆使してきた領域である。

近年は2社ともに業務密着型を標榜しており、マーケティングにおけるキャンペーンの計画/評価や流通業における顧客行動分析、金融機関向けの予測分析システムなど、ターゲットを特定したソリューションの展開に注力している。「単にダッシュボードで現状を把握するのにとどまらず、将来を予測する分野で強みを出していく」(SAS Institute Japanの池本洋信ビジネス開発部長)という。

独自技術を生かして使い勝手をアピール

分析時の応答性などで独自の技術力を訴求する製品もある。例えば1989年の設立から一貫してBI市場に特化しているマイクロストラテジーは、RDBにおけるキャッシュ技術に強みを持つ。独自のアルゴリズムで多次元DBのようにデータをキャッシュしておき、できるだけDBサーバーにアクセスせずに検索すべきデータをフロントツールに返すことで高速化を図っている。最新製品は「MicroStrategy 8」で、データ統合からダッシュボード、各種分析ツールなどを取りそろえる。

DBの高速処理ではサイベースも目立つ存在だ。同社のSybase IQはDWHの用途に特化したDBである。RDBで一般的なレコード単位のテーブル構造とインデックス作成の組み合わせで管理するのではなく、カラム単位でデータを管理することを特徴とする。データ検索時、レコード単位だと不要なカラムもストレージからメモリーに読み込んでしまうため処理が重くなりがちなほか、メモリーやCPUパワーなど余計なリソースも消費してしまう。Sybase IQはこの問題を回避しており、迅速なレスポンスを売りする。

フロントツールとして一般的なBIツールが使えるほか、関連会社アイエニウェア・ソリューションズが「AnswersAnywhere」を提供。自然言語や文脈解析機能を搭載しており「今年上半期の地区別の売り上げを見たい」といった入力テキストから、データの検索/抽出処理ができる。

2008年に国際市場に登場したエー・エス・ジェイの「ADVISOR」は、オンメモリー処理による高速な分析と可視化を特徴とした製品だ。「一昔前に比較するとメモリーは格段に安くなり、個人のPCでさえ数GBを搭載する時代。一般的な業務のデータなら、このメモリー内で十分な分析処理ができる」(百瀬公朗 最高技術責任者)。

スタンドアロンで使う場合もサーバーとWebブラウザの組み合わせで使う場合も、まずは業務システムからCSV形式などでデータをメモリー上に読み込む。画面には、最初は表形式で表示されるが、ボタンを1つ押せば立体グラフや散布図など好みのスタイルで表現できる(画面5-1)。分析の過程で、いざとなればすぐに元データ(明細データ)にさかのぼって参照できることに重点を置いている。例えば利益率と売り上げを2軸にとった顧客の散布図を描いておき、孤立エリアにある1つの点をクリックすれば、その顧客IDや実際の利益率や売り上げが直ちに表示されるといった具合だ。また、散布図の中で売り上げは高いが利益率が低いと思われるエリアを選択ツールで囲めば、その範囲内にプロットされている顧客リストをすぐに表形式で出力できる。

画面5-1
画面5-1 ADVIZORを使い、利益率と売上高の2軸で顧客の散布図を表示した

「分析者の思考を妨げないという観点で、ツールのレスポンスはとても重要な要素。次々と視点を変えて試行錯誤を繰り返す使い方をするなら、自社の実際のデータを持ち込んで各製品の応答性を体感して比べることを勧める」(百瀬最高技術責任者)。

HOWS(ハウズ)が研究開発を進めるWeb基盤技術である「ISSEI」も、膨大なデータを対象とした分析/検索で注目に値する。一般的だった「インデックス」という検索概念にとらわれない独自のデータ構造を用いて、これまで難しかった検索条件に関連、あるいは近似するデータを同時に取得することを狙っている。

ボトムアップでBI全域をカバー

部署単位など、小規模な組織での簡単なデータ分析といった用途から発展してきたBIツールもある。

その代表例がウイングアーク テクノロジーズの「Dr.Sum EA」だ。Sumという製品名が表しているように、当初は集計処理を中心としたツールだった。比較的小さな組織で、サーバーに蓄積したデータを一定条件で集計したいが1枚のエクセルシートで処理するのは機能的に限界というユーザーが使う例が多かった。その後、「データ検索エンジンをチューニングする一方、ダッシュボードや業務システムからのETL処理など、顧客の要望に応じて機能拡張してきた。結果として、部署単位から全社規模まで広く対応できるラインナップが揃った」(小島 薫 Dr.Sum事業部長)。

中核のDr.Sum EAにはデータ処理量に応じて3つのエディションがある。2000万件までを対象にした「Advanced」がエントリーモデルで、「Premium」(1億件未満)、「Enterprise」(1億件以上)と続く。そのほか複数のデータソースを統合する「Connect」、ダッシュボード「Visualizer」などの周辺ツールがある。

メインフレームやクライアント/サーバー環境における4GL(第四世代言語)から発展したBIツールがアシストの「WebFOCUS」。ERPや各種DBとのアダプタを介して分析処理を実行する「レポーティングサーバ」を中核に、「BIダッシュボード」や非定型分析処理などを担う「マネージドレポート」、Excelから使うアドイン「クイックデータ」などを用意する。

メインフレーマなど国内大手ベンダーの動向

メインフレームの時代からシステム構築を手がけてきた他のベンダーはBI分野にどう取り組んでいるのだろうか。主要な製品やサービスをまとめたのが表5-2である。

表5-2 国内の主要大手ベンダーのBIへの取り組み
提供元 主な製品/サービス 概要
NEC Business Objects製品群 ソフト単体の提供のほか、DBなど必要な製品を組み合わせてカスタマイズを抑えて導入する「myNavigator for BusinessObjects」も提供
InfoFrame Dr.Sum EA ウイングアーク テクノロジーズの「Dr.Sum EA」を、NECの情報管理基盤「InfoFrame」上の情報分析領域の製品として提供。2008年12月にデータ連携・統合ソフト「InfoFrame DataCoordinator」との連携を強化した
MicroStrategy8 2008年7月から提供開始。同製品と親和性の高いNetezza社のDWHアプライアンス製品「Netezza Performance Server」と組み合わせたソリューションも提供
その他 顧客ニーズに応じて、Cognos製品群やWebFocus製品群なども提供
NTTデータ データウェアハウス/ ビジネスインテリジェンス・ラボ 2008年11月に開設。DWHやBIツールの導入を検討している顧客向けに、性能検証やデモを行う。検証可能なBIツールは「Oracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition」、「Hyperion Interactive Reporting」、「BusinessObjects XI 3.0」、「MicroStrategy 8」、「IBM Cognos 8 Business Intelligence」の5製品
日本ユニシス BIシステム構築サービス 「データウェアハウス構築サービス」と「データマート構築・BIツール適用サービス」で構成
Microsoft SQL Server BI構築サービス SQL Serverの機能を利用したBIシステムの構築を支援する。SharePoint Server 2007を利用しBIポータルの作成を支援する「BIポータル構築」サービスも用意
MartSolution BIシステムの構築を支援するツール群。データマート構築ツール「MartBuilder」、レポーティングツール「MartBrowser」、ポータル作成ツール「MartPortal/MartNavigator」で構成する
MiningPro21 データマイニングツール。汎用的な分析機能を持つ「基本分析モジュール」と、各種業務に必要な分析を組み込んだ「分析テンプレート」で構成
日立製作所 HITSENSER5 OLAPツール。C/S版とWeb版を用意。分析結果を多彩な形式で表示する。分析手順を定型化して登録し、共有できる
富士通 Interstage Navigator 情報統合・活用製品群「Interstage」の1製品として提供。同製品群の他製品とデータを連携し、業務プロセスの可視化を支援する。DB上のデータだけでなく、CSV形式のデータも集計・分析できる。ユーザーが分析軸を簡単に追加できる機能も持つ
Cognos製品群 BI製品「Cognos 8 BI」、OLAPツール「Cognos PowerNavigator Server」、MOLAPツール「Cognos PowerPlay」を提供

自社アプリケーション実行基盤向けの独自製品もあるが、一般的な商談ではフロントエンドにはコグノスやビジネスオブジェクツなどの製品を使い、DWHの構築などと合わせたシステムインテグレーションを進める例が多いようだ。なお、IBM(コグノス)やSAP(ビジネスオブジェクト)は買収後も広く他ベンダーに製品を提供していく方針であり、自社プラットフォーム限定というわけではない。

NECはフロントツールとしてコグノス、ビジネスオブジェクツ、マイクロストラテジーなどの製品を扱う。さらに、2008年6月に資本提携したウイングアーク テクノロジーズの「Dr.Sum EA」を同社の情報管理基盤「InfoFrame」上におけるBI製品として位置付けるとともに、データ統合ツール「DataCoordinator」と「Dr.Sum」の機能連携も強化している。

富士通はBIソリューションの「Interstage Navigator」を提供。これは同社のアプリケーション基盤「Interstage」上のBIツールという位置付けで、データ統合や分析/レポーティングといった機能を含む。ほかにコグノス製品群も取り扱う。

加えて2008年10月には、ERPソフト「GLOVIA」の1モジュールとして「GLOVIA/MI」を発表した。これは、企業活動の最小記録単位である取引明細情報を蓄積し、業務プロセスと関連付けて管理するものだ。現場で刻々と動く業務実態を把握するとともに、各種の分析を通じて将来予測もカバーすることを狙う。

NTTデータは2008年11月に「データウェアハウス/ビジネスインテリジェンス・ラボ」を開設。このラボでは、BIの導入を検討する企業に対し、製品選定のアドバイスに加えて性能検証などのサービスを有償で提供する。

SaaSベンダーもBIに注力

企業情報システムの新たな実装方式としてSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に注目する企業が増えている。当たり前ながら、システムの形が変わっても情報活用のニーズは不変であり、SaaSベンダーはBIを意識した機能を盛り込むことに余念がない。

セールスフォース・ドットコムはSaaSアプリケーションの「Salesforce CRM」の基本機能として、分析/レポート機能やダッシュボード機能(画面5-2)を標準装備する。Salesforceのデータベースに格納しているデータに対し、抽出したいデータ項目や月別などの軸をWebブラウザ上で指定すれば、集計結果が画面に表示される。好みに応じてグラフ化できるほか、常に見たい指標についてはダッシュボードとして登録できる。

画面5-2
画面5-2 Salesforce CRMにおけるダッシュボードの例

「一般的な分析なら標準機能でも十分に対応できる」(セールスエンジニアリング本部の内田仁史シニアプリンシパルアークテクト)ほか、もっと高度な分析がしたいという場合には、アプリケーション共有サービス『AppExchange』に登録されているサードパーティーのツールを使ったり、CSV形式ファイルなどで他のBIツールにデータを移行して分析する方法がある。

CRM、ERP、Eコマースなどを対象にしたSaaS「NetSuite」を提供するネットスイートも同様に、標準でBI機能を備える。収入見込みなどの指標をダッシュボードに表示したり(画面5-3)、Webブラウザ上の簡単な操作でデータを抽出・分析したりできる。ユーザー企業が別途用意した一般的なBIツールから、ODBC経由でNetsuiteのデータベースに直接アクセスするという使い方も可能だ。

画面5-3
画面5-3 NetSuite におけるダッシュボードの例

「顧客ニーズに合わせて、SaaSアプリケーションは進化をする。合理的で速やかな意思決定がますます求められる中、BIの機能は特に充実する分野の1つになる」(高沢冬樹 上席執行役員)。

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