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電源オフのパソコンも自在に管理 運用負荷を軽減する対応ソフトが充実
「勤務時間外など、PCの電源がオフの状態でもリモート管理できる利便性に注目した」−。パイオニアの中村 正彦・情報戦略部統括部企画グループ副参事は、vPro搭載PCを採用した理由をこう話す。社内にはすでに2000台を導入済み。同社のほかにも、富士フィルムや聖路加国際病院といった大手が続々とvPro搭載PCの導入を始めている。
社内に散在する大量のPCを集中的に管理し、運用にかかる負荷を可能な限り軽減したいというのが、これらの企業に共通するvPro採用の理由だ。障害を起こしたPCをメンテナンスする、OSやアプリケーションのパッチを当てる…。現地に赴いての作業は手間も時間もかかるし、様々な事象への対応をうたうリモートメンテナンスツールを全PCに導入するには費用もかさむ。仮にそうしたツールを導入していても、そもそも対象PCのOSが障害を起こしていたり、電源がオフになっていたりするとメンテナンスできないといった問題もある。
こうした課題を解決するものとして注目されているのがvProである。
インテル製チップが必須
技術要件も規定
vProは、PCをリモート管理するのに必要な機能などをファームウェアとしてハードウェア(マザーボード)上に実装する技術的な枠組みを指す。BIOSやOSとは独立して動作し、この点ではPC本体の中に、運用管理のための小さなPC(インテリジェントな専用モジュール)が入っていると見ることもできる。インテルが開発し、最初に発表したのは2006年4月のこと。その後、機能拡張を重ね、08年9月には第3世代のvProをリリースした。
実体は複数の要素技術の集合体だ。インテルが提供するチップならびに技術要件をセットとして採用したものが「vPro搭載PC」と呼ばれる。
最新のvProを細かく見ると、デスクトップ向けの「vPro テクノロジー インテル Core 2 プロセッサー」と、ノート向けの「vPro テクノロジー インテル Centrino」シリーズがある。どちらも3つのチップと、3つの要素技術により構成する(図)。

ハードウェア要件は、例えばデスクトップ向けならプロセサにCore 2 Duo、チップセットにQ45 Express、LANコントローラに82567LMギガビット・ネットワーク・コネクションというインテル純正品の採用が条件となる。
要素技術には、クライアント管理支援技術の「Intel Active Management Technology(Intel AMT)」、仮想化支援技術の「Intel Virtualization Technology(Intel VT)」、セキュリティ技術の「Intel Trusted eXecution Technology(Intel TXT)」の3つがある。これらの一部はチップの中にロジックとして組み込まれているほか、マザーボード上のフラッシュメモリーに内蔵するなどして実装する。
リモート管理という観点でvProの肝となるのがIntel AMTである。ネットワーク経由での電源オン・オフや、PC内部のシステム構成情報の取得、BIOS画面のリモート表示といった、PC管理に重要な役割を果たす機能を提供するものだ。
例えばこれまでも、ネットワーク越しにPCの電源を投入する手法としてWOL(Wake On LAN)があった。ただし、ネットワーク構成においてセグメントが異なるとマジックパケットと呼ぶ起動信号がうまく到達しないという問題が起こりがちだった。これに対し、PC本体の電源投入状況に関係なく、常にファームウェアレベルで通信する仕組みを採るvProは確実に電源を制御できる。つまりPCが眠っていても、vProは常に目を覚まして会話できる状態になっている。これを実現しているのがAMTである。
ペンタブレット型も登場
選択肢広がるvPro搭載PC
PCメーカー各社はすでに多数のvPro搭載PCを市場に投入している(前ページの表1)。当初はデスクトップ機が中心だったが、今ではノートPCのバリエーションも広がっている。目新しいところでは、ペンタブレット型のPCの登場が挙げられる。工場や病院、学校などで利用者が持ち歩きながら操作することを想定したものだ。
初期のころ、vPro搭載パソコンは、同程度のスペックを備えた一般のPCに比べて数万円高くなることが多く、割高感を感じるユーザーの声もあった。今も価格差はあるが、その差は数千円〜1万5000円程度と縮まってきており、価格面でのハンデはなくなってきている。またハイエンドモデルに限らず、普及価格帯のエントリーモデルにもvPro搭載製品が増えつつある。
価格がこなれてきたことと、選択肢が増えてきたことは、ユーザーにとって朗報だろう。
運用管理ソフトがあって
はじめて機能を生かせる
クライアント管理を効率化する仕組みを備えたvProだが、PCハードだけではその潜在能力を生かせない。vProが備える機能を活用する運用管理ソフト、あるいは運用管理サービスが不可欠だ。PC管理の負荷を減らしたいというユーザーニーズの高まりに呼応して、ここ数年で対応製品が充実してきている(表2)。
vPro対応をうたう製品の多くは、古くからPC運用管理ソフト/サービスとして市場に投入されているものが中心だ。ここ数年のメジャーバージョンアップの際に、vPro対応機能を追加する形で発展してきている。いずれも多様な運用管理機能を内包しているが、ここではvPro搭載PCの管理に焦点を絞ってまとめた。
ほぼすべてのソフト/サービスが備えるのがIntel AMTを使ったリモート電源管理機能である。例えば「夜間、社内の全PCを対象にOSのパッチを一斉に当てる際に、電源が切られた状態のPCにも適用したいという運用担当者のニーズは根強い」(日立製作所)。こうした問題を解決するものとして、多くの製品がリモート電源管理に対応済みだ。
表2にあるように、管理対象のPCのBIOSを遠隔操作できるかどうか、他のPCのディスクをネットワーク越しにマウントできるかどうかといった、細かい機能において各製品の特徴が出る。自社がどのような管理機能を必要としているかに照らして導入する製品を検討するのが基本となる。
仮想化技術を応用した「Intel VT」の機能を生かす製品も出始めた。先陣を切ったのは東芝で、vProをベースとする独自の技術「vRAS」を開発した。Xenベースの仮想マシン環境が実体で、仮想アプリケーションサーバーとクライアント利用環境を1台のPC上で同時稼働する。仮想サーバーからクライアントの利用環境を制御する構成となり、ユーザーのPC操作ログや文書ファイルなどは仮想サーバーに保存される。障害時に管理者は問題を切り分けて対応しやすくなる一方、セキュリティの確保にもつながる。この機能を実装した運用管理ツール「PC運用上手-SS」は、同社のvPro搭載PCにバンドルして販売している。
さらにvPro搭載PCを大規模導入した企業向けに「Virtual Group Computing System」の提供も予定している。PCのシステム領域をWindows仮想マシンに、ユーザーデータや環境設定部分をLinux仮想マシンに完全に分離。PCユーザーはActive Directoryによる認証を経てLinux仮想マシン上のファイルサーバー(Samba)にあるデータにアクセスする仕組みだ。「シンクライアントと同等のセキュリティを確保できる」(東芝)ことを前面に打ち出す。Intel VT利用の動きは、他にシトリックスやVMWareが09年2月に相次いで発表している。
さらなる発展にはユーザーとの切磋琢磨が必要
vProに関連したベンダーの協業の動きも活発だ。08年10月には、インテルとマイクロソフト、ウチダスペクトラムが「マネージド ビジネス PC イニシアチブ」を設立。vProクライアントの導入企業に対して、マイクロソフトのvPro対応運用管理ツールを中心にしたソリューション導入やコンサルティングを手がけていくという。また同月にはインテルとNECフィールディングも協業を発表した。技術面やマーケティング面で協力し、vProの普及を促す。
PC向けプロセサで圧倒的なシェアを持つインテルが打ち出しただけに、vProは運用管理の領域でのデファクトスタンダードに発展する可能性もあるだろう。ただし、現状ではvProが備える機能をフルに生かし切る管理ツールはまだ少ない。パイオニアは実際に運用する中で、インテルなどのベンダーと積極的に意見交換し、課題や要望を伝えているという。このようにユーザーが経験で得た知見をぶつけていくことが、最終的に自身の運用負荷の軽減に結び付くことになるだろう。
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