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Part2 ユーザー企業2社がCRMソフトの移行に踏み切った理由
[IHI]
シーベルからSugerCRMに移行
総合重機メーカーのIHIは2008年 4月、主力事業の1つである原動機プラント事業部で、新CRMシステムを稼働させた。同事業部が扱うガスタービンの保守サービスを効率化するとともに、顧客満足度を高めるのが目的だ。
採用したのは、オープンソースのCRMソフト「SugarCRM」(図2-1)。すべての顧客企業ごとに、納入した装置の種類や構成情報、発生した不適合(不具合)情報、修理履歴、操作マニュアルなどを、これに蓄積する。一部の顧客に関しては、ガスタービンの温度変化など動作状況に関する情報も蓄積。定期メンテナンスの際、実施する作業内容の確認などに役立てている。

実は、IHIがCRMシステムを導入したのは、これが初めてではない。1998年に、米シーベル・システムズ(現在は米オラクル)製のCRMシステムを導入。事業部ごとに、別々に管理していた顧客情報データの一元化を進めてきた。しかし2006年、その作業をいったん休止している。情報システム部新事業推進グループの鈴木和彦主査は、その理由を「現実問題として、全事業部の顧客情報を、1つのデータベースで管理するのが難しかった」と語る。
IHIの製品はジェットエンジンやボイラーなど幅広い。製品が異なれば、メンテナンスに必要な情報の種類やきめ細かさにも違いが出てくる。「利用を拡大するにつれて、事業部によってCRMシステムに求める情報が違うことが明らかになっていった」(鈴木氏)。
そこでIHIは「全社共通の顧客情報管理」から「事業部ごとにかゆい所に手が届く顧客管理」へと、CRMシステムの大幅な見直しを決断。「2006年当時にあった製品の中では、比較的小規模からスタートしやすい」(鈴木氏)という理由で、SugarCRMを導入した。
新システムでは、かゆい所に手が届くような工夫を凝らしている。不適合情報を管理するシステムと、装置の動作状況を監視する遠隔監視システムから、自動で最新情報を収集するようにしたのが、一例だ。「担当者の手を煩わせることなく、必要な情報をそろえることで、便利に感じてもらえる。CRMシステムの利用も促進できる」(鈴木氏)。
IHIは今後もCRMシステムの使い勝手を向上させるために機能の強化を続ける。「当社のような会社にとって、保守やサービスは製品の研究開発や販売と並ぶ、中核業務の一つ。その意味でCRMシステムは重要だ。今年は画面に表示する項目の種類や内容、配置を見直すなど、システムの利便性をさらに高めたい」と、鈴木氏はいう。
[ディップ]
SaaS型のCRMからオンプレミス型へ
次に求人情報サイト、「バイトルドットコム」を運営する人材関連会社であるディップの取り組みを紹介しよう。
1997年設立の同社は、2002年の売上高3億600万円から、今期は117億円(見通し)へと急成長している、有力ベンチャーの1社である。その同社がCRMを導入したのは、事業規模が拡大するにつれ、営業先の重複や顧客管理の不備が生じたからだ。そこで2005年11月、Salesforce CRMの全社導入を決定。顧客情報の一元化はもちろん、テレ(電話)セールスによるアポイント獲得から訪問営業にシームレスに情報をつなぐといった営業体制を確立した。
これはこれで問題なかったのだが、ディップはここ数年も順調に成長し、年間100人以上の営業担当者を新規採用。加えて2008年上期以降は人材採用に慎重な顧客企業が増加。最大手のリクルートやエンジャパンといった他社との競争も厳しさを増している。
そのためSaaS型CRMの課題が浮上してきた。「(数量割引になるとはいえ)年100人規模でライセンスを増やすことに伴う、利用料金の負担増」(笹幸一情報システム部次長)である。1人月額1万円とすると、増加分だけで年1200万円になる計算だ。笹氏は「長期的には自社保有の形態でシステムを運用する方が、TCO(総所有コスト)を抑えやすい」と判断。CRMの強化と併せてオンプレミス型に切り替えることにした。
選定時には10以上の製品を調べ、6〜7社にRFP(提案要求)を出した。その結果、選んだのはワークスアプリケーションズの「COMPANY CRM for Sales」。CRMでは最後発に近い製品だが、「機能的には、どの製品も決定的な差はなかった。決め手は、導入後も定額保守サービス料金の範囲内で性能向上などの支援を受けられる点」(笹次長)。TCOが切り替えの大きな理由だけに、選定でもTCOを重視したわけだ。
新システムの本格稼働は2008年11月。数10万件におよぶ訪問先候補リストや訪問履歴などの情報を格納している(図2-2)。営業担当者とテレセールス担当者は、同時期に導入したワークスアプリ子会社のグループウェア「ArielAirOne」のポータル画面から、COMPANY CRMを操作している。

システムが稼働してから間もないため、現時点ではまだ典型的なSFAシステムの使い方にとどまる。今後は営業とテレセールスの担当者が情報を共有して、共同で営業活動を進める業務の流れを全社に徹底させる。
さらに、蓄積した受注・失注の経緯を分析して、候補リストの精度を高めたり、トップセールスの活動パターンや提案内容を、新人営業担当者が参考にできるようにしたりする計画だ。「CRMシステムは動き出してからが本番。営業担当者が手放せないシステムになるよう、機能を強化し情報を充実させていく」。笹次長は力強く語る。
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