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Part3 CRMの第一歩は、顧客の属性分析と業務プロセスの見える化から
顧客の嗜好や購買パターンなどを見極め、引き合いから受注、アフターサービスに至る一連の業務プロセスを正しく把握する。そう、顧客属性の分類と業務プロセスの見える化が、CRMの最初のステップだ。ERPパッケージやSCM(サプライチェーンマネジメント)システムを導入する際、真っ先に業務プロセスを洗い出すのと同じである。これを疎かにしたら、どれだけ高機能なCRMシステムを導入しても、投資に見合う効果を得ることは難しい。
ところが現実には、このステップをおざなりにしたまま、システムを先行して稼働・利用するケースが少なくない。CRMの目的を定めない例も多い。定めたとしても「売り上げをXX%アップする」というレベル。結局は「顧客訪問件数を増やせ!」を合言葉に、場当たり的な営業攻勢を繰り返すことになる。訪問先名や営業担当者の活動履歴はどんどん蓄積されるが、それだけだ。
そうなってしまう原因はさておき、顧客属性の分類と業務プロセスの見える化を実施するのとしないのでは、結果として大きな差が出る。見える化をすれば、営業プロセスの非効率な面や気づかなかった顧客との関係が浮かび上がってくる。仮説を作り、検証するPDCAサイクルを回せるようになる。言葉だけのPDCAと、内容のあるPDCAの違いは、本誌読者なら自明だろう。
そこで以下では、ほとんどの企業に適用できる顧客属性の分類と、属性ごとの業務プロセスの特徴を紹介する。
基本的な4分類と目的別の重点エリア
意外に感じるかもしれないが、顧客属性の分類は、血液型のようにA型やB型といったザックリとしたところから始めるべきである。いきなり何種類もの要素を組み合わせて詳細に分類しようとしても、時間がかかったり、きれいに分類しきれないからだ。
図3-1に、そうしたシンプルな顧客属性の分類の一例を示した。縦軸に顧客の種類として「新規(見込み)」と「既存」、横軸に「ダイレクト」と「非ダイレクト」の2種類の販売チャネルを取っている。人材や費用を投じる優先順位を決定する際の参考になる。あらゆる業種業態に通用するわけではないが、このような図を作ることで、大雑把でも明確に顧客属性を分類することが肝要だ。その後で「A型のタイプ1」、「A型のタイプ2」といった具合に段階的に分類の粒度を細かくすることで、顧客との関係は次第に明らかになっていく。

次に4つの象限を説明する。
第1象限
営業担当者や店舗、インターネット経由で、商品やサービスを販売した顧客(既存顧客)が含まれるのが、右上の第1象限である。一般には、この象限の顧客が売り上げと利益の中核である。そこで顧客個々のニーズや事情に適した情報を定期的に配信したり、所有する商品や利用中のサービスに関連する新サービスを提案したりして、売り上げと利益の安定を図る。
当然だが、この象限の顧客を、売り上げ規模や自社へのロイヤリティによって、さらに分類することが必要だ。自社製品の購入頻度が高く、成長している顧客が、最も重要な顧客である。そうした顧客とそうでない顧客では、対応を分けることも考えられる。
第2象限
左上の第2象限は非ダイレクトチャネル、つまりパートナー経由で獲得した既存顧客だ。第1象限に比べると利益率が下がる傾向にあるが、売り上げと利益に貢献する点では、第1象限の顧客と同様だ。そのためパートナーを通じて囲い込みを狙う。
例えば、パートナーと共同で顧客向けのセミナーを開催する。ITのように顧客への技術支援が必要な商品を扱う企業なら、パートナー向けのテクニカルサポート組織を用意して、間接的に顧客支援体制を整える。
第3象限
左下の第3象限に位置するパートナー経由の新規顧客は、いったん受注を獲得したら、利益を生み出す第2象限の顧客に“昇格”する。ただ受注獲得に向けて販促キャンペーンを実施するにしても、ダイレクトチャネルより費用対効果を図りにくいケースが多く、人手をかけにくい。そのため、比較的安価に幅広い潜在顧客へのアプローチが可能な電子メールやダイレクトメールを使って、引き合いを呼び込むのが一般的だ。
第4象限
右下の第4象限、ダイレクトチャネルの新規顧客は、受注を獲得できればメジャーアカウントになる可能性を秘めた顧客群だ。顧客への訪問予約に始まるプロセスの進捗をSFAシステムで管理し、最終提案時にはトップセールスや役員を同行させて成約につなげる。
以上は極めて基本的な分類だが、ここからスタートして各エリアごとに実践的なアプローチに落とし込んでいく。第1象限の顧客への売り上げ拡大が難しい状況であれば、第2象限の顧客開拓を強化する。そのためにパートナーと協力して第2象限の顧客向けサービスを強化する。直販比率を高める目的でCRMに取り組むなら、第4象限の顧客向けのマーケティングを充実させる。
成否のカギを握るプロセスの見極め
顧客属性を分類したら、次に業務プロセスを可視化する。属性分類と並んで、これがCRMの成否のカギを握る。CRMを主導する部門やプロジェクトの体制作りに関わってくるので、顧客属性のような粗さは許されない。前述の第1象限と第4象限を例に説明する。
図3-2は、第1象限の顧客に対する業務プロセスを示している。上部はプロセス、左部は担当者(業務)、パーセンテージは各担当者の役割の重みを表す。業務の一部を外部委託している時は、左部に項目を追加する。
図から読み取れるように、既存顧客が対象のため、市場調査に代表されるマーケティングの必要性は低い(分かりやすくするために0%とした)。重要なのは、顧客のニーズを聞き取り、正式な商談につなげていく「案件醸成」である。これは営業と製品/サービスの担当者がタッグを組んで進める。このプロセスをサポートするCRMシステムには、商談内容や新サービスの情報を統合管理し、複数の部門間で安全に共有できる機能が求められる。
次に、ダイレクトチャネルの新規顧客(第4象限)の業務プロセスを示した図3-3を見てほしい。こちらは潜在顧客を探る市場調査や認知度を高めるキャンペーンなどが必須なので、「ターゲティング」や「案件発掘」に、マーケティング担当者が加わる。当然、キャンペーン管理など高度な分析機能を備えたCRMシステムが必要になる。
2つの図を見比べると、営業体制が異なることも理解頂けるだろう。CRMの対象が既存顧客なら、システムを主に使う営業と製品/サービス、新規顧客ならマーケティングと営業の担当者を中核メンバーにするほうがよい。
- 吉田 融正 氏
- 日本IBMを経て、CRM製品のベンダーである米Siebelの日本法人設立に関与。取締役営業本部長として、CRMの普及啓蒙活動を率いた。2002年1月、営業・マーケティング業務の改革支援を行うブリッジインターナショナルを設立。主にIT企業に対し営業改革をサポートする
Interview
システム構築の3〜4倍の時間と費用を人材の育成に費やす
石川 雅崇 氏アクセンチュア CRMグループ統括
マーケティング戦略担当
エグゼクティブ・パートナー
CRMの効果は、最前線にいる営業やマーケティングの人材育成に、きちんと時間と費用をかけたかどうかで差が出てくる。期待通りの成果を上げている企業の投資の内訳を調べると、システム構築より、オペレーションや意識の改革など人材を育てるのに投じる費用のほうが多い。CRMプロジェクトの総額の6割以上に及ぶケースも珍しくはない。
このことは、プロジェクト期間にも現われている。ある大手食品メーカーでは、システム構築期間が4.5カ月だったのに対し、人材の育成に費やした期間は12カ月。製薬企業の例では、システム構築が3カ月、人材教育は4倍の12カ月をかけて、CRMを現場に根付かせた。
セールスやマーケティング、サポートの各部門をバラバラにしたまま、プロジェクトを進めないことも大切である。各部門の担当者が共通にCRMに取り組む必要性を認識し、施策の内容を理解しないと、結局はCRMシステムがセールスなどそれぞれに特化した、ポイントソリューションになってしまうからだ。
各部門からメンバーを集めた経営直轄の組織を作ってプロジェクトを推進するのは、1つの手である。SCM(サプライチェーンマネジメント)では部門の壁を越えるために、販売や製造、物流などの部門を統括する「SCM本部」を設置し、全社横断プロジェクトに成功した企業が多い。CRMに取り組む場合もまったく同じである。 (談)
Interview
「科学的CRM」 だけでなく、「組織的CRM」の強化も
中本 雅也 氏べリングポイント
CRM Solutions
マネージング ディレクター 執行役員
情報システムを活用して、いかに効率よく引き合いから契約までのプロセスを回すか。あるいは、顧客の問い合わせに対して、どれだけ効率よく回答するか。そうした「科学的CRM」も必要だが、「組織的CRM」を強化することも同じくらい重要である。
組織的CRMとは簡単に言うと、「訪問すべき顧客を見極め、会うべき担当者に会う」といったプロセスを、営業やマーケティングが連携して進めること。本来CRMで目指すべき当たり前の姿なのだが、実は科学的CRMに力を入れている企業はあっても、組織的CRMに取り組んでいる企業はそれほど多くない。組織的CRMは必ずといってよいほど、これまでの営業のやり方にメスを入れなければならないからだ。しかし、売り上げを確保してくる営業は社内で特別視されている。そのため、他の部門が営業に協力して顧客を攻略しようにも、「意見しづらいから…」ということになってしまう。
こうした問題を解決するため、組織的CRMの推進役として情報分析の専門チームを発足させた企業がある。専門チームは3〜4人で構成し、統計解析手法を用いて顧客のセグメンテーションやマーケット調査を実施。顧客のセグメンテーションの推移まで把握する。そして、専門チームによる顧客のセグメンテーションやマーケット調査に基づいて研究開発の部門は商品やサービスを開発するといったルールを定めている。 (談)
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