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買収による相乗効果で不況の乗り切りを図る[日本オラクル(証券コード 4716)]

先の見えない不況の中、多くのIT企業が受注の大幅な落ち込みという厳しい状況に直面している。そんな中で買収による相乗効果を軸にした戦略により、厳しい時代を乗り切る構えの企業がある。日本オラクルだ。今回は、同社にスポットを当てる。

日本オラクルの事業ポートフォリオ

周知のことだが、日本オラクルは自社でR&D(研究開発)や、買収をしているわけではない。意思決定をするのは親会社の米オラクルであり、日本オラクルは国内におけソフトウェア製品のライセンス販売や、保守サポート、コンサルティングを手掛けている。

同社の事業ポートフォリオを見てみよう。08年5月期の売上高1141億円は、大きく4つのセグメントに分けられる。(1)データベース・ミドルウェア分野(以下、DB&M/W)でのライセンス売上407億円(売上比35.7%)、(2)ERP・CRM」(以下、Apps)が64.2億円(売上比5.6%)、(3)データベース・アプリケーションなどのソフトウェア更新・保守などのプロダクトサポート(以下、サポート)が502億円(売上比44%)、(4)コンサルティング・教育事業などが166億円(売上比14%)である。

4つのセグメントが今後どう展開していくのか。これを考えることが同社の企業価値を判断する上で欠かせない。そのヒントが図1に示す各セグメントの売上高前年比の推移だ。05年5月期〜08年5月期までのDB&M/W分野のライセンスの成長率は年平均+2.3%。一方、Apps分野は同+22.7%、サポート分野は+12.8%、コンサルティングその他は+10%である。ただしサポートやコンサルティングは、DB&M/W、Appsのライセンス販売に依存するので重要なのはDB&M/Wなどだ。

図1 日本オラクル  セグメント別売上前年比(単位:%)
図1 日本オラクル セグメント別売上前年比(単位:%)

「Innovation&Acquisition」戦略

前述のように、DB&M/Wライセンスの売上高成長率は+2.3%と低い伸びとなっている。とはいえIDC Japanの調査によれば、2005年〜2010年までの国内データベース市場の成長率は年平均+3.0%。日本オラクルがシェアの過半を占めることを考慮すれば、+2.3%の成長率は妥当といえるだろう。

だがデータベース分野が今後とも大きく伸長しないのであれば、日本オラクルの業績の伸びも限られる。そして、これは日本オラクルに限った話ではなく、米オラクルも似た状況だ。

そこでオラクル全体が推進している戦略が、「イノベーション&買収(Innovation & Acquisition)」である。米国オラクルは、48.6%というデータベース市場のシェア(2007年、ガートナー調べ)が生み出す潤沢な資金を生かし、過去5年間、積極的にM&Aを実施。これまでにPeople Soft, Siebal, BEA Systemsなど48社のソフト会社を買収してきた。

他社を買収→利用するデータベースをオラクルに変更(たとえばPeople Soft, SiebalはIBM社製のDB2を用いていたが、買収後オラクルに一本化)というシナジー(相乗効果)を生む戦略だ。他社を買収→つきあいのなかった企業との関係を構築→他のオラクル製品を販売という効果や、被買収企業を合理化すれば、買収前より高い利益を生む、といった効果もある。

ただし日本と米国ではIT市場の構造が異なるし、例えばPeople SoftやSiebalの存在感も日米で違う。米オラクルと同様、I&A戦略の果実を刈り取れるかどうか、これが日本オラクルの業績を占うカギになると考えられる。

日本オラクルの業績動向

では日本オラクルの業績を追ってみよう(図2、09年5月期以降は予想)。景気悪化の影響もあり、今期以降はDB&M/W、Appsともに大幅な伸長を見込むのは楽観的に過ぎるだろう。ただし米国オラクルが買収したBEA Systemsの日本法人、日本BEAシステムズを08年7月より連結子会社化。これにより今期の売上高は前年比5.2%増の1205億円(会社計画1210億円)を予想する。買収製品で売上高の落ち込みをある程度カバーできそうだ。

図2 日本オラクル  セグメント別売上高推移(単位:百万円)
図2 日本オラクル セグメント別売上高推移(単位:百万円)

一方、コストに関しては、2008年9月に竣工した新自社ビルへの移転コストなどが16億円程度、上積みされる。結果、人件費などコスト削減を進めているものの、経費(販管費+売上原価)は前年比+8.5%の818億円を予想。営業利益は前年比▲1.2%の382億円(会社計画392億円)と予想する。

2010年5月期については、売上高を横ばいと仮定すれば、経費について前述の一時移転費+16億円分の負担がなくなるので、営業利益は前年比+7.2%の410億円を予想。今期は減益の可能性が濃厚だが、今期をボトムに増益基調となる見込みだ。

日本オラクルの理論株価は?

日本オラクルの適正株価はどれくらいか?同社の特徴として、高い配当利回りがあげられる。米国オラクルで開発された製品を日本で販売・運用するビジネスであるため、設備投資の水準が低く、現金が積み上がりやすい傾向にある。そのため同社では一株当たり純利益(EPS)とほぼ同額の配当(今期会社配当計画173円、EPS会社計画181円)を実施。今後、配当がどのように増減するかが、同社の株価水準を決める要素になっていると考えられる。

配当金を株価で割った配当利回りを同社の過去1年間の平均配当利回り水準である4.5%、配当金額を173円と仮定すれば、理論株価は173円÷4.5%=3844円となる。3月24日終値での株価は3410円であり、株価は妥当な水準といえそうだ。

株価が上昇する可能性としては、来期、増収増益と仮定し、配当が173円→181円に増配されれば、理論株価は4022円。一方、さらに株価が下がる可能性としては、今期の配当が04年5月期の水準である140円まで減配されれば、3111円まで株価は下落する可能性は考えられよう。

図3 日本オラクル  経費、営業利益、営業利益率推移(単位:百万円、%)
図3 日本オラクル 経費、営業利益、営業利益率推移(単位:百万円、%)
図4 日本オラクル  株価・配当利回り推移(単位:円、%)
図4 日本オラクル 株価・配当利回り推移(単位:円、%)
長橋 賢吾
ITアナリスト

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