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レガシーと言うなかれ(vol.9)

編集部によると、本号の特集は「プラットフォーム」だという。そこで今回はプラットフォームに関するエピソードを書いておこう。

「システム費用を30%下げよ」─。経営トップからのミッションを受けて、筆者が情報システム部門の責任者になったのは、2001年のことである。その時、何からどう手をつけるかというシナリオを全く持っていなかった。それほど唐突で異例な人事だった。

それまで利用部門にいた筆者にすれば、情報システム部門という組織の表面的なことは分かるが、深くは知りえない。実態を把握しないことには、改革の絵を描けないので、異動して3日間はシステム部門のスタッフが日々、何をやっているかをひたすら観察した。その後、保有しているIT資産を見て回った。重装備された自社施設の中でメインフレームを中心とするコンピュータと周辺装置が動いており、別のエリアには分散化されたサーバー群が無機質な灯りを点滅させていた。

費用を大幅に下げるためには構造を変えなければならない。大まかにコストを調べると、メインフレームとクライアントPC関連が圧倒的な割合を占めていた。まずはこの2つから手をつけなければならないことは、明らかである。

結論を言えば、現役として稼働していたメインフレームを捨て、全面再構築によりオープンシステムに移行することを決めた。併せて付加価値をもたらしていないインハウス業務をアウトソースすることを決め、実施した。

メインフレームを捨てた理由

時々、「どのようにメインフレームを捨てることを決めたのか」と聞かれるが、実に簡単な理屈である。

建設業では、工事現場が日本、海外のあちこちに散在する。これを考えたとき、ネットワークをベースにしたオープンシステム以外は考えられない。一方でメインフレームに依存しなければならない、いわゆるミッションクリティカルな業務はほとんどない。だからメインフレームを止めたのである。

とはいえ移行のリスクも、情報システム部門の抵抗もあったことは事実である。サイズを落としてでも使い続けたいという意見も強かったので、「両建てでコスト削減が出来る方法があるなら認める」と宣言した。結局、具体的な提案は出てこず、オープンシステムによる再構築に取り組むことになった。

話を戻すと、グランドデザインに始まり、全社のリソースを管理する仕組みから新規再構築に着手。メインフレーム上にあった1万2000本のプログラムを整理し、2004年の年末までには再構築がすべて完了した。オープンシステムのサーバーはデータセンターに移管し、本社のコンピュータ室にはメインフレームが残った。

その搬出を前にした2005年1月、永年お世話になったメインフレームの供養をしようという話になった。神事に長けた社員が手際よく手配をし、パートナー企業も含め関係者100人ほどが集まった中、厳かに清祓式を執り行った。

その時から4年が経った今年、大成建設では仮想化技術を生かしてサーバー統合を実施した。2005年以前に導入したサーバーやストレージが更新期を迎えていたからだ。技術が進化する限り、我々はこうした世代交代を繰り返していく必要がある。

脱メインフレームが本筋ではない

このように筆者は、脱メインフレームを主導した経験を持っている。だが、その筆者から見ても、違和感のある言葉遣いがある。メインフレームで構築された情報システムを、IT業界の人たちが“レガシーシステム”と呼ぶことだ。レガシーとは日本語では、「遺産」、「遺物」である。1960年代に企業に導入されて以来、企業の情報化を支えてきたメインフレームを、過去の遺物=化石呼ばわりするのは問題だと感じる。

少なくとも企業でメインフレームの環境を守ってきたシステム部門の人たちは、そんな言い方はしない。どんなものでも古くなるのは自然の摂理である。それが進化というものだ。今の最先端技術やアーキテクチャも、やがて陳腐化していく。大切なのは、レガシーと称して古いものを捨てることではなく、最適化の現実やメリットを冷静に判断するすることだ。サーバールームで無機質に点滅するコンピュータ群。その裏側には血の通った人たちの活動や思いがあることを、忘れてはならない。

木内 里美
大成ロテック監査役。1969年に大成建設に入社。土木設計部門で港湾などの設計に携わった後、2001年に情報企画部長に就任。以来、大成建設の情報化を率いてきた。講演や行政機関の委員を多数こなすなど、CIOとして情報発信・啓蒙活動に取り組む

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