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【総論】プラットフォーム革新の最新事情 - 進化するITプラットフォーム Part2

サーバーからストレージ、ネットワークまで

サーバー、ストレージ、ネットワークまで、企業情報システムを支えるITプラットフォームの進化が止まらない。PART2では、「統合と拡張」をキーワードに機能強化が進む、プラットフォームの最新動向をまとめる。 (編集部)

全体動向
「統合と拡張」に向け新製品が相次ぐ

ITプラットフォームを構成するサーバーとストレージ、ネットワークが、ある方向に向かって一斉に進化している。その方向とは「統合と拡張」だ。

進化を支えるのは、ITプラットフォームのあらゆる領域に浸透しつつある「仮想化技術」。企業内に散在するサーバーやストレージ、ネットワーク機器を適切な形で統合可能にし、拡張性も担保する。それによってシステム資源の使用効率や可用性を高め、IT投資コスト削減を可能にする─そんなアプローチである。

行きつく先には、プラットフォームの構成を特段意識することなく、必要な時に必要なだけの資源を調達できる「インターナルクラウド」、あるいは「クラウドコンピューティング」を見据えている(図2-1)。

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日本におけるITインフラ技術のハイプ・サイクル
図2-1 日本におけるITインフラ技術のハイプ・サイクル:2009年(出典:ガートナー ジャパン 2009年3月19日)

まずサーバー。2009年3月から4月にかけて、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード(HP)、デルという外資系大手、日立製作所、富士通、NECの国産大手などが、相次ぎブレードサーバーの新製品を発表した。インテル製の最新プロセサ「Xeon5500シリーズ」を採用し、搭載可能なメモリー容量を増やしたなど性能の高さが共通点。だが、それ以上に「仮想化によるシステム統合、結果としてのITコストの削減」が共通のうたい文句だ。

実際、それが現実的かどうかはさておき、インテルは「2005年に導入したシングルコアXeonサーバー184台を、仮想化技術によりXeon 5500番台搭載サーバー21台に集約できる。電力や冷却コスト、ソフトのライセンス費用などの削減により、8カ月で投資を回収できる」と強調する。

ストレージシステムも、新製品が相次ぐ分野である。システム設計時の容量設計をほぼ不要にする「シンプロビジョニング」という機能を搭載した製品や圧縮・重複排除により実効容量を高められる製品、多数のサーバーから共有でき、システム全体の効率性や拡張性を高められる大規模製品などだ。

ネットワーク機器も同様。ファイアウオールや侵入検知、ルーターといった機能を1台の機器に搭載し、必要に応じてそれらの機能の一部、あるいは組み合わせを提供する製品や、複数の機器を束ねて冗長性を高める製品などが登場している。F5ネットワークスジャパンが4月に発表したネットワーク機器「BIG-IP 8900」を例にすると、負荷分散、Web高速化、セキュリティという3機能を1台の機器上で稼働できる。1台で複数の通信経路を構成し、個別にポリシーを設定する機能もある。個別の機器を用意するのに比べると、ネットワーク構成の柔軟性や耐障害性、管理性の向上、あるいは設置スペースと電力消費の低減に有効なのは自明だろう。

背景
高まるITコスト抑制ニーズ
先進ユーザーは成果を手に

ベンダー各社が「統合と拡張」という同じ方向にプラットフォームの機能を強化し始めた背景には、いくつかの要因がある。

第1が経済環境の変化だ。2008年秋以降、景況感が一気に低下し、ITコスト削減に対するユーザー企業の要望が強まっている。仮想化技術を駆使してプラットフォームを統合できれば、資源の使用効率を高められる。機器設置スペースの縮小や電力コストの低減も可能だ。それによりITコストの7割を占めると言われる運用コストを圧縮し、新システムなど戦略的な分野への投資を増やしたいという企業の思いは強い。

もう1つは、複雑化したシステムである。サーバーやストレージだけでなく、それらを接続するネットワーク機器も分散するようになり、システムを安定稼働させる難易度が高まった。サーバーを1台増設することを考えても、ストレージシステムへの接続や、冗長構成にした複数のスイッチへの接続など、多くの設定が必要だ。

仮に設定を誤れば、一部の機器の動作不良が原因で、システム全体の障害に発展する可能性がある。経済産業省の「高度情報化社会における情報システム・ソフトウェアの信頼性及びセキュリティに関する研究会」の報告書によると、システム障害の70%が運用における問題だという。

ユーザー企業側の要請とベンダー各社の動きが同調したのは、結果論かもしれない。だがサーバーとストレージ、ネットワークが進化の方向を1つにしていることが、ユーザー企業にとってメリットをもたらすことに違いはない。そうした点を見越して、いち早くプラットフォームの改革に乗り出した企業の代表例が、Part1で紹介した大和証券である。

本誌2009年4月号で紹介した富士フイルムも、サーバーやストレージを含む、プラットフォーム全体の大掛かりな改革プロジェクトを推進中だ。会計や販売など基幹業務アプリケーションのサーバー約440台を、2008年6月から段階的に4台のブレードサーバーに統合。プロセサの処理能力や、メモリーやディスクの容量を仮想化して、各種アプリケーションの要求性能や処理量に応じて配分できるようにした。その結果、「従来は20%程度だったプロセサとメモリーの使用率が80%に高まった」(富士フイルムコンピューターシステム・ システム事業部ITインフラ部の柴田英樹部長)という。

技術動向(1) サーバー
新Xeonプロセサを搭載
仮想化の性能劣化を防止

サーバー製品の動向を見る上で欠かせないのが、インテルが2009年4月に発表したクアッド(4)コアのマイクロプロセサ、Xeon5500シリーズだ(詳細はPart3)。性能向上や省電力化など強化ポイントは多いが、特に注目されるのは仮想化時の性能劣化(オーバーヘッド)を防ぐ機能である。

サーバー統合の際、集約率を高める目的で仮想化技術を使う企業は多い。だが仮想化には、それに伴うオーバーヘッドが発生するという課題がある。サーバーの物理メモリーと、仮想マシンに割り当てる仮想メモリーとの間で、アドレス変換の処理が頻繁に発生するのが原因の1つだ。

これを解消するため、Xeon5500シリーズでは、アドレス変換をハードウェアレベルで高速処理する新しいアーキテクチャを採用。さらに新アーキテクチャによってメモリーアクセスの遅延も解消し、仮想化環境でも高いI/O性能を確保できるようにした。

コンピュータメーカー各社が一斉にブレードサーバーの新製品を投入したのは、Xeon5500シリーズの発表を受けてのことである。ブレードサーバーは一般に、演算処理に使うプロセサとメモリーを載せた薄型のサーバー(=サーバーブレード)を、専用のきょう体に多数搭載する(図2-2)。きょう体側には電源ユニットやファン、「バックプレーン」と呼ぶ通信基盤があり、すべてのブレードがそれらを共有する。個々のブレードは電源やファンを持たないので、タワー型やラック型のサーバーに比べて省スペース化の効果を大きくできる。

ブレードサーバーの概要
図2-2 ブレードサーバーの概要(写真は日本IBMのブレードサーバー「BladeCenter」)

こうした構造上の特徴もあって、ブレードサーバーは従来、サーバーの集約率をどれだけ高められるかが大きな焦点だった。しかし、最新の製品は違う。集約率が高いことはもはや当たり前で、いかに拡張性を確保できるかが大きな要素になっていく。

中でもユニークな存在になりそうなのが、米シスコシステムズが発表した「Unified Computing System(UCS)」だ。良好な関係を保ってきたHPやIBMなどハードメーカーとの競合が話題だが、UCSにはアーキテクチャの面で特徴がある。一般的なブレードサーバーと違い、バックプレーンを備えていないことである。

代わりにUCSはブレードの通信基盤として、専用スイッチ「UCS 6100 シリーズ ファブリックインターコネクト」を使う。そのためUCSは、多数のサーバーの統合運用を容易にするNexusシリーズのメリットを引き継いで、最大320台のブレードを1つのシステムとして運用できる。実際のシステム環境で、UCSのアーキテクチャがどの程度の効果を発揮するのか現時点では明らかではないが、注目しておくべき製品であることは間違いないだろう。

一方で、ブレードサーバーの範疇を超え、高可用性をうたった製品も増えている。米国で9年、日本でも7年の歴史を持つイージェネラの「BladeFrame」、日立製作所の「BladeSymphony」などだ(詳細はPart4)。

技術動向(2) ストレージ
過剰投資や無駄を抑制
ディスク容量を容易に拡張

ストレージは稼働後の構成変更が難しい。このため今は不要でも、将来を見越して大容量のストレージを用意せざるを得ず、初期投資が大きくなりがち─。こうしたストレージに付きまとう課題を解決する機能を備えているのが、最近のストレージ製品だ。

その機能の1つが前述のシンプロビジョニング。これはストレージが搭載している物理ディスクの容量が少なくても、多くの容量があるように見せかける仮想化技術の一種。格納するデータ量が増えてきたら物理ディスクを追加するといった増設方法を可能にする。EMCジャパンや日立製作所、日本HPといった大手だけでなく、準大手・中堅の専業ベンダーもシンプロビジョニング機能を搭載した製品を販売している。

一方、ディスク上に存在する複数の同一内容のファイルを1つだけにする「重複排除」と呼ばれる機能や、ファイルを圧縮するなどして、実質的なストレージ容量を増やす機能を持つ製品も、ここへ来て急増している。日本HPの「HP StorageWorks」やデルの「Dell NX4」などがその一例だ。基幹系には適さないが、ファイルサーバーやバックアップ用途には好適だろう。

「(企業内の)クラウドコンピューティングを目指す」と銘打った製品も登場した。EMCジャパンが2009年4月に発表した「Symmetrix V-Max」がそれで、シンプロビジョニング機能はもとより、最大2ペタバイトに及ぶ大容量のディスクドライブを多数のサーバーと動的に接続するための、「V-MAXエンジン」と呼ばれる専用プロセサを搭載。「柔軟性と拡張性を兼ね備えている」(同社)という。実際、サーバーに対する接続設定を1回済ませておけば、例えばV-Maxを使うサーバーを追加する時、そのサーバーと既存サーバーが「グループ」であることをV-Maxに認識させればよい。機器ごとに設定しなければならなかった従来機に比べて、追加に要する工数を10分の1にできるという(詳細はPart6)。

技術動向(3) ネットワーク
仮想化により拡張性と可用性を向上

サーバーやストレージの統合が進むほど、ネットワークの重要度は高まる。インターネットからのアクセスをサーバーに振り分ける、LAN経由で集まるサーバーのリクエストをストレージに転送する、といった処理はほぼすべて、ネットワークが担っているからである。当然、増えるトラフィックに合わせてネットワークを拡張し、システムの安定稼働を維持する必要もある。

そのためにネットワーク機器の領域では、拡張性を高める仮想化技術が以前から使われている。一例が「ポートトランキング」と呼ばれる技術だ。複数の通信回線を仮想化して、論理的に大容量の帯域を持つ1本の回線として運用できる。いずれかの回線が切断しても別の回線で通信を維持するので、拡張性と同時に可用性も確保できる。シスコの「Catalyst」やアライドテレシスの「CentreCOM」など大中規模向けスイッチの多くが標準で備える。これらは通信回線だけでなく、数台のスイッチ装置を仮想化して、1台の大容量スイッチとして運用できる機能も実装している。

これとは反対に、仮想化で増やした容量を論理的に分割する技術も、ネットワーク機器では一般的だ。分かりやすい例を挙げるなら、ネットワーク専業ベンダー、シーゴシステムズ・ジャパンの通信制御装置「VPシリーズ」がある。VPシリーズは仮想的に40ギガビット/秒のI/Oをサーバーに設定したうえで、その中身を10ギガビット/秒のイーサネットや4ギガビット/秒のファイバチャネルに論理分割できる(詳細はPart7)。

以上見てきた、「統合と拡張」を可能にする最新のITプラットフォームを使いこなし、ITプラットフォームのコストを低減したり、拡張性を高めるのは、決して簡単ではない。ベンダー各社のうたい文句通りに機器が動作するかどうかはもちろん、様々な製品をどう使い分けるかという「組み合わせ問題」があるからだ。Part1の大和証券の取り組みにあるように、「ユーザー自らが労力を使って調査検証し、時には実験台になる」ことが必要かも知れない。

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