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【ストレージ編】仮想化でストレージの投資を最適化 - 進化するITプラットフォーム Part6

内部処理の工夫で性能や拡張性を向上

企業が取り扱うデータ量の爆発的増加に伴い、ストレージの機能向上に対する要請は厳しくなっている。こうした状況を受けて、リソースの効率活用や高速処理、利便性向上などをうたうストレージ製品が充実してきた。 (編集部)

日々のトランザクションデータはもちろん、社員や関係者が生み出す大量の文書データや電子メールなど、企業が取り扱うデータは増加の一途だ。2008年に日本版SOX法が施行されて以降、消去すべきでないデータも増えているから、なおさらである。必然的にデータを蓄積するストレージへのニーズは大きくなる。

一方でストレージへの投資を必要に応じて増やすわけにはいかないのも確か。そうした中で、ストレージベンダー各社は、「投資コストや運用コストを削減できる」と銘打ったストレージ製品を相次ぎ投入している。それは一体、どんなものなのか。Part6ではそこに焦点を当てる。大別すると、(1)仮想化技術を活用してストレージの利用効率や実効容量を高めるもの、(2)SSD(半導体メモリーディスク)やVTL(仮想テープライブラリ)を駆使して、データの性質に応じたストレージ階層を形成するもの、に分けられる。

ストレージの仮想化(1)
ディスク容量の無駄を解消
容量追加も容易に

当たり前だが、サーバーと同じくストレージの有効活用に対するユーザー企業のニーズは高い。例えば新システムの設計時には、将来必要となるデータ量を計画し、容量不足に陥らないようにストレージを用意する必要があった。いったん割り当てた論理ボリューム(OSやアプリケーションから見えるディスク容量)や、論理ボリュームが存在するディスクドライブを、あとで変更することが難しいからである。

結果として、専門家の間では「企業が保有するストレージ容量のうち、実際に使われているのは40%程度」というのが通説になっているほどだ。こういった容量設計の難しさや、使われない記憶領域が多い問題を解消する技術として、ここ数年、普及しつつあるのが、「シンプロビジョニング」と呼ばれる仮想化技術である。

文字通り、「Thin(薄い、少ない)」な「Provisioning(配置準備=容量設計)」を可能にするもの。実際には、ボリュームの容量を仮想化することで、少ない物理ディスク容量を大きく見せる技術である。例えば物理的には総容量1テラバイト(TB)のディスクしか搭載していなくても、OSやアプリケーションからは5テラバイトのストレージに見える(図6-1)。いうまでもなく実際にデータを保存できる容量は1TBしかないが、不足したら必要な分だけ物理ディスクを随時増やしていけばよい。国内外の主要ベンダーが、すでに製品に実装済みだ(表6-1)。

図6-1 シンプロビジョニングの仕組み
図シンプロビジョニングの仕組み
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図シンプロビジョニングの仕組み
表6-1 シンプロビジョニングに対応する主要ストレージ一覧

ストレージの仮想化(2)
複数のストレージを1つに見せる

ストレージの仮想化には、複数の外部ストレージをまとめて、1つの論理ボリュームとして構成する「ストレージ・デバイスの仮想化」もある。ベンダーや機種を問わず、社内に散在するストレージを一元的に管理・運用できる。サーバーとのオンラインを維持したままストレージ側で、データ移行やレプリケーションを行うことも可能だ。

この機能もすでに各社が提供中だが、実現方式はベンダーによって異なる。例えば日立の「Hitachi Universal Storage Platform V」では、内蔵するアレイコントローラにこの機能を持たせている。一方、富士通はファイバチャネルのスイッチである「ETERNUS VS900」、日本IBMはアプライアンス製品「IBM System Storage SVC」で、それぞれ実現する。EMCジャパンの「Invista」は、富士通と同じタイプだ。

こうした仮想化により、アクセスを高速化したり、安全性を高めるためのRAID構成の自由度も高まる。例えば日本HPの「HP StorageWorks EVA」では、論理ボリュームの必要容量とRAID構成(0/1/5)を設定するだけ。EVAのコントローラが物理ディスクを自動的に割り当てる。

ストレージの階層化(1)
SSDとディスクを組み合わせる

ストレージ周りの技術進化は、仮想化だけではない。サーバーやネットワークの処理性能が高まり、処理するデータ量が多くなれば、必然的に処理性能の向上が求められる。

そこでここ数年、広がりつつあるのが「ストレージの階層化」である。階層の最上位に「SSD(半導体メモリーを使ったドライブ)」を置き、ディスクドライブと組み合わせて使うアプローチだ。SSDはHDDに比べ高速であり、消費電力も抑えられる。

「HP StorageWorks EVA」ではディスクアレイの一要素としてSSDを用意。SSDをtier0、ファイバチャネルのディスクをTier1、FATA(SATA)ディスクをtier2と階層化し、使い分けることを提唱する。「SSDはOSのブート部分やRDBSのメタデータ域に使うのが適する」(同社)。

日立やEMC、日本IBMなど他社も同様に、ハイエンド機の構成要素の一部として、SSDを提供している。「SSDによる高速化は、ストレージのストライピングによる高速化よりもシンプル。消費電力も圧倒的に低くなる」(EMCジャパン)。自社ではSSDを提供していないストレージ専業大手のネットアップは、デバイスの仮想化を使ってSSD「RamSanシリーズ」(システムクリエイトが販売)を使えるようにしている。

一方、階層化したストレージの下位層、つまりファイル管理用やバックアップ用途のストレージ(あるいは中小規模のストレージ)でも、高速化やコスト低減を指向した技術革新が続いている。1つが「重複排除」。文字通り重複しているファイルやデータを排除し、代わりに元データを指すポインタに置き換える技術だ。データ量を20分の1程度にできる(50分の1というベンダーもある)ため、効果は大きい。

同一のファイルだけを排除する手法と、ファイルやデータの一部まで立ち入って排除する手法がある。データ圧縮も、重複排除の手法の一部といえる。実は以前からある技術だが、元データが消えるとすべてのデータが消えるといった問題があった。それが解消され、最近になって採用が広がっている。

バックアップ用途では、VTL(仮想テープライブラリ)製品が増加中だ。急激に価格が低下したディスクをテープ代わりに使い、バックアップの時間短縮を可能にする(オンライン中に書き込めば、事実上ゼロにできる)。必要に応じて、あとでテープに移す使い方だ。

主要ストレージベンダーが専用機をラインアップするほか、既存のストレージを使うソフト製品(バックボーン・ソフトウエアの「NetVault VTL」など)や、ファルコンストア・ジャパンのようなバックアップソリューション専業ベンダーの製品など、選択肢は多い。

ストレージの階層化(2)
FCディスクの拡張性と性能強化

もちろん階層化の中核層であるファイバチャネルディスクでも、技術進化が続く。その1つがEMCの「EMC Symmetrix V-Max」。容量を数100ペタバイト規模に拡張でき、また数10万台規模の仮想サーバー接続できるアーキテクチャが最大の特徴だ。中核は「V-Maxエンジン」と呼ぶコントローラで、最大32個のXeon5500シリーズプロセサと最大1024ギガバイトのメモリーを搭載できる。これがストレージの仮想化や階層化、サーバーとのインタフェースの仮想化を担い、ストレージ配置の柔軟性や動的再配置、オンデマンドの割り当てなどを可能にする。

2006年に日本に進出した大規模ストレージベンダー、3PARの「InServストレージサーバ」も注目株の1つ。特徴は、物理ディスクを256Mバイト単位に分割し(チャンクレットと呼ぶ)、チャンクレットを組み合わせて論理的ボリュームを形成することだ。チャンクレットは基本的に別個の物理ディスクに配置されるので、I/Oを並列処理できる。一連の処理を専用LSIで処理することで、さらなる高速化を図っている。

このほかファイバチャネルではなく、LANに接続するNAS型のストレージでは、アイシロン・システムズがユニークな製品を提供している。どちらかと言えばビデオ映像や音声データ、解析データなどの非構造データの蓄積に向く大規模ストレージ「Isilon IQ」だ。

ブレードサーバーに比べ地味な存在のストレージだが、実際には進化の著しい非常にホットな領域である。

Column
クラウド環境をにらんだストレージ選択の要件

菅 博
伊藤忠テクノソリューションズ
クロスファンクショングループ プロダクトマーケティング室 インフラソリューション推進部

今後のストレージシステムを考える時、プライベート(インターナル)のクラウド環境を意識するケースが多くなるだろう。ここでは、それをにらんだストレージの要件について解説する。選定のフェーズでは、ぜひこれらのポイントを軸に検討して欲しい。

(1) 可用性と性能

多数のサーバーから共有されるストレージに欠かせない要件が可用性である。可用性を高める工夫は施されているものの、例えば部品故障が発生した場合に、「止まらない」と「著しい性能劣化に陥らない」の2点が維持されるとは限らない。部品故障では停止しないが、一部の保守作業で停止を避けられない製品や、故障時に性能が半減してしまう製品がある。最初に、可用性と性能保証を、どこまで求めるかを決める必要がある。

(2) 柔軟性と操作性

クラウド環境では、ファイルサーバーやDBサーバー、クラスタリングされたサーバーなど、多様なサーバーが存在する。このような環境では常に何らかの変化に対応する必要があることを意識しなければならない。例えばサーバー数の増減は、ストレージ容量の不足・余剰と密接に関連する。サーバーのサービスレベルに応じて、使用するボリュームのそれ(速度、可用性)も変化させなければならない。

したがってストレージ内で容量割り当てが自在にできることや、ボリュームのサービスレベルを必要に応じてオンラインで変更できる機能を持つストレージが望ましい。その際、変化への対応は迅速であることが必須。つまりストレージの構成変更をサイト管理者自身が実行でき、簡単で一貫した操作性の管理ツールが必要となる。

(3) 汎用性と拡張性

クラウド環境では、必要な性能要件と容量を事前に見積もるのは困難。スモールスタートで、必要に応じて性能と容量の双方を追加できるストレージが望まれる。現実にはスタート時の容量(初期投資)と拡張性の関係に制約があるので、慎重に検討すべきだ。

様々な形態のサーバーに接続するための汎用性も求められる。具体的に言えば、SAN(もしくはiSCSI)と、NASプロトコルの双方のサポートが必要になる。マルチ・プロトコルをサポートし、かつ一貫した操作性を持つストレージを検討すべきだろう。

(4) 保全性

バックアップとリストアに関わる要件は、言うまでもなく、これまでとはレベルの異なる高さが求められる。サービスが原則無停止であり、かつ大容量が前提になるはずなので、バックアップ・イメージを瞬時にストレージきょう体内に作成する機能が必須になる。

以上、いくつかのポイントを指摘した。単なるシステム統合の要件とクラウド環境の要件の決定的な違いは、「柔軟性と拡張性」の重み付けにある。クラウドの方が圧倒的に不確定要素が多いのだ。この点で、小さく始めて変化に迅速に対応できるストレージが重要になるのは間違いない。

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