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【事例編】JTB、基幹系プラットフォームを刷新 - 進化するITプラットフォーム Part8
「それでは“ARES”コマンドを投入します。長年、事業を支えてくれてありがとう」。2009年4月8日、数十人の関係者が見守る中、40年間にわたってJTBの事業を支えてきたプラットフォームがシャットダウンされた。
ARESとは「オートマチックリスタート」の略。プラットフォームとはIBM9672-RA6と、トランザクション処理専用OS「TPF(Transaction Processing Facility)」である。JTBの日々の業務を支える基幹システム「TRIPS」のプラットフォームは、この時点でIBM System p5 595(OSはAIX V5.3)をメインとするオープン系に切り替わった。
旅館やホテルの客室予約システムとして開発されたTRIPS Iが稼働したのは1969年。プラットフォームはIBMシステム360×2台、OSはOS/MFTだった。だが高度経済成長下で、処理量や要求機能が急増する。74年にはTRIPS IIにバージョンアップ。ハードにはIBM360モデル158、OSにはトランザクション処理専用の「ACP(Airlines Control Program、現在のTCF)」を選んだ。モデル158は日本IBMの野洲工場製。障害時に対処しやすいという理由で採用したが、当時、ACPはモデル155用しかなく、「我々が一部を書き換えて158上で稼働させた。それ以来、ずっとACPと歩んできた」(JTB情報システム=JSSの佐藤正史社長)。
TRIPS IIではテレタイプ端末に代えてCRT端末を採用。全日本空輸、東亜国内航空(当時)、日本航空とシステム結合したのに加えて、エース、ルックなどの旅行商品も扱うようになり、総合的な旅行システムに成長した。「システム結合といっても、今のように標準プロトコルはない。異機種、異プロトコル接続を実現するために試行錯誤した」(JSSの永井雄二執行役員)。入力を効率化するページ式のパネル装置やJTBコードと呼ぶオリジナルの漢字コード、専用プリンタなどを、外部のベンダーと協力しながら次々に開発したのも、この頃である。
その後もTRIPSはプラットフォーム・アーキテクチャを変えずに、進化し続ける。80年には漢字による自動発券や国鉄(現JR)とのシステム結合を実現したTRIPS III、89年には旅行に関する情報検索・表示機能を備えたTRIPS IV、そして98年にはTRIPS Vへと移行する。Vの端末はキーボードこそやや特殊だが、CRT(後に液晶)を備えた普通のパソコンになった。インターネット経由の予約に対応したTRIPS VIの稼働は、2004年3月である。
こうした中で、TRIPSの運用は年々、複雑さを増していた。JSSの佐藤社長によると、「ACP(TPF)は、車で言えばF1。決められたコースを整備スタッフが見守って走らせると、すごい性能を発揮するが、公道はうまく走れない。現在のシステムは24時間稼働を要求されるが、ACPはバッチ処理が不得意。だからオンラインをACPでこなし、バッチをMVSで行って、それをACPに戻す、といった形で処理をしてきた」。
問題は運用負担だけではない。TRIPSを構築、運用、保守してきた人材がそのまま存在するならいいが、人は世代交代する。TRIPSを誰よりも熟知する人材が現役の間に、移行を果たしておく決断を下したのだ。
4月8日夕方に開かれた関係者だけの懇親会の席上、JTBのCIOである志賀典人常務はこうスピーチした。「私は73年に入社し、TRIPSを使って仕事を始めた。35年経った本日のシステム停止を振り返って思うのは、システムがいかに重要かということ。TRIPSはJTBグループ2万9000人の仕事の基盤であり、自ら開発、運用していくことが鍵だ。JSSのスタッフをはじめ関係者の皆さんには、これまで以上に期待している」。
プラットフォームが変わってもシステムの名称は変わらない。正式決定ではないが、新システムは「TRIPS7」と呼ばれるようだ。
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