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営業プロセスをSaaSで見える化、新規開拓と囲い込みに生かす【ゆとりフォーム】

- 小林 茂晴 氏
- ゆとりフォーム 営業部 首都圏ブロック長
- 1998年に文化シヤッターゆとりフォーム事業部(現・ゆとりフォーム)入社。板橋店リフォームアドバイザーや地区リーダー、墨田店店長を歴任。2004年から首都圏22店舗を統括する現職に就く。

- 加藤 武志 氏
- ゆとりフォーム 営業部 係長
- 2002年に文化シヤッターゆとりフォーム事業部(現・ゆとりフォーム)入社。墨田店リフォームアドバイザーや地区リーダーを経て、2007年から現職。2008年からのCRM導入プロジェクトでリーダーを務めた。
─ 2008年6月に、CRMを導入したそうですね。今日はそのことについて伺いますが、その前に御社について教えてください。
小林: 当社は修理や営繕、大規模改修などを請け負う住宅リフォーム業者です。1997年に文化シヤッターの事業部としてスタートし、2006年に分社独立しました。現在、東京や神奈川、埼玉といった首都圏を中心に約20店舗を展開しています。施工数は、1年間に約1万8000件。これは、首都圏に限って言うと業界トップクラスなんですよ。
─ 自社で工事も実施するんですか。
小林: いいえ。工事自体は約1000社ある協力会社に委託しています。
─ つまり、営業が業務の主体ということですね。これまで、SFAやCRMといったシステムを使ったことはなかった?
小林: 実はあります。1999年に、クラリファイというベンダーのCRMシステムを5000万円近くかけて導入しました。でも、活用しきれていなかった。
─ せっかくのシステムがほこりをかぶっていた。
小林: 全く使っていなかったわけではないです。電話受け付け業務にこのシステムが持つCTIを利用していました。
─ CTIというと、顧客から電話がかかってきたとき、その顧客の取引履歴をパソコン画面に表示する機能ですね。
小林: そう。それから、地域特性に応じて販促チラシを制作し配布するためのデータ分析にも使っていました。ただし、CRMとしては使っていなかった。
─ そういう経験がありながら、CRMにこだわるのはなぜですか。
小林: とにかく営業の生産性を上げたい。そんな思いからです。
4年前に営業プロセスを標準化
小林: これまで当社の営業業務は新聞の折り込みチラシに大きく依存してきましたが、その費用対効果はあまりよくないんです。チラシを見ての問い合わせには、1件当たり7万円のコストがかかっている。平均受注単価は40万〜50万円ですから、このコストがいかに収益を圧迫しているかお分かりいただけるでしょう。しかも、問い合わせのあった顧客のうち、実際に受注にこぎつけるのは半数でした。
─ 7万円かけて問い合わせが来ても、2件に1件は失注してしまっていた。
小林: その最大の理由は、営業情報がブラックボックス化していることでした。商談に関する情報を、営業担当者が個別に抱え込んでいたんです。その結果、多くの受注チャンスをみすみす逃していました。
─ どういうこと?
加藤: 受注に至る前に、顧客との接触が途切れてしまっていたんですよ。「顧客から電話で問い合わせを受けて一度は訪問したが、それっきり」とか、「再見積もりの依頼を放置している」とか。
小林: その一方で、既存顧客のケアもできていなかった。
─ 既存顧客というと、以前にリフォームした人ですよね。またリフォームする可能性があるんですか?
加藤: この市場は、リピート客が多いんです。例えば、トイレを改修してすっきりすると、今度は風呂場のすきま風を何とかしたくなる。だいたい、初回リフォームの1カ月後と3カ月後にリピートオーダーしてくるケースが多いです。
─ ということは既存顧客の管理は重要ですね。
小林: 我々としては、新規開拓もさることながら、そうした既存顧客のニーズをしっかりつかまえたい。そこで2005年、「営業担当者の行動指針」を作ったんです。
─ それはどういう指針ですか。
小林: 営業プロセスを細かく定義したものです。例えば、新規顧客に対するアプローチの仕方を「初回訪問」「現場調査」「見積もり/再見積もり」「クロージング」といったフェーズに分け、それぞれでやるべきことを明文化した。
加藤: このほか、「工事後も既存顧客を定期訪問する」「施工中は現場の近隣の家にあいさつする」といった細かな事柄までをプロセス化しました。
─ 受注獲得や顧客への接し方を標準化したわけですね。
小林: はい。しかし、こうしたプロセスを管理する道具はせいぜいExcelどまり。店舗によっては紙で管理しているところもありました。営業を統括する私としては、受注実績だけでなく、案件ごとの進捗状況を全社で一元管理し、営業プロセスを“見える化”できる仕組みがほしかった。
─ そこで、CRMシステムを導入しようと考えた。
小林: そういうことです。ただ、費用の問題からなかなか踏み切れませんでした。実際、ある国産ベンダーに聞いたところ、当社の規模でCRMを入れると1億円かかると言う。費用対効果を考えても、そこまでの投資は不可能でした。
─ いったんはあきらめた。でも、いつかは入れたいという気持ちは変わらなかったんですよね。
小林: むしろ、ますます強まりました。CRM導入が現実味を帯びてきたのは、2007年10月のことです。
CRMの威力を目の当たりにした
─ 何があったんですか。
小林: 社長が「世界経営者会議」に参加したんです。その会議で、米セールスフォース・ドットコム(以下SFDC)のCEOが講演した。
─ マーク・ベニオフ氏ですね。
小林: 社長がベニオフ氏と名刺交換したら1カ月後、SFDC日本法人の営業担当者がやってきたんです。
─ 呼びつけたんですか?
小林: いいえ、向こうからアポを取ってきました。
─ あ、世界経営者会議での名刺交換がリードになったわけだ。
小林: そういうことです。その営業担当者は、当社を訪問するに至るプロセスをSalesforce CRM上でどう管理しているかを、実際に自分たちが使っている画面を開いて説明してくれました。「こんなレベルの営業活動を可能にするシステムなら使いたい」と思いましたね。
─ 加藤さんはどう思った?
加藤: 私も、「これを使えば効果を上げられる」とは感じました。ただ正直なところ、「ちょっと高望みかな」とも思いました。300人近くの営業担当者が利用するとなると、1年に4000万〜5000万円かかるという話でしたから。
─ 費用面がネックではあったが、2人とも「これは使える」という手ごたえを感じた。それから?
小林: しばらくは結論を出しかねていました。すると、SFDCの担当者が再訪してきた。初回訪問の1カ月後、絶妙の間合いでしたね。
─ その担当者、うまいですねえ(笑)。
小林: このときから、CRM導入を本気で考え始めたんです。
─ SFDC以外のベンダーも考えた?
小林: もちろんです。SFDCのほか3ベンダーに見積もりを依頼。社長と私たち2人、それにもう1人を加えた4人でそれらを検討しました。
─ SFDC以外もSaaSだったんですか。
加藤: 外資系大手はSaaS。残る国産ベンダー2社は、パッケージソフトでした。このうち、国産ベンダー1社のソフトは見積機能がメインで我々のニーズに合わなかったので、早い段階で対象から外しました。
ベンダー担当者の行動を見てサービスを選択
─ 実質、3社のコンペだった。選択のポイントは何でしたか。価格ですか。
小林: 各ベンダーの営業担当者です。まず落ちたのは、国産ベンダー。ここの営業担当者は、とにかく約束を守らなかった。時間通りに来ないんですよ。「CRMを販売している会社がこの程度?」という感じでした。
─ 外資系大手の担当者は?
小林: 人間的にはとてもいい人でした。でも、コンセプトや機能の説明よりも、見積金額をやたらに下げてくるんです。しまいには「いくらだったらうちに決めてくれますか」と言ってきた。
─ 安くしてくれる分にはいいじゃないですか。
小林: 逆に信用できません。最初に提示した金額は何だったのかと思いましたよ。その点、SFDCの担当者はこちらに「この人は売りっ放しにしない。責任を取ってくれる」と感じさせた。社長も同じ意見でした。
─ 加藤さんも同意見だったんですか。
加藤: 実は違います(笑)。私ともう1人は、外資系大手がいいと言っていました。SFDCと同じSaaSなんですが、表やグラフの表現力が優れていたんです。複数のグラフを組み合わせて1つの画面に表示することもできました。それに比べると、Salesforce CRMは表示機能が少ないし、グラデーションもかけられません。
─ 意見は2つに割れたが、結局はSFDCに決めた。
小林: はい。
─ 営業手法に少々疑問はあっても、外資系大手のサービスのほうが安いし機能も豊富なのに。加藤さんは、「上司の横暴だ」と思ったでしょう。
加藤: 少し(笑)。でも、今思えばSFDCにして正解でした。SFDCはシステムを年に4回もバージョンアップします。機能面の不足がなくなる日は遠くない。それに、SaaSが普及するにつれてベンダー間の価格差は縮まるはずですから。
要件定義から稼働までわずか2カ月半
─ ところで、2人ともシステムが専門ではないのに、SaaSに詳しいですよね。
小林: SFDCを知ってから、みんなで勉強したんですよ。
─ どうやって?
小林: 野村総合研究所の城田真琴さんが書いた「SaaSで激変するソフトウェア・ビジネス」という本を、みんなで読みました。城田さん本人にも会いに行き、SaaSの可能性や課題について中立的な意見を聞かせてもらいました。
─ すごい行動力だ。話は戻りますが、SFDCと正式契約したのはいつ?
加藤: 2008年3月15日です。稼働は6月1日を予定していました。
─ 契約から稼働まで2カ月半しかない。それ以降にはできない何らかの理由があったんですか。
小林: 使うと決めたら早く使いたいじゃないですか。SaaSなんだし(笑)。
─ それはそうですが…。するとその2カ月半は忙しかったでしょう。
加藤: 私ともう1人はまず、SFDCのシステム管理者向け研修に行きました。
─ SaaSについて勉強したばかりで、システム管理者向け研修ですか。わけが分からなかったのでは。
加藤: いきなり「システム管理とは」「ユーザーIDを登録するには」なんて言われたときは、確かに面くらいました。でも、過去に原価管理や顧客管理のシステムをExcelやAccessで組んだ経験があるので、それほどとっつきにくくはなかったです。
─ 研修のほかには?
小林: 要件定義です。当社独自の営業フェーズをSFDC側に説明したり、独自タブを設定したり。
─ 自分たちの業務ニーズをうまく表現できず、要件定義でつまづくユーザーは結構多いと聞きますが。
小林: 幸いなことに、当社には先ほどお話した営業行動指針がありましたから。営業プロセスをすでに標準化してあるので、要件定義はスムーズでした。
加藤: 約5万件に上る顧客データの移行も問題なく済み、6月1日には予定通り新システムをリリースできました。
─ さて、導入から1年近くたちましたが、効果は出ていますか。
小林: 各店舗の実態がよく見えるようになりました。Salesforce CRMを見れば、案件がどのフェーズで滞っているのかすぐ分かる。月例の店長会議では、そういう案件を1つひとつ指摘して「どうなっているんだ」と問いただします。
─ なるほど。店長は、店舗全体の営業進捗とデータ入力状況に目を光らせおく必要がある。
小林: そう、まさにそれが私の狙いです。店長が「この案件はどうなってるんだ?」「次はいつ行く予定だ?」などと担当者と対話することで、有望な案件を放置することがなくなる。担当者間の連携プレーも可能になる。営業効率は確実に高まるはずです。
─ 使い勝手の面ではどうですか。
小林: どういう使い方がいいのか、いい意味で悩んでいます。例えば、初めはダッシュボードの実績値を重点的に見ていました。でも最近は、案件ごとのレポートを見て「今、何が起きているのか」を把握するほうが重要だと思うようになりました。
加藤: 使いこなすのは結構大変です。新しい機能が次々に追加されますから。
─ SFDCのサポートは?
小林: サポート担当者が来るのは1カ月に1〜2回。もっと来てほしいんですが、その担当者がとにかく忙しい。「なんで私たちがそっちの予定に合わせなきゃいけないんだよ」と、よく文句を言っています(笑)。
加藤: まじめな話、今のサポート体制では規模の小さい企業だとちょっと…。
─ Salesforce CRMの使いこなしは厳しいかもしれない?
小林: そう思いますね。ぜひ、もっと手厚くしてほしい。それとつくづく思うのは、システムは入れるだけでは動かないということ。どう使わせるかが重要です。
─ システムによる情報管理をいやがる担当者もいるでしょうからね。
小林: まだまだ多いです。そういう担当者には、こう言うんです。「君たちは、自分の営業プロセスを明確に順を追って説明できるか。できないだろう。だから業績が安定しないんだ」。
─ それは反論できませんね(笑)。
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