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中長期での安定成長で不況に打ち克つ [オービック(証券コード4684)]
営業利益率が高い理由
オービックの2008年3月期の営業利益率は28.9%に達する。同期におけるIT企業主要14社の平均営業利益率は7.3%だから、群を抜いて高い。この理由は大きく分けて2点ある。
1点目は、売上高に占めるソフトウェアおよびサポート売上比率の高さである(図1)。創業当初、オフコン販売を中心にしていた同社は、10年をかけてソフトウェア・サービス重視路線に転換。現在は、会計・人事・販売などを統合したERPパッケージ「OBIC7」を、顧客の要望に基づくカスタマイズとともに提供する。2点目は低い売上高外注費比率。08年3月期の単体売上高に占める外注比率17.4%は、同期におけるIT企業の平均売上高外注費比率30〜35%に比べると、約半分の水準だ(図2)。
オービックの加納博史専務が「ソフトウェア事業は、人とノウハウとがすべて」と指摘するように、同社の高い営業利益率は、パッケージとカスタマイズ力、低い外注比率を可能にする人材が相まって実現されたといえそうだ。
景気悪化局面での業績動向
だが、顧客である中堅中小企業の景気悪化の直撃を受けている。この局面でもオービックの強さは有効なのだろうか?まず今期(09年3月期)に関しては、第3四半期を終えた時点で営業利益は111.6億円。通期の会社営業利益計画145億円に対する進捗率は76.9%で、受注高も497.3億円と前年比+3.5%で増加している。ほぼ会社計画並みで、大きな上振れ・下振れはなさそうだ。
来期(10年3月期)はどうか。連結で見た同社の事業セグメントは、ソフトウェアの販売・カスタマイズを手掛けるシステムインテグレーション事業(SI事業)、構築したシステムを保守するシステムサポート事業(SS事業)、それに顧客向けにサプライ用品を提供するオフィスオートメーション事業(OA事業)の3つに大別できる。
SS事業は長期保守を前提としているので、大きな落ち込みは考えにくい。ほぼ09年3月期並みの売上高121億円(前年比+1.6%)、営業利益55.5億円(同+1.9%)と予想できる。OA事業は、不況の影響によりサプライ用品の販売は急減する。実際、09年3月期の第3四半期時点でのOA事業は売上高が前年比▲8.6%、営業利益は同▲21.6%だった。10年3月期も流れは変わらず、売上高55億円(前年比▲13.3%)、営業利益4.4億円(▲23.0%)を予想する。ただし営業利益全体に占めるOA事業の割合は4.1%と低い。
10年3月期のSI事業の成否は?
結局のところ、同社の10年3月期の業績はSI事業における受注の獲得に左右されるだろう。同社は、営業とSEが一緒に顧客を訪問し、提案からシステム提供までを一貫して手掛ける“製販一体”というアプローチを基本に、不況を乗り切る考えだ。それにより1工数見積もりを精緻化し、不採算案件を減らす、2SE・営業が顧客を訪問することによって顧客ニーズを把握し、失注を減少させる、の2点を狙う。
09年3月期の第3四半期時点でのSI事業の受注残(売上に計上されていない受注)は、前年比+6.3%の149.1億円。08年3月期の前年比+5.6%を上回る。このうち、半分近くが来期以降に売上計上されることを考慮すれば、来期のSI事業における売上高の大幅減少は考えにくい。来期SI事業の売上高320億円(前年比+1.5%)、営業利益85.1億円(同+1.9%)を予想する。
以上の3事業を合計したオービックの連結営業利益は、図3に示すように147億円(前年比+2.5%)の微増益を予想する。
オービックの理論株価
ではオービックの適正株価は、どの程度か。来期(10年3月期)の営業利益は前述の通り、微増益の見込みだ。ただし持分法適用会社であるOBC(オービックビジネスコンサルタント)の収益が低迷しており、経常利益に算入される持分法利益が減少する見通しもある。結果、EPS(1株あたり純利益)は、前年比▲0.8%と微減の、1000.6円を予想する。これに情報サービス・セクターの標準PERである14倍を掛けると、理論株価は1万4000円になる。4月20日の終値は1万3360円。現在の株価は、来期の微増益を織り込み済みと言える。
一般に株価がさらに上昇する可能性としては業績の上振れがある。しかし同社は、急激な受注増加→外注費の増加→不採算案件の増加につながると考え、意識的に受注を抑えている。不況下でもあるので、業績の上振れの可能性は低いだろう。
一方、株価がさらに下落する可能性はどうか。受注残から判断する限り、業績が大きく下振れする可能性は低い。あるとすれば持分法適用会社であるOBCのさらなる業績の悪化だろう。
オービックは、現場力の強化など受注拡大のために様々な施策を展開しているが、受注を適正水準に抑えているため1〜2年のレンジでは業績に大きな変化はない。しかし過去10年の長期間では、営業利益は54.6億円から145億円へと約3倍、営業利益率は15.8%から30.2%へと大きく改善している。業績を見る場合、とかく今期の業績など近視眼になりがちだ。しかし同社のように中長期で着実に成長している会社もある。そうだからこそ、不況と好況とのギャップが少ない=不況にも打たれ強いと言えそうだ。
- 長橋 賢吾
- ITアナリスト
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