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ファーストユーザーになろう(vol.10)
売り手側は、「売り」になるポイントだけを強調したり、時流のバズワードや流行りの概念に乗せて売り込みにかかる。商行為としては当然の振る舞いであるから、虚偽や誇大広告でない限り非難できない。見極めるためには「目利き」になるしかない。
目利きになるにはたくさんの見聞を重ね、また触れてみることだ。骨董品の目利きになるのと同じで、興味と知識も必要になる。製品を見るだけではなく、提供している企業も、宣伝も見なければならない。たくさん積み重ねると、真鴈のアルゴリズムが出来てくる。直感(観)的に、イケルとかアカンとかの判定を下せるようになる。
「ファーストユーザーは美味しい」
情報の分野ではベンチャーの製品に優れたものが結構ある。特にソフトウェアは装置産業でもないし、参入障壁もないので、資本のないベンチャーが活躍できる素地がある。斬新なERPパッケージを作っている会社もあれば、データベースソフトを作っている会社もある。画期的な開発ツールを提供しているところもあるし、ミドルウェアの優れものを作っている会社もある。
筆者はそうした製品や会社を探し出し、ファーストユーザーになることを心がけて実践してきた。本誌読者にも、それを勧めたい。何しろファーストユーザーは、実に美味しいからだ。
具体例を挙げよう。筆者はシステム再構築時に日本や韓国のベンチャーの製品を導入した。まず評価版などで慎重に調査し、不足している機能や欲しい仕様、そのほかの改善要求を洗いざらい出していく。するとベンチャー各社は例外なく、極めて真摯な姿勢でその要求を満足するような対応をしてくれる。これはファーストユーザーの特典である。製品はユーザーニーズによって磨かれていくのでWin-Winの関係ができる。リリースの期限に必死で間に合わせてくれるし、ライセンスの契約形態や価格も融通が利く。ベンダーにとっては販売実績が大きな営業ツールだからだ。
リスクは回避できる
日本の大企業は、総じてベンチャーの初期製品を使おうとしない。どこか著名な企業で使用されて評判になると、連鎖的に採用されたりする。リスク対策として実績を重んじる風潮のせいかも知れない。それは当然のことなので、筆者もリスクには注意を払った。
経営がしっかりしているか、財務状況はどうかといったことは、重要な判断材料である。筆者は必ず社長と面談することにしている。開発にどういう思いを持っているか、ビジョンと将来構想を確認する。技術の責任者とも、面談させてもらう。社長と技術者のコンセプトがしっかりしていて信頼がおければ、大きなリスクは生じない。
それでも企業存続が困難になることも考えられる。その時の代替品や、場合によっては権利の買い取りや別の会社に引き受けてもらうことなども、想定しておく。そういう意味では国産がいい。リソースが国内にある。こうしたことを部下にやらせれば育成になる。
ベンチャー育成策にも効果大
こうした点に限らず、様々なことを検討する。リスク対策を検討しているから状況変化にも対応しやすい。
これに比べて、セカンドユーザーはどうだろう。実績依存の判断になりがちで、心構えが違うのではないか。ファーストユーザーの美味しさも享受できない。なるならファーストユーザーだ。
しかも、これはユーザー企業だけにメリットがある話ではない。日本ではベンチャーがなかなか育たない。良い製品でも簡単には使われないからである。米国などと違ってインキュベーションの仕組みが整っていない日本のベンチャーは、VCによる顧客紹介や効果的なマーケティングを実践できるだけの支援も受けられない。
だからこそ優れたベンチャーを育てる近道は、各産業分野の大企業が目利きを生かして積極的に採用することだ。あらためて国産ベンチャーの製品に目を向けてみることをお勧めする。
- 木内 里美
- 大成ロテック監査役。1969年に大成建設に入社。土木設計部門で港湾などの設計に携わった後、2001年に情報企画部長に就任。以来、大成建設の情報化を率いてきた。講演や行政機関の委員を多数こなすなど、CIOとして情報発信・啓蒙活動に取り組む
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