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スキルのある人に早くたどり着く方法(第2回)
まず始めに、テクニカルサポートにおける、問い合わせに対する体制および対応方法に関して説明する。いくらスキルのある人に早くたどり着きたいと思っても、テクニカルサポートの状況を理解せずして進めていくのは無理がある。「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」ではないが、まずはテクニカルサポートがどのように対応を行っているかを知っておくことが重要である。
テクニカルサポートでは一般的に、いくつかのレイヤーに分けて対応する。一番多いのは、3つのレイヤーに分け、それぞれをTier1、Tier2、Tier3とするものである。それぞれのTierにおける役割は以下のようになる。
【Tier1】
ユーザーからの問い合わせを最初に受けるレイヤーである。ここでは、まずユーザーからの問い合わせに対して、その内容を理解し既知の内容であるかどうかの確認を行う。テクニカルサポートには情報源として、マニュアルだけでなく、ユーザーからの問い合わせデータベース、FAQ、ナレッジベースなどが存在する。それらの情報を元に、既知の内容として該当するものがあるかどうかを確認し、ある場合にはそれをユーザーに回答する。このように、Tier1では、ユーザー対応と既知の問題かどうかの確認が主な役割になる。
【Tier2】
Tier1では処理しきれない問題、特に技術的に検証作業、再現テスト等を行う必要があるような問い合わせの場合、あるいは、開発部門等と仕様の確認を行う必要がある場合には、Tier1からTier2に問い合わせの引き継ぎ(エスカレーション)が行われる。Tier2では、検証作業等を通して問題を切り分け、その結果を元にユーザーに回答する。この場合、Tier2が直接ユーザーに回答する場合もあるが、Tier1を経由して回答する場合もある。
【Tier3】
ユーザーからの問い合わせ内容が、製品のバグや製品の仕様レベルの問題の場合には、Tier3にエスカレーションされる。Tier3は、開発部門と密にコミュニケーションを取りながら、バグの場合にはワークアラウンド情報(問題を回避する対策など)の提供、あるいは、修正版の提供を行う。また、製品の仕様である場合にはその詳細説明等を行う。
以上のような3-Tier構造が一般的であるが、別の構造として、2つのレイヤーを持ちフロントライン/バックラインという形で対応している場合や、レイヤーを持たずにフラットな構造で対応しているところもある。これらの長所・短所に関しては別の機会で触れることとし、ここでは3-Tier構造をベースに話を進めることとする。
さて、上記の3-Tier構造と、スキルのある人になかなかたどり着かないということの関連性に関して述べていく。問い合わせの処理は、Tier1→Tier2→Tier3と流れていく。このエスカレーションがスムーズにいきタイムラグがなく進む場合には、スキルのある人にたどり着かないという問題はあまり発生しない。なかなかたどり着かないと感じられるのは、エスカレーションがスムーズに進まず、何度も同じ人あるいは同じレイヤーの人とやり取りを行わなければならない場合に起きることが多い。エスカレーションがスムーズに行かない原因として以下の3点が考えられる。
1) 問い合わせ内容の正確な理解に時間がかかる
まず、問い合わせ内容が正確に伝わらない、あるいは、テクニカルサポートが問い合わせ内容を理解できない場合に、エスカレーションがスムーズに進まないという問題が発生する。対応に際して、まず正確に事象を理解する必要があるのは当然であるが、上位Tierへエスカレーションする場合においても、正確でない、あるいは、あいまいな情報の場合には、エスカレーションされたとしても対応できないという状況が発生するため、エスカレーション自体が差し戻しとなる場合がある。このような状況になると、問い合わせ自体が同じレイヤーに留まることになり、的確なスキルの人にたどり着かない原因となる。
2) 優先順位が低くエスカレーションするまでに時間がかかる
上位Tierへのエスカレーションには、基本的に以下のいずれかの条件が必要である。
- そのTierでは、これ以上の調査が難しい状況。たとえば、Tier1でさまざまな情報を元に調査を行ったが該当するものがない場合、技術的な検証等が必要と判断しエスカレーションを行う。
- そのTier内で、ある一定時間が経過した状況。通常、テクニカルサポートでは問い合わせの優先順位に応じて各Tierで持てる最大時間を設定している。この時間を超えた場合には、速やかにあるいは自動的に上位のTierにエスカレーションされる。
最初の状況では、特にエスカレーションに時間がかかるということはないが、2番目の状況では、優先順位に応じてなかなかエスカレーションされない場合がある。そのため、スキルのある人になかなかたどり着かないということが発生する。優先順位さえ適切に設定されていればスムーズにエスカレーションされ、必要とするスキルの人にたどり着くことができるが、優先順位はテクニカルサポート側で判断するものであり、必ずしもユーザーが期待するものにはならないため、なかなか的確なスキルのある人にたどり着かないという問題が発生する。
3) 放置されているため時間がかかる
これは、明らかにテクニカルサポート側の問題であるが、問い合わせ自体が放置されているか無視されている状況である。テクニカルサポートでは、通常、案件管理システムを利用しているため、もし放置された問い合わせがあった場合には、ある一定時間の経過後にアラートがあがるようになっている。したがって、システム的には放置されたり無視されたりするようなことは起こらない。しかしながら、どうしてもバックログ(抱えている問い合わせの数)が多くなると対応しきれない場合が発生する。また、病気等、スタッフの予期せぬ休暇が理由で対応(案件の引継ぎ)がうまく行かなかった場合には放置状態となってしまう。このような場合、エスカレーションが行われないため、的確なスキルのある人にたどり着かないという問題が発生する。
さて、以上のような状況に陥った場合の対処方法あるいは陥らないための対処方法はどのようにすべきであるかに関して以下に5つのポイントを挙げよう。
【ポイント1】テクニカルサポートのお作法をあらかじめ確認しておく
通常、テクニカルサポートでは必要となる情報というものが定められている。たとえば、障害に関する問い合わせにおいては、使用ソフトウェア、使用しているリリース番号、OSのバージョンなどが最低限必要になる。それらの中には、その時の問い合わせには関係ないと思われる内容も含まれるが、スムーズな処理のためには事前にすべて準備しておきたい。また、あらかじめ製品の購入時等に、問い合わせ時に必要となる情報に関してテクニカルサポートに確認しておくのが望ましい。これらの必須情報がそろっていることで、問い合わせ内容の正確な把握およびスムーズなエスカレーションが行なわれるようになる。
【ポイント2】現在の優先順位およびその理由を確認する
優先順位は、ユーザーにとってはいちいち確認しなくても最優先で処理してくれるものと考えたいのが普通である。しかしながら、ユーザーから見ればテクニカルサポートは1対1の関係であったとしても、テクニカルサポートから見れば1対Nの関係である。テクニカルサポートにとっては、優先順位というのはユーザーが考える以上に重要である。ユーザーは、問い合わせ時にどのような優先順位で扱われているかを確認することにより、テクニカルサポートでどのように扱われているのか、どのTierで処理されているのを知ることができる。これにより、その時点で的確なスキルの人が対応しているのかどうかを確認することができる。また、問い合わせ開始時には、優先順位の確認と共にどのような根拠に基づいているのかを確認するのが望ましい。これにより、ユーザーとテクニカルサポートが同じ認識の元に対応を開始することができ、その後のエスカレーション等もスムーズに行くことになる。
【ポイント3】次のステップと今後のアプローチに関して確認する
問い合わせの最後には、必ず次のステップや今後の進め方に関して確認するようにする。これにより、今後の対応方針が明確になるため、テクニカルサポートおよびユーザーの双方とも必要な準備ができるようになる。また、ユーザーにおいては、通常進捗状況を上司に報告する必要がある。そのためには、必ず次のステップや今後の進め方を確認しておくのが望ましい。そうでないと、いつ解決するのかという点を追求されることになり、ユーザー、テクニカルサポート共に辛い状況に追い込まれることになる。次のステップ等を確認することで、どの段階でエスカレーションが 行われるかが明確になり、的確なスキルの人に迅速にたどり着くことができる。
【ポイント4】次回の連絡方法と連絡時期を確認する
テクニカルサポートが、問い合わせに対する定期的な連絡時期を明確にしている場合には問題にならないが、レスポンス時間のみを規定しているような場合には、初回以外の連絡時期は明確でない場合が多い。テクニカルサポートでは、通常、内部的にユーザーへの連絡時期が規定されている。また、案件管理システムでユーザーへの連絡時期が知らされるわけであるが、それでも連絡を行わない場合がある。特に、進捗があまり無い場合には、ユーザーへの連絡を躊躇してしまう場合がある。そこで、たとえ進捗があろうがなかろうが、次回の連絡時期と連絡方法に関しては、必ず確認しておきたい。これにより、安易な放置を防止でき、エスカレーションがスムーズに行われるようになる。
【ポイント5】最後に責任者と会話する
どうしてもスキルのある人にたどり着かない場合の最後の手段は、テクニカルサポート部門の責任者と直接話すことである。また、担当営業を使って解決策を見出すことも必要になる場合がある。この場合、どうしてもクレーム的な話になってしまうのであるが、それではあまり実りのある話にならない。そこで、対応しているテクニカルサポートがなぜ期待しているスキルでないのかを説明し、なぜそのような状況になっているのかという観点から話し合いを行い、適切な人をアサインしてもらい対応を進めさせるようにしたい。また、テクニカルサポート側から今までのやり取りの履歴が出されるはずであるので、実際にどこに問題があったのかをお互いに認識し今後に向けての対応策を見出していきたい。
的確なスキルのある人に対応してもらえない状況は、非常にフラストレーションのたまることである。この状況に陥らないためには、ちょっとでもおかしいと感じたときにはコミュニケーションを取ってお互いの状況を確認するということを行っていただきたい。これにより、スキルのある人に早くたどり着くということが実現できるのである。
- 諸角 昌宏
- 外資系コンピュータ・メーカーで、ソフトウェアの開発に従事。特に、国際化ライブラリやUNIX、データベースの開発を担当。その後、外資系セキュリティ・ベンダーで、テクニカルサポートのマネージメントを行い、現在は、セキュリティ・ソリューションの日本における立ち上げおよびビジネス・ディベロップメントに携わっている。
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