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優先順位を上げる方法(第4回)
さて、テクニカルサポートにおいて優先順位はどのようにして決められているのであろうか。優先順位に関して、通常、テクニカルサポートがユーザーに連絡してくるのは「シビラティ」(Severityの日本語表現。「セベリティ」や「シビアリティ」と記述する場合もあるが、本稿では「シビラティ」と記述)というものである。日本語に訳すと重大度あるいは深刻度というものであって、優先順位を直接表現しているものではない。それでは、テクニカルサポートで使用されているシビラティとはどのようなものであるのか、また、このシビラティと優先順位というのはどういう関係になるのかをまず述べていきたい。なお、ここで記述することがすべての会社で同じというわけではなく、あくまで、典型的なやり方ということで理解していただきたい。
1.シビラティの意味
まず、テクニカルサポートで、シビラティをどのように定義しているかを述べる。基本となる考え方は、ユーザーの環境およびビジネスへの影響度に応じてシビラティを設定している。なお、各メーカーのシビラティの定義に関しては、サポート情報としてWebサイトに公開しているのがほとんどであるので、各メーカーのWebサイトで確認していただきたい。
| シビラティ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 該当製品やサービスの障害により、ユーザーの業務に重大な影響を及ぼしている場合 |
| 2 | 該当製品やサービスの障害により、ユーザーの業務の一部に重大な影響を及ぼしている場合 |
| 3 | 該当製品やサービスの障害により、一部の機能が使用できなくなっている場合 |
| 4 | ユーザーの業務には影響はないが、機能の説明や使用方法の説明が必要である場合 |
これを見ると、あくまでテクニカルサポートの論理で設定されていることがわかる。つまり、ユーザーのビジネス上のインパクトが大きいものに関しては高いシビラティで対応を取るという考え方のみで定義されているわけである。ユーザーにとっては、たとえ「一部の機能が使用できなくなる」場合であっても、それが使用できないために大きな被害を受けることもあるわけであるが、この場合には高い優先順位で扱ってもらうことができないということが発生する。
しかしながら、優先的に扱うかどうかの基準を上記のシビラティ以外の方法で定義するのはかなり難しい。ユーザーの気持ちを汲んで設定するというようなことにすると、非常にあいまい(上記のシビラティの定義もあいまいではあるが)にせざるをえなくなり、声が大きいユーザーの問い合わせを優先するというような事態になりかねない。したがって、たとえ実際の優先度と異なっているとしても、テクニカルサポートが、ユーザーに対して示すことのできるのはシビラティだけであるということができる。
2.シビラティに従った対応
さて、上記のシビラティに対してテクニカルサポートがどのような対応を取るかに関して述べる。基本的には以下の2つである。
(1)応答時間の設定
応答時間とは、ユーザーからの問い合わせに対してテクニカルサポートからの回答が行われるまでの時間を意味する。また、シビラティにより、それぞれ応答時間を定めている。たとえば、シビラティ1であれば1時間以内、シビラティ2であれば2時間以内、シビラティ3であれば1営業日以内、シビラティ4であれば規定しない、というようなものである。応答時間に関しては各社それぞれ定義しているのでWebサイト等で確認していただきたい。また、以下の点に関しては事前に確認し把握しておく必要がある。
- 契約しているサポート・レベル
サポート契約に基づくサポート・レベルにより、シビラティごとの応答時間に違いがある。当然ながら、レベルの高い有料サポート(プレミア・サポート等)を契約している場合には、応答時間は短くなる。また、標準サポートでは応答時間を規定していない場合もある。
- 応答時間の意味
通常、応答時間は解決までの時間ではなくあくまで回答までの時間であることを注意したい。また、応答時間の意味として、ファースト・レスポンス(最初の問い合わせに対する最初の回答時間)のみを規定している場合もあるし、ユーザーへの定期的な連絡に要する時間を規定している場合もある。このあたりは、テクニカルサポートからの連絡がなかなか来ないというような問題を引き起こさないように事前に確認しておきたい。
- SLA
応答時間を、サポート契約においてSLA(サービス・レベル・アグリーメント)としているかどうかも確認しておきたい。SLAで無い場合には、単に努力目標ということになるので注意したい。
(2)業務時間内対応あるいは24時間365日対応
もう1つシビラティに従った対応として注意しておきたいのが、24時間365日対応における業務時間外の対応である。なぜならば、テクニカルサポートでは、すべての問い合わせに対して24時間365日対応を行うわけではないということである。もちろん、完全に24時間365日サポートとして、いつでもどのような問い合わせでも対応するようなサポートを行っているところもあるが、業務時間以外の問い合わせに関しては高いシビラティ(たとえばシビラティ1およびシビラティ2)のみに限って対応すると規定されている場合が多い。また、これはその後の対応に関しても同様であり、たとえまだ問題が解決していない場合でも問い合わせは業務時間しか行えないことになる。このように、シビラティに応じて24時間365日に対するテクニカルサポートの対応も変わってくるので注意したい。
3.シビラティとプライオリティの関係
優先順位を表すものとしてシビラティのほかにプライオリティというものがある。日本語に約すと優先度ということになり、その意味からするとプライオリティの方が優先順位を表すのに適当と思われる。では、このプライオリティはどのように定義され使用されているのであろうか。
通常、プライオリティはユーザーには知らされず、テクニカルサポートあるいはメーカー側で内部的に使われるものである。ユーザーの方には、強いて言えば「最優先で対応しています」というような表現で伝えられることが多い。では、なぜ、プライオリティはテクニカルサポートあるいはメーカー側の内部的に使われるものなのであろうか。簡単にいうと、プライオリティを明確に定義するのが難しいからである。
明確というと「シビラティの定義は明確か?」という質問が来そうであるが、少なくともシビラティでは、ユーザーのビジネスへの影響度という観点から順位付けできるのに対し、プライオリティはユーザーが直面している問題点の重要度、他のユーザーからの問い合わせと比較しての重要度、シビラティの観点からの重要度、さらに、メーカーにとってのビジネス上の重要度までが加味されて順位付けされることになる。テクニカルサポートでは、これらの要因を検討し、営業や上層部と相談の上プライオリティを決めている。
それでは、シビラティとプライオリティがどのように使用されるかに関して述べていく。既に述べたように、シビラティに従った対応がユーザーの状況を反映したものではない場合がある。たとえば、ネットワーク機器の障害により、メールの到達が遅れるという問題が発生したとする。この場合、ユーザーの業務自体に重大な影響を及ぼしているわけではないため、シビラティは3に設定される可能性が高い。しかしながら、ユーザーの立場からすると、メールの遅延により、社内からの問い合わせが頻発し、また、顧客からのメールが滞る場合があるため、シビラティ1あるいは2で対応してほしいと思う。この場合、ユーザーの状況等を鑑みて、テクニカルサポートでは高いプライオリティを設定し、できるだけ迅速な対応が取れるようにする場合がある。
このように、プライオリティでシビラティをうまく補完するようにすることで、なるべくユーザーの状況にあった対応ができるようにしている。
それでは、実際に優先順位を上げて欲しい場合にどのようにすべきかに関して以下に述べていく。優先順位を上げる方法といっても、直接そのように伝えたとしてもうまく行かないし、逆効果になる場合もある。また、営業などにエスカレーションして対応を急がせるというのは、対応が滞っているなどの特別な場合を除き極力避けたいものである。そうすると、直接的に優先順位を上げるような特効薬はないが、以下の3点を行うことで早急な対応を促すことができる。
- 問い合わせ時にシビラティを必ず確認し、シビラティの設定に疑問がある場合には確認する。テクニカルサポートでは、通常、シビラティのデフォルトの値が定められている。そのため、問い合わせ内容の表面的な部分を見てデフォルト値に設定されてしまう場合がある。ちなみに、デフォルト値はシビラティ3あるいは4である場合が多い。したがって、問い合わせ時にはシビラティを確認し、テクニカルサポートとの間でできるだけ認識を合わせておくようにしたい。
- ユーザーの事情を伝えて、テクニカルサポートの方でプライオリティを上げるべきと判断できるようにする。テクニカルサポートでは、とかく現象だけを見てプライオリティを判断する傾向が強い。特に、メールでの問い合わせの場合は、なかなかユーザーの事情というのは分からない。したがって、できるだけユーザーの事情を伝えて、プライオリティを上げるようにしていきたい。必要に応じて、電話を利用することも検討したい。
- 第2回、第3回で述べたように、テクニカルサポートと相互にうまく処理が進められるようにする。早急な対応、早急な問題解決が目的であるわけであるから、たとえ優先順位が上がらないとしても早急に対応を進むようにしていきたい。
以上のように進めることで、直接的に優先順位をあげることはできないとしても、結果として早急な対応を進めることができるようになる。
- 諸角 昌宏
- 外資系コンピュータ・メーカーで、ソフトウェアの開発に従事。特に、国際化ライブラリやUNIX、データベースの開発を担当。その後、外資系セキュリティ・ベンダーで、テクニカルサポートのマネージメントを行い、現在は、セキュリティ・ソリューションの日本における立ち上げおよびビジネス・ディベロップメントに携わっている。
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