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加速するハイビジョン対応、対面さながらの臨場感を実現へ
今日は8時からの早朝会議。指定されたのは社内でも“噂”の会議室だ。
駆けつけた先には、驚く空間が待ち構えていた。20畳ほどある会議室の一方の壁面には、65インチのプラズマディスプレイ3台が横にぴったり並んで設置されている。私を含む参加メンバー4人は、ディスプレイに向かって半円形に設置されているテーブル席に腰を下ろした。画面に目をやると、同じく会議に参加する7人のスタッフが映し出されている。そこにいるのは、サンフランシスコ支店に勤める面々だ。向こうは夕方のはずで、1日の仕事を終えた後にこの会議に臨んでいるのだろう。こちらと同様の施設があり、両拠点はビデオ会議システムで結ばれているのだ。
表情の微妙な変化も分かる
いざ会議が始まると驚いた。画面も大きいし解像度も高い。ほぼ等身大に映される相手の表情が実にリアルなのだ。声もしかり。先方の左の人物の声は左から、右の声は右から聞こえる。しかも、息づかいが分かるほどの音質だ。まるで本当に一堂に会しているような臨場感がある。こちらの意見に対する反応が、表情や声から見て取れる。
しかも、もう1台、別途設置されているディスプレイには、Excelの予算表や、商品サンプルの実像が随時切り替えられて表示される。拡大縮小も自由自在。全員で情報共有しならがの議論が白熱する。小一時間があっという間に過ぎ、お互いの納得の下、重要案件の結論を下すに至った─。
これは近未来のオフィスの姿を描いたものではない。日本ヒューレット・パッカード(HP)がすでに市場投入しているビデオ会議システム「HP Halo Collaboration Studio」(写真1)の特徴の一部である。導入参考価格は、1室あたりの初期設置費用が約1200万円からで、さらに運用費が月額約200万円と高価だ。だが、重要な会議のために役員クラス数名がいちいち海外に赴くような企業であれば、交通費やその他経費、そして何よりも往復で社を留守にする時間のロスを考えると有効なソリューションとなり得る。
ここまでハイスペックなシステムは不要という企業にとっても、最近のビデオ会議システムの技術進歩には目を見張るものがある。
特にここ数年で飛躍的に性能が向上しているのが画質だ。HD(High-Definition)と呼ぶ高画質、高鮮明な映像を映し出すモデルが各ベンダーの主力製品となっている(ビデオ会議システムにおけるHD画質とは、一般的にモニターの解像度が1280×720以上に対応するものを指す)。映像の動きも滑らかで、あたかも対面して会議しているような雰囲気を醸し出す。
スイッチを入れれば、遠隔地のスタッフとすぐにも議論が始められるビデオ会議システム。国内外への出張コストを大幅に削減できるメリットもさることながら、即断即決のスピード経営を実現するツールとしても注目が集まる。このレポートでは、HD画質に対応する最新のビデオ会議システム製品の動向を見ていこう。
専用端末かソフトウェアか
まずビデオ会議システムにはどのような種類があるのか確認しよう。大きくは、「専用端末型」と「ソフトウェア型」に分かれる。いずれも拠点間を結ぶ回線としてはインターネットを想定しているものが中心である。
専用端末型はその名の通り、ビデオ会議用に開発された専用装置を指す。映像や音声データを圧縮/伸張する機能や、データを送受信する機能を備える。モニターやカメラ、マイクについては、一体型として提供するモデルや、外付けで別途用意するモデルなど、さまざまなタイプがある(表1参照)。
| 製品名/ベンダー名 | 概要 | 価格 |
|---|---|---|
| Vega X7/アエスラ | 端末のファンを排除して静音性に配慮した製品。768Kbpsの低帯域でHDの映像を転送できる。同時に複数の拠点を接続して会議を開催するMCU機能を内蔵し、最大9拠点まで同時接続が可能(利用には別途ライセンスが必要) | 204万150円(価格はVTVジャパン) |
| VidyoRoom HD-200/ ヴィディオ |
「H.264/SVC」という映像用のプロトコルを採用し、パケットロス発生時の映像の乱れを軽減できる。1秒間に30枚の画像を表示する「30フレーム」対応製品が多い中、60フレームでより滑らかな映像を再現する | 228万7950円(価格はVTVジャパン) |
| NC1900-MV-CH/NEC | 操作用デバイスとしてワイヤレスのキーボードとマウスを採用し、PCのように操作可能。MCUの「NC1400-MV-MC」を利用することで最大16拠点まで同時に接続できる | 74万5500円~ |
| Cisco TelePresence 3200/ シスコ・システムズ |
大規模向けのテレプレゼンス製品。規模の違いから5つのシリーズがある。最上位モデルの「3200」は、65インチのモニタを3台配置し、1会議室あたり最大18名の出席者が利用可能。AT&Tジャパンのソフトウェア型「AT&T Connect」と接続して会議を行える | 未公開 |
| PCS-XG80/ソニー | 解像度1920×1080、60フレームの映像を表示できる。ペンタブレットを接続することで、エクセルやパワーポイントの資料に文字などを書き込める。逆光などで暗い室内を自動で色調補正し、明るく表示する機能を備える | 115万5000円 |
| TANDBERG Edge 95MXP/ 日本タンバーグ |
無線LAN用のPCカードスロットを備え、PCを無線で接続してエクセルなどの資料を表示できる。最大4拠点(+音声3拠点)の同時接続が可能。大規模向けのテレプレゼンス「Telepresence T3」や、個人のデスク設置型「TANDBERG Centric 1700 MXP」なども取り扱う | 195万5100円 |
| Halo/ 日本ヒューレット・パッカード |
3台のモニターを横に並べて利用する大規模向けテレプレゼンス製品。人物を表示するモニターとは別に資料表示や進行操作に使うモニターを用意する。顧客の要望に合わせてモニターの数を1台、もしくは2台にすることも可能 | 約1200万円~ |
| HD映像コミュニケーション ユニット/ パナソニック コミュニケーションズ |
1920×1080の画面解像度で映像を表示できる。使用する帯域に合わせて最適な映像・音声を送信する機能を備え、映像の乱れや音切れを軽減する。HDMIケーブルを利用してフルHD対応テレビやビデオカメラを接続できる | 100万円〜 |
| Wooolive/日立製作所 | 60フレームの映像を表示する「セットトップ200」と、30フレームの映像を表示する「セットトップ100」がある。専用のゲートウェイ機器を利用することで、携帯電話からテレビ電話で会議に参加できる | 766万5000円~(セットトップ100を6製品と、小規模ビデオサーバー1製品を含む) |
| Polycom HDX 6000/ ポリコムジャパン |
個人向けから大規模向けまで揃えるHDXシリーズの1つ。エントリーモデルだが上位機種と同じプラットフォームを利用し、上位モデルと同等の映像、音声を再現する。大規模向けテレプレゼンス「Polycom RPX HDシリーズ」も取り扱う | 87万1500円(HDX 6004の場合) |
| LifeSize Express200/ ライフサイズ・ コミュニケーションズ |
画質や同時接続数などが異なる各種のモデルを用意。「Express」は内蔵MCU機能や入出力ポートなどを制限した低価格モデル。HD対応の映像を512Kbpsという低帯域で利用できる。固定焦点カメラとズーム機能付カメラの2モデルがある | 83万7900円(固定焦点カメラモデルの場合、価格は日立ハイテクノロジーズ) |
一方のソフトウェア型は、パソコンに専用ソフトをインストールしビデオ会議端末として使えるようにする製品だ。モニターはパソコンのものを流用できる(プロジェクタやテレビに出力することも可)。カメラやマイクについても市販のパソコン用周辺装置が利用できるため、比較的安いコストで利用できる(表2参照)。
そのほか、ASP/SaaS方式によるテレビ会議サービスも登場している。もっとも、まだほとんどがHD画質には対応していない状況だ。
| 製品名/ベンダー名 | 概要 | 価格 |
|---|---|---|
| VidyoDesktop/ヴィディオ | 専用端末型「VidyoRoom HD-200」からの映像を受信する場合に限り、HDの解像度で映し出せる(インテルの「Core 2 Duo」プロセサ搭載PCの場合)。画面のレイアウトをユーザーが自由に決められ、画像サイズの調整が可能 | 3万1605円(25ライセンスの場合、価格はVTVジャパン) |
| WarpVision HD/ エヌ・ティ・ティ レゾナント |
1対1での接続時に限られるが、1920×1080(フルHD)の画面解像度で映像を表示できる。フルHD未対応の下位モデル「WarpVision」もある。自社運用型とASP型の両利用形態を用意する | 個別見積もり |
| Visual Nexus/OKI | ソフトウェア型で「H.323」に準拠し、ポリコムやソニーなどの専用端末との接続が可能。自分のカメラ映像の代わりに動画ファイルを再生して会議出席者に配信できる。ASP版の「ビデオ会議@PTOP」もある | 406万3500円~(サーバーとクライアント5拠点分の価格、自社運用型の場合) |
| LIVE SPACE/ジェイアイズ | 複数の会議を並行して開催できる。ログインすると自分が参加する会議を選択して入室するようになっており、自分が参加できない会議は「入室禁止」と表示される。チャットは全員用、個別用の2通りを並行して利用できる | 初期費用:3万9800円(サーバー開設料)、3000円(1IDあたり)、月額使用料:1280円(1IDあたり) |
| NET FORUM/スマイルワークス | 「アプリケーション共有機能」や「リモートPC機能」により、閲覧中のエクセルやパワーポイントを操作したり、文字や線を書き込める。会議予約や参加ユーザーなどの管理も可能。自社運用型とSaaS型の利用形態を選択できる | 初期費用:10万5000円、月額使用料:3万1500円(会議室が3室、5ユーザー、SaaS型の場合) |
| DayConnect PRO TV 会議システム/ ディアイティ |
映像をできるだけリアルタイムで送受信することにこだわった製品。ソフトウェア型ながらフルHDで映像を映し出せるほか、タブレット用モニターを利用し、画面上から操作できる。サーバとクライアント製品で構成し、クライアントはタッチパネル採用の「DayConnect PRO Touch」など3種類ある | 73万2900円(DayConnect PRO Touchの価格) |
| TANDBERG Movi/ 日本タンバーグ |
「H.323」プロトコルに準拠する専用端末と接続してビデオ会議を開催可能。管理ソフト「TANDBERG Management Suite」と連携し、会議をする相手の在席状況を確認できる。ワンクリックで映像や音声をミュートにする機能を備える | 約15万円(25ライセンスの場合) |
まず会議のスタイルを決める
数ある製品バリエーションの中から、自社の用途にぴったりの製品を絞っていくポイントを見ていこう。
まずは、ビデオ会議をどういうスタイルで進めるかを考える。(1)ビデオ会議用機材を設置した部屋を各拠点に用意して、参加者がそこに集合する。(2)専用の部屋は設けず、参加者1人ひとりが各自のパソコンからシステム上に集合する。このどちらかが、一般的なパターンだ。
(1)の用途を想定しているのが、専用端末型のビデオ会議システムだ。相手となる拠点の呼び出しや、会議資料となるパソコン文書の表示、議事録としてのビデオ録画などの豊富な機能が、リモコンの簡単な操作で使える。発言者の声がする方向に自動的にレンズを向けるカメラなど、専用設計ならではのオプションも数多くあり、細かい部分に配慮が行き届いている。特段、ITの詳しい知識がなくても直感的に扱えるのが特徴だ。
一方、(2)のような個人参加型の場合は、ソフトウェア型の製品が選択肢となる。わざわざ別の場所に移動することなく、まるで電話をかけるかのように自席から必要に応じて会議に参加できる手軽さが売りだ。1対1に限らず、複数人での会議も可能。かしこまった会議でなくとも、プロジェクトメンバーによるちょっとした打ち合わせなどにも気軽に利用できる。
会議室を使うなら専用端末
専用端末型の中で、1つの拠点での参加者が10人を超える規模での利用を念頭に開発しているのが、「テレプレゼンス」と呼ばれるハイエンドのシステムである。冒頭で触れたHPのHaloのほか、シスコ・システムズのTelePresence 3200、ポリコムジャパンのPolycom RPX HDシリーズなどが、このカテゴリに入る。会議室というよりは、専用機器を常備した「スタジオ」を作り込む感覚だ。通信品質を最優先に考え、この分野に限ってはインターネットではなく専用線の敷設を推奨する例が多い。初期導入費用や運用コストも高めの設定だ。
会議室の片隅に設置しておき、必要に応じてビデオ会議部屋として使いたいというなら、100万〜400万円クラスの専用機型となる。このレンジの製品もHD画質が主流である。もっとも、画質の向上はネット上を流れるデータ量の増大をもたらすため、ネットワーク負荷をいかに抑えるかが課題となる。
この点では、拠点ごとのネットワーク帯域を監視し、負荷が大きい場合は自動で映像のフレーム数を落とすといった機能を実装するのが最近の傾向だ。映像のクオリティはある程度犠牲になるが、映像の不自然なコマ落ちや他システムへの支障を回避できる。「海外拠点とビデオ会議を行う場合、国によっては不安定なインターネット回線を用いることがある。こうした拠点と会議を行う際にも有効にはたらく」(日本タンバーグ テクニカル・サポート・マネージャー 中村昌弘氏)。
第三者/異機種との接続も
ビデオ会議システムの今後の動向を見る上では、「第三者との接続」「異機種間での接続」にも注目したい。
HPのHaloの場合、自社にとどまらずHaloを所有する他のA社、B社…などとも接続してビデオ会議を開くことができる。具体的には、「コンシェルジュ」という電話サポート機能でセンターを呼び出し、接続したい相手先を伝える。センターが相手先に確認をとり、許可があれば両者はすぐにビデオ会議ができる。シスコ・システムズのTelePresenceを取り扱うAT&Tジャパンも同様のサービスを提供中だ。
これらはまだ単一ベンダーのシステムに閉じた話だが、ゆくゆくは異なるベンダーの製品を使っていても、手軽に第三者を呼び出してビデオ会議ができる時代がくるかもしれない。その片鱗を示すのが「H.323」と呼ぶ通信規格への対応だ。
H.323とは、国際電気通信連合という国際機関がビデオ会議向けに映像や音声の仕様を定めたプロトコルである。この規格に準拠した製品同士ならベンダーが異なっても接続が可能だ(ただし交換機能はない)。MCU(多地点接続装置)を介せば、複数の拠点にまたがるビデオ会議もできる。
ここにきて、専用端末型の多くがH.323に準拠するようになったのに加え、OKIの「Visual Nexus」など、ソフトウェア型製品の中にも対応製品が出始めた。ポリコムやタンバーグといったH.323準拠の専用端末から「Visual Nexus」が開催する会議に参加できる。またヴィディオのソフトウェア型製品「VidyoDesktop」は独自プロトコルを採用するものの、ゲートウェイ機器「VidyoGateway」を介在させることで、H.323準拠の専用端末を会議に参加させられる。「すでに専用端末を導入している企業は多い。一方で、在宅勤務の人や取引先との打ち合わせで、パソコンを利用したビデオ会議のニーズは増える。その際、専用端末とパソコンと連携する仕組みが必要になる」(VTVジャパン 代表取締役 栢野正典氏)という。
今後、前述の「コンシェルジュ」に相当し、相手先を自由に検索して接続できるサービスが出てくれば、“どこでもドア”さながらの「商談プラットフォーム」へと進化するかもしれない。
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