PR

個人と企業に定着したフィード—Part5

情報活用基盤を低コストで構築可能に

Webサイトの最新情報をインターネット利用者に配信する目的で普及した「フィード」の用途が広がっている。特に企業にとっては、情報活用基盤を安価に整備する技術として魅力的な存在になりつつある。フィードの現状と企業情報システムへのインパクトをまとめた。

インターネットの世界では数年前から、「フィード」がさまざまなWebサイトで使われ始めている。フィードとはニュースサイトやブログなどのWebコンテンツの全文もしくは一部を、配信用に加工した文書データのことである。本誌の読者であれば、RSS1.0やRSS2.0、Atomなどの言葉を見聞きしたことがあるだろう。これらはフィードをXMLで記述するためのフォーマットだ。それぞれ、多くのインターネット利用者にコンテンツを配信できる共通仕様として考えられた。

RSSとAtomはいずれも、タイトルや更新年月日などXMLで記述したフィードの内容をソフトで処理するのに必要な項目を定めている。ただ、2つは名称が異なることからも明らかなように、記述方法などの仕様が少しずつ異なる。そのためRSS用に作られたソフトでは、Atomに準拠したフィードを正しく処理できないといった問題があった。

そこで数年前まではそれぞれの仕様の差を埋めるか統合しようという議論が盛んだった。しかし最近は仕様の違いを問題視する声は聞かれない。フィードを受信して読むための「フィードリーダー」の技術進歩が著しく、RSS1.0とRSS2.0、Atomのいずれのフォーマットで記述されたフィードでも違いを吸収して受信できるようになったからである。今では主要なブラウザやメールソフトがフィードリーダーの機能を標準で備えている。

集客力の向上を目指すニュースサイトで普及

フィードの用途は大きく2つに分けられる。1つは更新・追加した新しいコンテンツのプロモーション。2つめはコンテンツのシンジケーション(共同受配信・統合)だ。

コンテンツのプロモーションとは、インターネット利用者をサイトに誘導する目的で、サイトの更新・追加情報を配信するものである。自社のサイトへのアクセス数を増やすことで収益を上げるニュースサイトやECサイトは、プロモーション用途でフィードを活用している。中でも、紙からインターネットへのシフトが急速に進む欧米のニュースサイト運営企業はフィードの活用に積極的で、コンテンツを経済やITなどのカテゴリごとにきめ細かく分類。特定のカテゴリに関連する情報を選択して収集したいと考えている利用者の利便性向上に一役買っている。

コンテンツのプロモーションには、全文を配信する方法とタイトルや概略だけを配信する方法がある。だが実際にはフィードを配信している国内外のニュースサイトのほとんどが、コンテンツのタイトルや概略だけを配信する方法を選んでいる。全文をフィードとして配信してしまうと、サイトへの誘導(アクセス数の増加)という目的を果たせないのでは、と考えているからだ。

フィードを呼び水にしてニュースサイトやECサイトに読者や消費者を集めるのではなく、フィード自体が持つコンテンツとしての価値を高めてプロモーションツールに利用しようとする動きもある。フィードに記載した文書の中に小さなバナー広告(インライン広告)を挿入したり、コンテンツの概略を記載したフィード数本につき1本の割合で、広告だけを記載したフィード(スタンドアローン広告)を配信したりするものだ。こうしたプロモーション方法を一般に「RSS広告」と呼ぶ。

RSS広告は、多くのインターネット利用者に情報を配信できるフィードの特性に着目したユニークな発想に違いないが、現時点では残念ながら世界的に上首尾とはいえない。例えば、海外ではインターネットの雄であるGoogleが2007年6月にRSS広告のFeedBurnerを買収したと発表したが、2年が経過した今になってもRSS広告が同社の事業に寄与したとは言い難い状況だ。日本ではトランスコスモスがRSS広告配信サービス「Pheedo」を展開しているが注目度は低い。そんな中、唯一気を吐いているのは、広告代理店やニュースサイトとの協業体制の強化を図っているRSS広告社だけだと言っても過言ではないだろう。

社内外の情報を集約しポータルを構築

フィードの第2の用途として挙げたコンテンツのシンジケーションは、「複数のサイトで同一のコンテンツを共有するWebサービス用途」と言い換えることができる。Googleのポータルサービス「iGoogle」は、コンテンツのシンジケーションにフィードを用いた典型的な例だ。iGoogleはJavaScriptやFlashで作った「ウィジェット」と呼ぶ小型のフィードリーダーをポータル画面に複数配置し、さまざまなサイトのフィードを1画面に統合して表示する仕組みになっている。ブログの関連サービスとして多くのコンテンツプロバイダが提供している「ブログパーツ」も、フィードリーダーのウィジェットの一種である。

このようにシンジケーションは、フィードの新しい使い方として急速に広がり始めている。そして「コンテンツごとに個別にWebサイトを閲覧する」というかつてのインターネットの常識を変え、企業情報システムの構成方法にも少なからず影響を与えつつある。

例えば社内システムのデータをRSSやAtomで配信する仕組みを用意し、それぞれのフィードを受信するウィジェットを開発する。そうすればウィジェットを組み合わせるだけで、全社ポータルや部門ポータルを簡単に実現できる。

RSSやAtomを使って社内外のシステムに存在するコンテンツの流動性を高め、最新の情報を過不足なくシステム利用者に提供する(図5-1)。フィードとウィジェットの進化によって、こうした仕組みが低コストで実現できるようになっている。軽くて小さいツール(ソフト)を柔軟に組み合わせてWebシステムを構築・改修するスタイルは、今後の主流になるだろう。

図5-1 フィードのビジネス利用イメージ
図5-1 フィードのビジネス利用イメージ(図をクリックで拡大)
小川 浩
モディファイ 代表取締役社長兼CEO

IT Leaders 毎月無料でお届けいたします

本誌は、読者登録いただくことにより、毎月無料でみなさまのお手元まで直接お届けいたします(書店などでは販売していません)。

企業の情報システムを担当する方々や事業部門のIT担当の方々、およびIT関連プロフェッショナルの方々を対象に、実践的に役立つ情報を掲載、幅広く業務にご活用いただけます。

IT Leaders新規購読お申し込みはこちらから
Ads by Google