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WiMAXとNGNで充実するブロードバンド環境—Part8
WiMAX
9事業者が一斉にサービスをスタート
「WiMAX」による通信サービスが相次いで登場した。UQコミュニケーションズが2009年7月1日に「UQ WiMAX」の提供を始めると、ニフティやNECビッグローブなど老舗のISPだけでなく、トリプレットゲートやワイコムといったベンチャーも一斉にWiMAXサービスをスタート。ビックカメラとヤマダ電機といった家電量販店のように、これまで通信サービスと無縁だった企業までもがWiMAXサービスに乗り出した(表8-1)。
| 名称 | 運営 | 料金 | 概要 |
|---|---|---|---|
| @nifty WiMAX | ニフティ | 初回登録料2835円、月額使用料4200円※1 |
|
| DIS mobile WiMAX | ダイワボウ情報システム | 初回登録料2835円、月額使用料4480円 | |
| BIC WiMAX SERVICE | ビックカメラ | 初回登録料2835円、月額使用料4480円 | |
| BIGLOBE高速モバイルWiMAX | NECビッグローブ | 初回登録料2835円、月額使用料4263円※2 | |
| Business WiMAX | KDDI | 初回登録料3150円、月額使用料4480円※3 | |
| YAMADA Air Mobile WiMAX | ヤマダ電機 | 初回登録料2835円、月額使用料4480円 | |
| UQ WiMAX | UQコミュニケーションズ | 初回登録料2835円、月額使用料4480円 | |
| WirelessGate Wi-Fi+WiMAXプラン |
トリプレットゲート | 初回登録料2835円、月額使用料4480円 | |
| WICOM WiMAX | ワイコム | 初回登録料3150円、月額使用料3990円 |
WiMAXサービスは国際標準規格「IEEE802.16方式」を用いた無線データ通信サービスだ。パソコンに同方式に準拠した通信アダプタ(通信カードやUSB機器など)を接続し、国内では周波数2.5GHz帯の電波を使って通信する。
基地局の整備をはじめとした設備投資を考えただけでも、通信サービスへの参入障壁は高い。にもかかわらず、新規参入を含め、これだけの数の事業者が一斉にWiMAXサービスをスタートしたのにはワケがある。
このほどWiMAXサービスを開始した事業者のうち、通信設備を持っているのは、実はUQコミュニケーションズただ1社。それ以外の事業者はUQコミュニケーションズから通信設備を借り受けてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)なのだ。総務省がUQコミュニケーションズに通信事業者免許を発行する際、MVNOに設備を提供することを義務づけたことが背景にある。
ADSL並みの通信を屋外でも利用可能に
WiMAXサービスの最大の特徴は、広いエリアで高速の無線データ通信を利用できることだ。WiMAXサービスが使うIEEE802.16方式は、無線LANに使われている802.11方式に比べ、遠くまで電波が到達する。「電波の妨げになる高層ビルが立ち並ぶ都市部でも、1カ所の基地局から半径500メートルは電波が届く」(UQコミュニケーションズの坂口肇マーケティング戦略部長兼建設1部副部長)。データ通信速度は最大で下り40Mbps、上り10Mbpsなので、ちょうどADSLサービスを屋外で使うイメージになる。
無線データ通信サービスに関してはNTTドコモやイーモバイル、ウィルコムも提供している。携帯電話やPHSのネットワークを使うので提供エリアは当然広域だが、データ通信速度は最速のサービスで下り21Mbpsにとどまる。NTTグループ各社が提供する公衆無線LANサービスを利用できる空港や喫茶店、ホテルも増えてきた。こちらは最大で下り54Mbpsのデータ通信が可能だが、空港や店舗の外では使えない“室内”サービスである。
ただし、現時点でWiMAXサービスを利用できる地域は東京、名古屋、大阪の都市部に限られる。UQコミュニケーションズは早期に人口カバー率80%を目指して基地局の整備を急いでいるが、スムーズに作業が進むかどうかは不透明な状況だ。関係筋によると、UQコミュニケーションズは電波の送受信条件が良い建物のオーナーと基地局の設置の交渉をしているが、価格面などで折り合わず難航している。好条件のビルにはすでに携帯電話やPHSの基地局が設置してあって、スペースに余裕がないケースもあるという。
だがエリアの整備が進めば、MVNOを中心に積極的なサービス展開が考えられる。UQコミュニケーションズでは、情報家電のトレーサビリティへの利用が広がることを期待しているという。
NGN(次世代ネットワーク)
NTTが商用サービスを開始、IPであらゆる通信を実現
「将来的には、プライベートクラウドの基盤としてNGNが広がる可能性はある」。こう語るのはアクセンチュアの武田智和エグゼクティブ・パートナーである。武田氏によると、NGNを視野に入れて社内システムのクラウド化を検討する企業が出てきている。
インターネットに限らず、固定電話や携帯電話を含めてすべての通信をIPで実現する。この“夢”を可能にする通信インフラこそ、次世代ネットワーク「NGN」だ。現在、日本や欧米だけでなく世界中で実用化に向けた動きが活発になっている(表8-2)。
| 国名 | 通信事業者 | 概要 |
|---|---|---|
| 日本 | NTT | 「フレッツ光ネクスト」という名称で商用サービスをスタート |
| KDDI | 固定・携帯通信に放送を加えたFMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)を推進 | |
| ソフトバンクテレコム | 2005年12月にシステムと通信の融合をうたうプラットフォームサービス構想「IRIS」を発表 | |
| 米国 | AT&T | IMSベースのNGNを「CARTS」という名称で推進。IPTVサービス「U-Verse」を提供 |
| スプリント・ネクステル | 「FiOS」と呼ぶNGNの研究開発プロジェクトを継続中 | |
| イギリス | BTグループ | 「21世紀ネットワーク」(21CN)を展開。アプリケーションプラットフォーム「Ribbit」でAPIを公開 |
| イタリア | テレコム・イタリア | IMSベースのNGNへの移行計画を発表済み |
| オランダ | KPN | IMSベースのNGNへの移行計画を発表済み |
| 韓国 | KT | BcN(Broadband Covergence Network)という名称でNGNを推進 |
| スペイン | テレフォニカ | 2014年に固定電話網を完全IP化へ |
| 中国 | チャイナ・テレコム | 固定電話網のIP化からスタートし、IMSベースのNGNに移行へ |
| フランス | フランス・テレコム | 2008年から固定電話網をNGNへ移行 |
そうした中、NTT東西は2008年3月に商用NGNサービス「フレッツ 光ネクスト」を開始した。従来の「ベストエフォート型」インターネットと異なり、品質保証を前提としたIPネットワークだ。
光ネクストには、通信速度を一定に保つ「QoS制御機能」と、利用者のなりすましを防止する「セキュリティ機能」の大きく2つの特徴がある。既存のネットワークで主流のベストエフォート型の通信サービスは、回線状態によって通信速度が変化するなど品質が安定しない。これに対してQoS制御機能を持っているNGNは通信時の品質劣化を防ぎやすい。
セキュリティに関しては、端末と回線の双方にIDを付与して、利用者のなりすましを防ぐ。具体的には、端末からNGNのサーバーに発信者ID(ゲートウエイ装置のID)を送信。サーバー側では、発信者IDとそれを送るのに使われた回線IDの組み合わせが認証情報と一致するか照合する。
キラーアプリの登場が普及のカギを握る
もっとも、安定性と安全性だけではNGNの爆発的な普及は見込めそうにない。NGNのサービスが既存のものと代わり映えしなければ、「わざわざNGNを使うまでもない」という印象をユーザーが持ちかねないからだ。どうしても起爆剤となる“キラーアプリケーション”が必要になる。
そのためNTTは光ネクストのサービス開始と同時に、NGN向けアプリケーションの開発や事業化を支援する「次世代サービス共創フォーラム」を設立。2009年6月末時点で、約1700の企業や個人が参加して活動している。
活動内容は多岐にわたるが、キラーアプリケーション創出のカギを握るのは「コミュニティ」の活動だ。これまでヘルスケアや金融など6つのコミュニティを設置して、NGNの特徴を生かしたアプリケーションの検討を重ねてきた(表8-3)。現在は教育と開発の2カテゴリの活動が活発で、eラーニングサービスなどの分野では成果も上がり始めている(図8-1)。
| 開発 | NGN向けアプリケーションのあり方や、開発支援策について議論。成果として、ソフトフロントがNGN上での音声・ビデオ通話アプリ開発用SDKをリリース |
|---|---|
| 教育 | 企業・学校でのeラーニングを中心に教育分野へのNGN適用を議論。成果として、3D仮想空間を利用したeラーニング企画会社をNTTとデジタル・ナレッジとが設立予定 |
| 金融 | 金融とNGNを組み合わせたビジネスモデルを検討。NGNの認証機能を金融機関の認証に利用するといったアイデアを議論 |
| SaaS | NGN上でのSaaS「SaaS over NGN」や、クラウドサービスの利点や課題を議論。欧米のNGN上でのSaaSビジネスの実態調査・報告も実施 |
| 医療 | 離島などを対象に、エコー診断画像などの大容量医療用画像の高速転送やビデオ会議を利用した遠隔医療サービスなどについて議論 |
| ヘルスケア | センサーで取得した大量の生体・生活習慣情報を活用し、個人に合った生活改善策を提案する「ユビキタス型ヘルスネットワーク」について議論 |
出所:NTT09年3月期決算発表資料
AKARIプロジェクト
“非IP”も見据えネットワークの将来像を示す
「AKARI」という名のプロジェクトをご存じだろうか。情報通信研究機構(NICT)が2006年にスタートした新世代ネットワーク(New Generation Network:NWGN)の研究プロジェクトだ。IPにとらわれず、将来あるべきネットワークの姿を白紙の状態から検討する“Beyond Internet”プロジェクトと呼んでもよい。
NGNと同様に、NWGNの研究も各国が力を入れている。米国ではNWGNのアーキテクチャを研究する「FIND」と、研究成果を実証する「GENIイニシアティブ」が並行で進んでおり、欧州でも同様に「FIRE」と「GEANT2」のプロジェクトが進行中である。
NICTはこうした海外のNWGNプロジェクトとも積極的に交流を図っている。具体的には08年から米国のGENIや欧州のFIREと共同でワークショップを開催し、互いの研究成果を発表すると同時に、課題解決のヒントとなる情報を交換し合っている。
光ルーターで消費電力を低減
NICTは2008年7月、NWGNのアーキテクチャと要素技術を整理した「AKARI概念設計書 Ver.1.1」を発表した。途中経過ではあるが、特徴的な技術を挙げるとすれば、まず、光信号を電気信号に変換せずにルーティングする「光ルーター」がある。「光パケット交換」と呼ぶ技術を用いることで信号変換の処理を不要にし、データ通信量が増えてもルーターの消費電力を低く抑えることができる。
現行のルーターはルーティングの際に光信号を電気信号に変換する必要があり、通信量が増えると消費電力が大きくなるという課題を抱えている。「仮にペタビット級の通信量が発生すると、消費電力は100万キロワットを超えて、原子力発電所1基の発電能力並みになる」(NICTの原井洋明ネットワークアーキテクチャグループグループリーダー)という。
もう1つ、「ID・ロケータ分離アーキテクチャ」もNICTがAKARIで研究中のNWGNが持つ特徴である。これは、端末がどのネットワークに接続しているかを示す「ロケータ」と端末IDを切り分けて管理するための仕組みだ。
既存のインターネットでは、1つのIPアドレスがロケータと端末IDの両方の役割を担う。このため、例えば屋外を移動中に端末で接続するネットワーク(基地局など)が切り替わると、新たなIPアドレスを端末側で取得するまでの間、通信できなくなる。ID・ロケータ分離アーキテクチャは、こうした問題が発生するのを防げる。
NICTはこのように既存のインターネット環境が抱える課題を抜本的に解消するネットワーク技術の研究を進め、2011年を目処にNWGNのアーキテクチャを完成。2015年までにNWGNを構成する各種技術を確立し、実用化していきたい考えだ(図8-2)。
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