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仕様外使用の対処方法(第8回)

「その使用は仕様外となりますので使用しないでください」。「しよう」という言葉の仮名漢字変換機能のテストをしているような文章だが、マニュアルに記載されていない、あるいは記載が明確でない使い方に関する問い合わせに対して、このような回答をもらうことは少なくないだろう。マニュアルが不十分な点もあるが、このような問題に対してユーザーがどのように対応すべきかに関して述べる。

さて、製品を使用するにあたって正しい使い方をしているかどうかに悩まされる場合がある。マニュアルにきちんと記載されている使い方であれば問題ないが、マニュアルに記載されていない、あるいは記載が明確でない使い方をしている場合は、特に気を付けなければならない。本来、メーカー側の責任として、正しい使い方をマニュアルに記載しなければならないのだが、なかなかそのようにはなっていない。かつてのメインフレームの頃であれば、膨大なマニュアルのどこかに必要な情報は記述されていたものだが、現在ではそこまで時間をかけて製品化する余裕はないというのが実状である。

ここではまず、どのような場合に使い方が明確にならないための問題となるのかに関して述べていく。以下3点が典型的な例である。

  1. その機能や使い方がマニュアルに記述されていない、もしくは記述があったとしてもあいまいな表現である。ある程度期待通りの動きをするのでその使い方をしていたが、ある日突然うまく動かなくなった。テクニカルサポートに問い合わせたところ、仕様外の使い方をしているためサポートできないという回答がきた。
  2. バージョンアップに伴い、製品仕様自体が変更になった。そのため、マニュアルに記載されていた使い方で今まで使えていた機能が使えなくなったり、動き方が変わってしまった。代替の使い方を教えて欲しいと聞いたところ、あるにはあるが使用方法として大きな変更が必要だとの回答を得た。この使い方は手順書として社内で配布していて、たくさんの人が使用している状況であり、どのように対応すべきか問題となった。
  3. マニュアルに記載のない制限事項が、WebサイトのFAQとして載っていた。使用開始時にマニュアルに基づいて使用方法を決めており、いちいちFAQをすべて確認していない。テクニカルサポートに問い合わせたところ、マニュアルの不備に関してはFAQに記載して公開することで対応しているという回答がきた。FAQをすべて確認するのは大変だし、FAQは日々変更・追加されるものであり、それに追従することは非常に難しい。

それでは、このような場合にどのように対応すべきか、あるいは、テクニカルサポートをどのように利用すべきかに関して以下に述べる。

  1. 上記1のケースにおいては、マニュアルに記載のない使い方をすることは危険である。テストして動いたというのは、たまたま動いたというくらいに捉えるべきである。しかし、マニュアルが完全でないことは先に述べたとおりであり、もしかすると正しい使い方をしている可能性もある。したがって、この場合にはテクニカルサポートに問い合わせ、その使い方をしても良いかどうかのお墨付きをもらう。テクニカルサポートでは、開発担当者などに確認し、その使い方が正しいかどうかの調査をする。その上で、使っても大丈夫かどうかをユーザーに回答する。なお、この場合以下の2点に注意したい。
    • その使い方に関して、次のバージョンアップの際などにマニュアルに記載するよう依頼する。これにより、将来のバージョンで使い方が変わってしまうことを避けられる。
    • その使い方をして良いかどうか明確に確認する。テクニカルサポートは、ときにあいまいな表現で回答してくる。たとえば「その使い方はしても良いが推奨する使い方ではない」というような表現の場合、「推奨しない」使い方をすることは後々危険になる。したがって、できるだけ明快な回答をするように仕向けることが大切である。

      ここで、「推奨」という言葉が出てきたので、この言葉に対する注意点を1つ付け加えておく。「推奨」の元になる英語は「recommend」だが、この単語は状況に応じて微妙なニュアンスの違いがある。特に、否定形で用いられた場合は要注意である。日本人の感覚では、たとえば「この方法で使用することは推奨しない」と言われた場合、「使っても良いがあまりお勧めしない」というふうに理解する。だが、これがときに「recommendしていない使い方なので使用してはいけない」という意味になり、最悪の場合サポートしてもらえなくなる場合がある。テクニカルサポートでは、開発担当者などからの英語での回答を日本語に訳してユーザーに伝えることがあるため、回答に「推奨」という言葉が入っていた場合には、使用してよいのか悪いのかをきちんと確認すべきだ。

  2. 上記2のケースの場合は、影響度によるものの基本的にはメーカー側の問題である。一度提供した機能や使い方は、将来にわたって互換性を取るというのが大原則である。もし変更する場合には、メーカーはリリース前に情報発信してユーザーに注意を促すとともに、代替案および移行のための手順を明確にする必要がある。仕様変更をリリース後に知ったのでは、ユーザーは対応が取れないからだ。

    この場合、ユーザーはまずその使い方の影響度を明確にする必要がある。それに基づいて、テクニカルサポートに修正を依頼する。場合によっては、エスカレーションすることも考える必要がある。メーカー側の対応は、パッチによる互換性の提供や次期バージョンでの互換性の提供、あるいは隠し機能として互換性を持たせるという方法となるので、このいずれかを執ってもらうようにアプローチする。

  3. 上記3のケースの場合は結構厄介である。FAQに対する考え方が、テクニカルサポートとユーザーで大きく違うからである。テクニカルサポートでは、ユーザーに注意を促すためにFAQを公開しているので、重要な情報を公開しているとして扱っている。だがユーザーにとっては、FAQは追加情報程度の扱いと捉えている。FAQを重要な情報の公開場所として位置づけるのはやはり無理があるし、そもそもメーカー側の都合だ。そのため、制限事項の解決を上記2のケースと同様にテクニカルサポートに依頼するのが良い。

以上のように、仕様外使用という問題は現在の製品の提供方法からしてやむを得ない部分がある。また、昔のように開発者がバグフィックスまで責任を持つというよりは、開発とサステイニングによる分業体制が取られている状況では、なかなか同じ考え方の元に製品を作り続けるというのが難しい状況にある。このような状況では、ユーザーはテクニカルサポートに問い合わせて機能や使い方を確認したり、互換性を明確に要求することが重要である。

諸角 昌宏
外資系コンピュータ・メーカーで、ソフトウェアの開発に従事。特に、国際化ライブラリやUNIX、データベースの開発を担当。その後、外資系セキュリティ・ベンダーで、テクニカルサポートのマネージメントを行い、現在は、セキュリティ・ソリューションの日本における立ち上げおよびビジネス・ディベロップメントに携わっている。

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