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BPMシステム化(第5章中編)
3. 第1ステップ(パイロット・プロジェクト)
1) プロジェクトの規模
通常このプロジェクトは表1に示すような規模で実施します。
| 体制 | 2~3名 |
|---|---|
| 業務部門1名(プロジェクトマネージャー) | |
| 情報システム部門1名 | |
| 社外専門家1名(計画はコンサルタント、設計はシステムインテグレータの上級SE、開発はシステムインテグレータのSEもしくは上級プログラマーといったように、工程ごとに登場人物を変えることをおすすめします) | |
| 期間 | 6~8カ月 |
| 費用 | 500~1000万円 |
| 業務範囲 | あるビジネスプロセスの一部(サブプロセス) |
| このプロジェクトで構築するシステムの特徴 | ワークフロー図を作成、DB化し社内で共有 |
| 想定するソフトウェア及びハードウェア | 社内で使用しているワークフロー機能の付いたグループウェアやビジネスプロセスモデリングツール |
2) システム標準の策定
BPMをシステム構築し運用するうえで非常に重要な項目が、システム標準の策定です。
BPMシステムの最初の導入段階である第1ステップ(パイロットプロジェクト)において基本的なシステムを構築するために必要なシステム標準を策定する必要があります。前述したBPMの「業務の可視化」では、ビジネスプロセスについて作業の進め方を標準化しました。ここではビジネスプロセスのシステム化にあたり、そのシステムを構築するために必要となる「システム標準」を策定します。ここでいうシステム標準とは、プログラムの名前の付け方やユーザーインタフェース(画面のデザインや画面上のボタンの配置など)、プログラムの入出力の形式、コーディングの規則などを指します。その際、経験のあるベンダーやシステムインテグレータ、コンサルタントはシステム標準の雛形を持っていますので、それを活用することをお勧めします。
そして、第1ステップ(パイロットプロジェクト)で作成した標準を、第2ステップの「特定ビジネスプロセスプロジェクト」や第3ステップの「全社展開プロジェクト」を実施していく過程でブラッシュアップすることが重要です。
3) ビジネスプロセスモデリングの標準化
システム標準の中でもっとも重要なのが、ビジネスプロセスモデリングの標準化です。
ビジネスプロセスをシステム化するためには、その対象をシステムとして表現できる形にモデル化する必要があります。これを「ビジネスプロセスモデリング」といいます。この作業の一部はBPMの第2ステップですでに始められていますが、ここではさらに一歩進んでビジネスプロセスをシステム化できる形に表現します。
ビジネスプロセスモデリングでは以下の作業をします。
- ビジネスプロセスを可視化する
- ビジネスプロセスに関わる情報資源を明確にする
- ビジネスプロセスにボトルネックとなるような箇所がないか検証する
ビジネスプロセスの表記法としては、UML(Universal Modeling Language)とBPMN(Business Process Modeling Notation)の2つが代表的です。現在ではBPMNが主流となっているので、第1ステップ(パイロットプロジェクト)においてBPMNを標準の記述法と定めれば、今後の第2ステップ(特定ビジネスプロセスプロジェクト)や第3ステップ(全社展開プロジェクト)への展開をスムーズに進めることができるでしょう。また、利用しやすいビジネスプロセスモデリングツールを選定しておくとよいでしょう。
4) 計画
システム標準が策定できたら、次にBPMシステム構築全体の計画を策定します。この段階の計画では、次の2つの点を検討する必要があります。
- 現在実施中のBPM活動のどこにBPMシステムを導入するのかを検討します。具体的には、適用範囲や適用の優先順位、後に続く第2・第3ステップの導入スケジュールを描きます。この段階では全体の詳細な計画を立てるのではなく、大まかなマイルストーンを定める程度となるでしょう。第2・第3ステップ実施時には、改めてプロジェクト計画を立てることになります。
- 第1ステップ(パイロットプロジェクト)の具体的なプロジェクト計画を立てます。プロジェクト計画は、具体的には表4の項目について見当し、計画を作ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロジェクトの概要 | 何が目的で、いつまでに何を実現するか |
| スケジュール | 各フェーズの時期と全体の作業スケジュール |
| 具体的な実施作業 | 大分類、中分類、小分類など、必要に応じて階層化する |
| 成果物の作成と納品時期 | いつまでに何を作成するか |
| 人員計画 | いつどんなメンバーでプロジェクトを進めるか |
| レビュー計画 | どのタイミングでだれが承認したうえで、次の作業に進むか |
| リスク管理 | プロジェクトの実現に向けた不都合要因の兆候の管理 |
| 費用 | いくらかけられるのか |
上記の計画を策定し承認されたら、いよいよ第1ステップ(パイロットプロジェクト)の設計・開発・運用に向けての作業が始まります。BPMシステム構築においても、ここから先は一般的なシステム構築と同様に、要件定義・基本設計・詳細設計・製造・試験・運用開始という手順で構築を進めます。
5) 対象とするプロセスの一部(サブプロセス)の選定
では、いよいよ設計及び開発をします。まず、どのビジネスプロセスのどのサブプロセスを対象とするかを決めます。対象とするビジネスプロセスは、現状を調査して1つの部署・1つのシステムで完結するサブプロセスを対象にします。以下の例のように、BPMシステム導入による効果が明確になるような対象を選択します。例えば、納期管理などが適しているでしょう。
受注から納品に至るまでの営業関連業務のサブプロセスといえる納期管理は、受注してから、顧客や製造部門・物流部門など多岐にわたる調整が必要です。この業務は、営業アシスタントや内勤の営業業務担当者の中にノウハウがある場合がほとんどです。そのため、担当者が休暇をとったり外出したりすると、部門内の誰かが代わって調整することができずに機会損失になることもあります。
そこにBPMシステムを導入することにより、属人化されてきた状況把握が部門内で共有できます。情報のスピードアップによって営業アシスタントの負荷軽減や残業時間削減が実現でき、納期遵守率の向上などのメリットが生まれます。
この段階では、承認プロセスは社内の既存のワークフローの機能を持つグループウェアを使用します。そのため、開発は社内の情報システム部門が社内で利用実績のある開発手法を利用して実施します。
6) 開発
現状を調査し、サブプロセスをビジネスプロセスとして表記します。この段階で、先ほどシステム標準化の部分で決めたBPMNを使って記述します。ビジネスプロセスモデリングツールを使ってもいいでしょう。記述したプロセスは、ビジネスプロセスモデリングツールに搭載されている機能でシミュレーションし、事前に対象プロセスをある程度ブラッシュアップします(シミュレーション機能はツールによっては付属していないことがあります)。そして、このビジネスプロセスを運用していくために必要となる、モニタリングポイントと評価軸も決めておきます。
その後は開発グループに引き継ぎ、実際のワークフローをBPMシステムとして構築します。ここでは、ワークフロー機能を持つ社内に既存のグループウェアを使用します。そのため、社内で実績のある方法で開発することができます。
7) 運用
BPMシステムの開発が完了したら、既存の仕組みからBPMシステムへデータを移行します。納期管理の場合、BPMシステムが導入される前のデータは、ノートや紙に書いたメモだったり、個人のメールやエクセルなどのデータである場合がほとんどでしょう。そのため、データの移行時にシステムへの手入力が発生することになります。
受注番号ごとにデータを集めて、現在の状況にあわせてそれぞれのステータスのビジネスプロセスに手入力します。運用の切り替えを円滑に進めるために、期日を決めて、現在未出荷の受注番号分は今までどおり処理し、期日を過ぎて新たに発生したものから、順次構築したBPMシステムに乗せていくという方法もあります。実際に運用を開始したら、事前に決めておいたモニタリングのポイントを、同じく事前に決めておいた評価軸にしたがってモニタリングし、定期的なPDCAの改善サイクルを実施。ビジネスプロセス(この場合は営業関連業務のサブプロセス)を継続的に改善します。
QBPMNとは何でしょうか?
ABPMN(Business Process Modeling Notation)とは、ビジネスプロセスをどう記述するのかを定めた表記法です。企業内の業務プロセスやワークフロー、企業間連携などのプロセス実行モデルであるBPD(Business Process Diagram)を表記する際の標準仕様として、BPMI.org(Business Process Management Initiative)によって定義されました。現在販売されているビジネスプロセスモデリングツールのほとんどは、BPMNに準拠しています。ツールによってはBPMNによって表記したビジネスプロセスを実行できたり、BPEL(Business Process Execution Language)という、実行可能なビジネスプロセスモデリング言語に変換、出力できるものもあります。
本コラムは、ビジネスプロセス革新協議会(BPIA)で活動するビジネスプロセスマネジメント(BPM)研究会のメンバーが協力して執筆しました。BPIAは、次代の企業にふさわしい組織・業務革新の「あるべきモデル」「導入活用定着手法」を究明し、企業競争優位性の確立とビジネスの生産性向上を目指して1999年に設立されました。また、BPM研究会はITベンダー、ITコンサルタント会社、ユーザー企業で実際に業務革新に取り組んできた専門家が、もっとも効果的/実践的な業務革新の手法を探求しているグループです。
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