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プライム比率の向上、コスト管理強化など体質改善で苦境を脱する[富士ソフト( 証券コード 9749)]
八方ふさがりの受託ソフト開発
富士ソフトの中核事業は受託ソフトの開発。内容としては、(1)携帯電話、自動車、デジタル家電などの組込系ソフト開発、(2)金融機関、流通、製造業などの業務系ソフト開発、(3)それ以外のソフト開発、の3つの分野であり、連結売上高 1650億円(09年3月期実績)のうち、1345億円(売上比率 81.5%)を占める。
だが同社の受託ソフト開発を取り巻く環境は極めて厳しい。厳しい背景の引き金は、08年後半からの金融危機に始まる100年に1度とも呼ばれる不況である。これによって、(1)組込系ソフト開発においては、自動車・デジタル家電といった業種での大幅なIT投資抑制、(2)業務系では主要発注先である金融機関のIT投資抑制に加えて、プライムコントラクター側で外注を使わず、内製を強化する方向、という状況になっている。受託ソフト開発会社に業務委託しなければいけない仕事が確実に減っているわけだ。
これを端的に示しているのが、図1の主要受託開発企業の業績推移である。前期については、大型案件で業績を拡大したソラン以外はすべて減収減益、今期の会社計画においてはすべての企業が減収減益を見込んでいる。こうした八方ふさがりとも言える受託ソフト開発において、どのように成長戦略を描くのか、これが情報サービス企業の経営戦略の要諦と考えられる。
富士ソフトの成長戦略
こうした状況下での富士ソフトの成長戦略は、(1)プライムビジネスの拡大、(2)コスト管理の強化、(3)新規ビジネスの拡大、の3点である。(1)については、いわゆる下請けではなく、顧客から直接プロジェクトを受注し、システムを構築するプライムビジネスを強化する。前述の3分野のうち、組込系に関してはすでに顧客から直接受注し、開発する方式がメインだが、業務系は富士通やNEC、日立といったメーカー系、あるいはNTTデータ、野村総研など大手システムインテグレータからの下請けの比率が高い。業務系ソフトウェア開発でのプライム比率を70%に上昇させることを目標としている。
(2)のコスト管理の強化はどうか。問題点は、何にどれだけのコストを費やしているのかを把握できていなかったことにある。これを解決すべく2008年4月から新しい基幹システムを導入し、コストの洗い出しを図る。「新しい基幹システムで経営の見える化ができるようになった。仮に売上高が半分になっても、利益がでる構造を目指す」(富士ソフトの三角恒明専務)。
3番めの新規事業については、受託ソフト開発、プライム化の次の柱と位置づけるものだ。具体的には、Google社との連携によるクラウドコンピューティング関連のソリューション、業務プロセスの統制・改善ソリューション「FSBizTrust」、デジタルテレビ関連のミドルウェアなどである。
富士ソフトの業績動向
上記の富士ソフトの戦略は、業績に結び付くのだろうか。今後の業績について検討してみよう。前期については、5月の決算説明会において白石晴久社長が、「グループ全体が成長エンジンのないまま水平飛行だった」と総括するように、2009年3月期は売上高が前年比▲3.3%、営業利益は▲2.7%と軟調だった。
今期は、(1)3月末のソフト開発事業での期末受注残が前年比▲10.1%の246.4億円、特に組込系ソフト開発での期末受注残が▲22.8%と、期末の受注残が極めて低調、(2)今期の会社計画では、売上総利益率(粗利率)を前年比+0.2%の24%を計画しているが、外部環境悪化により顧客による単価の値下げ要求は避けられないと見られ、営業利益計画66億円はやや楽観的。筆者は営業利益55億円を予想する。
一方、来期(11年3月期)は図3に示すように、組込系については引き続き低調(前年比▲1.8%)を予想するものの、業務系については大型案件の業績寄与などを見込み、前年比+3.9%の増収を予想する。これによる営業利益は前年比+16.4%の64億円を見込む。今期を底に、来期に向けて業績がやや回復するという見方だ。上述の3つの成長戦略は、明確な成長エンジンとはならないが、基幹システムのように業績の下支えには寄与すると考える。
富士ソフトの理論株価
富士ソフトの理論株価について検討してみよう。5月の通期決算までは業績不振による大幅赤字→純資産額の減少から同社の株価は売られていた。今期も業績は低調だが、大幅な赤字の可能性は低いことから、決算後、上述のように株価の急伸につながったと筆者は見ている。同社の株価の下支えは、PBR(一株あたり純資産額)1倍の水準である2137円とみる。株価がPBR1倍を超える可能性としては、3つの成長戦略が明確な成長エンジンになること。一方で株価がPBR1倍を大幅に下回る可能性については、プライム案件での巨額の不採算案件の発生や、組込ソフト開発事業での更なる下振れが考えられよう。
受託ソフト開発業界の展望
最後に、富士ソフトを含めた情報サービス業界全体の今後の展望について考察しておきたい。前述のように、組込系、業務系ともに八方ふさがりの環境が、今後大きく改善することはないと考えるべきだろう。
その中での成長の機会には、(1)新規事業展開、(2)M&Aが挙げられる。新規事業に関しては、どの会社も力を注いでいるが、成長エンジンとして具現化するところまではいかない。その要因は、受託開発業という企業体質によるものが大きいと考えている。
一方、富士ソフトは、野澤宏会長が先頭に立ち、新規ビジネスへの挑戦や経営陣の入れ替えなど、企業体質を変える試みを継続している。前途多難ではあるが、この試みは参考になるだろう。(2)のM&Aに関しては、外部環境が縮小均衡する場合は活発になる場合が多い。
しかし実際には、M&Aはさほど増えていない。雇用助成金などの政府の支援によって、事業売却など再編に至るほど経営状況が深刻化していないことが考え られる。しかし政府の支援は永久に続くわけではなく、成長機会を求めて各社は積極的にM&Aの機会を窺うべきだろう。今後も厳しい状況が続くが、逆にいえば厳しいからこそ各社の経営戦略が問われる局面と言える。
- 長橋 賢吾
- ITアナリスト・博士(情報理工学)
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