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盤石なサポート体制を確立し、デスクトップ仮想化へスムーズに移行

Embarq Goes Virtual, Carefully By Bob Violino

SaaS/クラウドコンピューティングや仮想化など、最新の技術を社内の情報システムに積極的に導入する米国企業は多い。新しい技術ゆえ、成功のノウハウは乏しいが、それでも米国企業は試行錯誤しつつ、何とか成功させようと知恵を絞っている。一方、新技術が普及することで、今までになかった新たな課題への対処を迫られることもある。今号ではCIO INSIGHTから「デスクトップ仮想化」「ソーシャルメディア」という2つの新技術に関する記事を取り上げる。新技術に正面から向き合う米国企業の姿勢は、国内企業にとって参考になるはずだ。(本誌)

運用管理の改善とコスト削減を狙い、デスクトップ仮想化に関心を寄せる企業が増えている。デスクトップ仮想化とは、データセンター内のサーバー上で仮想マシン(VM)を動かし、エンドユーザーがネットワークを介してそのクライアント環境を利用する仕組みだ。

こうした新しい方式への移行に際しては、クライアント端末を利用するエンドユーザーに相当な変更を強いることになる。IT戦略を統括する責任者がそのことを理解せずにデスクトップ仮想化の導入を進めると、大きな問題を招きかねない。

地域・長距離電話とインターネット接続サービスを提供する米電話会社のエンバークは、3000台に及ぶデスクトップPCの更新時期を控え、デスクトップ仮想化を使ったシンクライアント環境への移行を決断した。移行にあたって同社の経営幹部がもっとも重視したのは、エンドユーザーの利便性の確保だった。エンドユーザーがデスクトップ環境の変化に対応できるか、会社が十分なサポート体制を準備できるかなどをつぶさに検討した。

万全なサポート体制を整備し
利用者の移行負荷を低減

「最大の課題は、どこの部署から移行を始めるかを決定することだった」と、同社のインフラサービス担当バイスプレジデントであるバイロン・クライマー氏は振り返る。「ある日突然、『今使っているPCを取り上げます』と言ったら、エンドユーザーが反発するのは目に見えている。新技術をスムーズに導入するには、綿密な計画を注意深く実行しなくてはならない」とクライマー氏は指摘する。

検討の結果、まずはIT部門から実験的に新しいクライアント環境に移行することを決定。その後は段階的に対象部門を拡大していった。選定した部門に対しては、新しいクライアント環境がいかに簡単に使えるかのデモンストレーションを欠かさなかった。「エンドユーザーに実際に体験してもらい、彼らからフィードバックを受けることで、移行へのノウハウを多く学べた」(クライマー氏)。

エンドユーザーをきちんと支援するため、当然のことながらサポートスタッフの体制を整えることも計画の1つに含んでいた。エンバークでは、ヘルプデスクはIT部門の管轄下にあり、IT部門への試験導入プログラムの段階から参画して準備を進めた。「デスクトップ仮想化という新技術の採用により、クライアントに関わる問題の解決方法が従来のスタンドアロンPCの場合から大きく変わる。スムーズな移行を実現する上で、エンドユーザーからの質問に、ヘルプデスクがきちんと答えられるようにしておくことは非常に重要だった」(クライマー氏)。さらにデスクトップ技術者が、仮想化環境での運用管理に関するトレーニングを十分に受けられるように配慮していたという。

その他の工夫としては、クライアント環境を稼働させるサーバーの運用管理と、クライアント端末の運用管理の担当者を明確に分けたことが挙げられる。具体的には「デスクトップ技術者は仮想サーバーの運用管理をしてはいけない」「サーバーを担当するシステムアドミニストレータはデスクトップの設定をしてはいけない」というルールを定めたのだ。「もし1人の担当者が双方を兼任すると、負荷が集中してしまい、結局はエンドユーザーへのサポートに支障をきたすと判断した」とクライマー氏は説明する。

図 新しい技術の本格導入を成功させるための3つのポイント
図 新しい技術の本格導入を成功させるための3つのポイント

場所を問わず作業環境を統一
データのバックアップも容易に

エンバークがデスクトップ仮想化の導入に踏み切った大きな理由の1つは、スタッフの在宅勤務を容易にすることだった。同社は多くの従業員に在宅勤務を許可している。自宅や外出先からでも、データセンターのVMにアクセスするだけで、オフィスと同等のクライアント環境を利用できるのは、同社にとって大きな魅力だった。「自宅に持ち帰ったシンクライアント端末や、自宅にある個人所有のPCを利用してスタッフが作業できるという柔軟性が得られた」(クライマー氏)。在宅勤務の促進によって通勤費やオフィスの光熱費といったコスト削減効果も見込めるとクライマー氏は期待している。

信頼性の高いクライアント環境をエンドユーザーに提供するという観点からも、デスクトップ仮想化にはメリットを感じていた。

というのも、同社の従来の環境では、クライアント端末のデータをすべてバックアップするシステムを用意していなかった。ネットワークの帯域や、個々のクライアント端末のハードディスクなどのリソースにかかる負担が大きくなると判断していたからだ。このためユーザーからはしばしば次のような嘆きの電話がかかってきた。「PCのハードディスクがクラッシュして困っている。なんとかして重要なファイルを取り戻さないといけないのだが、システム側でバックアップはとっていないだろうか」。

同社はデスクトップ仮想化に移行することで、これらの課題を解決。念願のバックアップサービスの提供が可能になった。すべてのクライアントのデータをセンターで一元管理するため、ネットワークや端末に負担をかけずにバックアップできるようになった。

セキュリティ強化と
省電力化も実現

セキュリティ強化もデスクトップ仮想化に移行する原動力となった。「デスクトップ環境をデータセンターの内部に置くことにより、セキュリティに関するさまざまな課題を解決できる。データを常に我々の監視下に置くことができるからだ」とクライマー氏は説明する。「デスクトップ仮想化の導入により、思っていた以上にクライアント端末をコントロ−ルできるようになった。たとえば、シンクライアント端末のすべてのポートも監視できている。つまり各ポートを経由してUSBメモリーやプリンタに送られるデータも逐次把握できるようになったのだ」。

デスクトップ仮想化とシンクライアント端末で実現する新しいクライアント環境は、同社が推進する「グリーンIT」への取り組みにも合致している。新環境への移行によって、消費電力、ひいては二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとクライマー氏は考えている。「当社は環境問題に非常に気を遣っている。CO2総排出量の削減は、当社のグリーンITへの取り組みにとって大きな助けとなる」と期待を込める。

従来のクライアント端末では、利用者の離席中など、端末の処理性能を使用していないアイドル時間の無駄が気になっていた。複数の仮想デスクトップをサーバーで集中運用する新しいシンクライアント環境は、ハードウェアリソースの使用状況を監視し、負荷の増減によって必要最小限のサーバーに処理を集約するなどリソースの使用率を向上できる。さらに、バージョンアップごとに効率が向上してきているサーバー運用管理ソフトウェアなどを利用し、「クライアント端末の電力消費量を40%削減できると期待している」(クライマー氏)。

本記事は米国の有力ITメディア「CIO INSIGHT」(提供はZiff Davis Enterprise)の記事を翻訳したものです。
ⓒ2009 Ziff Davis Enterprise, Inc.

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