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技術力の活用とコスト削減が今後のカギ[新日鉄ソリューションズ( 証券コード 2327)]
新日鉄ソリューションズの強み
NSSOLの前身は、新日本製鐵(以下、新日鉄)が情報子会社として1980年に設立した、日鐵コンピュータシステムである。ユーザー系情報子会社の特徴は、一般に親会社への依存度の高さにあるが、NSSOLのそれは意外に低い。08年度の連結売上高1615億円のうち、新日鉄向けに提供しているシステム開発・保守・運用サービスは16.1%に過ぎない。
一方、新日鉄の情報子会社なので製造業向けのシステム開発がメインかというと、それも違う。業種別に見た時、最も売上比率が大きいのは製鉄でも製造業でもない金融業であり、売上高の14.9%を占める。畑違いの業種向けのシステム開発に参入できているのは、新日鉄向けシステム開発で培ったノウハウが、金融やサービスなど他業種に応用可能であるからだ。
具体的には、(1)製鉄システムで利用する科学技術計算と金融、特に銀行の市場予測、リスク管理、与信評価といった金融工学分野のノウハウに共通点があること、(2)製鉄と金融ともに瞬時に大量のデータを誤りなく処理・加工する必要があること、であり、これらの強みを活かして、同社は製鉄システムから金融・公共・サービスへと、幅広い分野に横展開している。
今後の成長戦略をどう描くか
上述の2つの強みはNSSOLだけが有する競争優位かといえば、そうとは言い切れない。例えば高速に大量のデータを扱うミッションクリティカル系のシステムに、NSSOLはオラクル社のデータベースをメインで利用している。同社とオラクルとの関係は1991年の戦略的提携契約に始まり、以来、オラクル製品の日本での販売代理店として最大級の売上高を誇っている。
この間に培ったノウハウは他社には簡単に真似できないとしても、オラクル製品自体の機能、性能の向上も進んでいる。そのため、よほど大規模、あるいは高性能を求められる案件でなければ、オラクル製品を使ったミッションクリティカル・システムは、他社も構築可能だ。
これを突き詰めれば、これまでNSSOLは新日鉄向けシステム開発で培った大量データ処理・科学技術を元に、そのノウハウを他社、他業種に転用することで成長してきた。今も技術力では定評があるが、景況感が不透明かつ国内のITサービス市場が成熟化する中で、技術力をどう売上・利益に結びつけていくのか、ここに同社の企業価値を占う要因があると考えられる。
新日鉄ソリューションズの業績動向
こうした点を踏まえて、同社の業績について追ってみよう。
同社の事業は、(1)製造業や金融などへのコンサルティングや、システム開発を主体とする業務ソリューション、(2)オラクルのデータベースなどのプロダクト提供やシステム基盤構築を実施する基盤ソリューション、(3)アウトソーシングや運用サービス、データセンターなどを提供するビジネスサービス、から構成される。
業務ソリューション、基盤ソリューションには新規案件が多く、かつ図1に示すように売上高に占める比率も高い。08年度の売上高に占める業務・基盤ソリューション比率は70.4%になる。親会社向けの売り上げが多くを占める一般的なユーザー系の情報子会社と比べて、顧客のIT投資動向、景気動向に左右されやすい傾向が強い。
業務・基盤ソリューションについて、同社は、これまで培った大量データ処理を応用したBI(Business Intelligence)ソリューションの提供、基盤サービスで培った構築技術を応用したクラウド・コンピューティングサービス「absonne(アブソンヌ)」など、技術力を活かした製品を、水平展開ソリューションとして提供している。
いずれも高い技術力に裏打ちされたサービスであるものの、オラクル製品と同様に同社が独占的に提供しているわけではない。景気の影響も受けるので、これらによる売上高の大幅な伸長を見込むのは楽観的である。業務・基盤ソリューションについては、今期1030億円、来期は1058億円の微増を予想する。全社売上高は今期1500億円(前年比▲7.1%)を底に来期1536億円(同+2.4%)という見方である。
一方、継続的な契約が大半のビジネスサービスは、景気変動の影響は軽微であるものの、業務・基盤ソリューションで獲得した顧客数の影響を受ける。
今期を底に来期は回復へ
売上高が大きく伸びないのなら、コストを削減するのが常道だ。図2にNSSOLの売上原価推移を示した。売上原価に占める外注比率は、08年度実績35.9%と、業界平均に比べ高い傾向にある。これは顧客向けシステム開発について、同社がパッケージをそのまま適用するのではなく、外注を利用してある程度オーダーメードで提供する部分が多いためと筆者は考えている。
オーダーメードなので顧客の満足度は高いが、NSSOLにとっては(1)不採算案件の可能性、(2)外注費の増加、というリスクを伴う。実際に、前期は4億円の不採算案件によるコストオーバーランを計上。今期はプロジェクト管理を徹底し、外注費の削減を図る。
これを踏まえた営業利益はどうか。今期は厳しい状況が続き、前年比 ▲16.6%の96億円を予想するものの、今期を底に来期の増益は可能と考え、前年比+12.5%の108億円に回復すると見る。オーダーメードは今後ともゼロにはならないが、共通化できる点は共通化し、徹底的なコスト削減がどこまでできるかが今後の同社のポイントと考えられる。
新日鉄ソリューションズの理論株価
最後に同社の理論株価について考えてみよう。今期の営業利益96億円から算出されるEPS(1株当たり純利益)は、100.5円、これに情報・通信セクターの平均PER(株価収益率)である15倍を掛け合わせれば理論株価はおよそ1500円、8月26日終値1647円とほぼ同じ水準であり、株価は今期の業績は織り込んでいると考えられる。
一方、来期の営業利益108億円から算出されるEPSは122.6円。PER15倍を適用すれば理論株価は1840円となり、来期の水準はまだ織り込んでいないとも考えられる。
- 長橋 賢吾
- ITアナリスト・博士(情報理工学)
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