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DB技術の進化を紐解く―Oracle 11g R2、その実力を解剖する Part 1
図1-1 Oracle Databaseの進化の経緯過去30年あまりの歴史の中で、さまざまな機能を融合してきた。
10g、11gの「g」はグリッドコンピューティング技術を意味する
Oracle Database 11g Release 2(以下、11g R2)。米国では9月1日、そして日本では9月14日に発表した最新版DBMSである。
1977年に設立した米オラクルが、最初にDB製品を市場に投入したのは79年のこと。以来、「既存資産の継承」と「新技術の融合」を大命題とし、性能改善や機能強化を図りながらバージョンアップを繰り返してきた(図1-1)。今日までの30年あまり、DB製品を中核にビジネスを手がけてきたオラクルには、多くの企業のデータを守り続けてきたという自負がある。この実績を別の側面から見れば、責任や期待が他のデータベースベンダーの比ではないということも言えるだろう。
今回の11g R2の開発テーマは「Lowering IT Costs」、すなわち徹底したコスト削減へのコミットにある。技術革新によって情報システムに構造的変革をもたらし、攻めの姿勢による、積極的なコスト削減を推し進めることに主眼を置いたのだ。
イメージしやすいハードウェアについて言えば、次のような削減効果を見込んでいる。
- サーバー関連コストを1/5に
- ストレージ関連コストを1/12に
これらは机上の空論ではなく、論拠を持った目標値である。
劇的なコスト削減を実現する中核技術となるのが仮想化だ。11g R2には、物理層の仮想化のみならず、論理層の仮想化までも視野に入れた様々な機能を実装している。Oracle Databaseは10番目のメジャーリリースから「g」の文字が付与されているが、これは仮想化を具現化するGrid Computing技術を積極的に製品に融合する姿勢に由来する。
つまり、グリッド=ネットワークを介して複数のプロセサやストレージなどを連携させて仮想的に高性能のコンピュータ資源を作り、必要なだけ処理能力や記憶容量を取り出して使えるコンピュータシステムだ。安価なサーバーと安価なディスクでハードウェアを構成しながら、高い性能、可用性、信頼性を担保する。11g R2にも踏襲され、さらに磨きをかけた「g=グリッド」関連技術のイノベーションが、コスト削減に大きく寄与するのである。
RACの機能強化でリソースの最適化を加速
11g R2が備える特徴として、まず筆頭に挙がるのはRAC(Real Application Clusters)機能の進化である。
RACとは、複数のOracleインスタンス(サーバーで起動するプロセスとメモリー空間のセット)をクラスタ構成にする技術である。要は、時々の負荷に応じて、データベース処理を担うノードを自在に増減させる機能である。受発注システムの利用頻度が高い昼間はこれに3ノード割り当て、売上集計の処理が集中する夜間はこれに2ノード割り当てる、といった柔軟な運用が可能だ。当然、同一のアプリケーションに対して複数のノードを割り当てて分散処理しても、データの一貫性は保たれる。こうしたグリッドの技術を活用して具現化する柔軟なプラットフォームを当社はグリッドインフラストラクチャと呼んでいる。
RACは前バージョンにもあった機能だが、R2はさらにブラッシュアップを図った。具体的には、多数のサーバーをグリッドインフラストラクチャで統合管理することで、「複数のRAC」に自動的に物理サーバーを割り当てることが可能になったのだ。より広い範囲でリソースの最適化を図ることができ、ハードウェア投資削減と運用負荷軽減の観点から大幅なコストダウンをもたらす(詳細はPart3)。
RACの機能強化の一環として「RAC One Node」と呼ぶオプション製品も追加した。これは1ノード構成で動作するシングルインスタンスDB(要は単独のDBサーバー)をRAC環境に統合/集約するもので、これも徹底したリソースの共有、最適化を推し進める上で重要な役割を果たす。
独自の圧縮技術でデータスペースを効率化
データスペースの効率化もコスト削減の重要なポイントだ。まず、データの圧縮について言及しよう。
Oracle DBは元来、データの圧縮についてユニークな手法を採用している。圧縮されたデータを元の行の状態に展開するのに必要なメタデータをブロックに内包した状態で内部流通させるのだ。処理も圧縮した状態のままで行い、アプリケーションに結果を返す直前にはじめて行の状態に戻す(図1-2)。他のDBは一般的に、圧縮メタデータをブロック外部に持つため、当該データにアクセスする都度、追加I/Oが生じてパフォーマンスを上げにくい。
DBにおけるデータ圧縮はこれまで、データ更新が伴うトランザクション処理に適用しにくい面もあったが、Oracle Databaseではアルゴリズムの改善によってOLTP(オンライントランザクション処理)にも適用可能な技術へと進化させた。これが11gから採用した「Advanced Compression」と呼ぶ技術である。
データを圧縮した状態で内部流通させる仕組みは、スペース効率の向上だけがメリットではない。DBバッファ/キャッシュで使うメモリーを削減し、結果としてキャッシュヒット率向上によるパフォーマンス向上につながる。1つのブロックに格納されるレコード数が増えれば、検索時における読み込みブロック数が減少し、これもまた性能向上に寄与するのである(図1-2)。
オプティマイザの高度な実行プラン作成、自動的な暗号化処理、効率的なデータ圧縮など1つのSQL実行の中にも多くの高度な処理が内包される。特に圧縮状態にあるデータブロックを内部処理させるデータ圧縮の仕組みは、I/O削減やメモリー利用効率向上をもたらしパフォーマンス向上に寄与している
ストレージを仮想化しファイルを最適配置
次に、ストレージの効率化に話を移そう。ここで要となるのが、Automatic Storage Management(ASM)である。複数のストレージ(ディスクアレイ)を仮想化する機能に加え、ストレージ間でデータファイルを再配置する機能を備える。
ストレージ仮想化とは、複数のストレージを束ねて仮想的なストレージプールを作成し、物理構成を隠ぺいする技術である。ストレージの種類、配置、容量などに関わらず、必要に応じて必要な容量のストレージを利用できるようになる。それも安価なディスクドライブでいい。
ASMは複数の物理ディスクを束ね、それを論理的なディスクグループとして扱う。そこに制御ファイル、データファイル、一時ファイル、REDO(更新の差分)ログといった各種データベースファイルを格納するが、その際、グループを構成するすべてのディスクに対してストライピング(分割同時書き込み)するのが特徴だ。この結果、ディスク全体のファイル配置は均一化される。
11g R2のASMにおいては、データベースファイルだけでなく、ファイルシステム領域も一括して管理する「ASM Cluster File System」(ACFS)をサポートした。これにより、ソフトウェアバイナリやログトレースなど従来はASMの管理外にあったファイルも併せてストライピングされるのが特徴である。
ストレージ環境の設計においては従来、表領域やインデックスなど用途別にディスクを区別するのが一般的だった。この物理設計のフェーズはストレージ管理者のスキルに依存しがち。必要なディスク性能/容量を事前に推定するのは難しく、実際にはディスク使用量に偏りが生じてスペースのムダを発生させていた。
ディスクグループ内ですべてのデータベースファイルの配置を自動最適化するASMは、ディスクスペースを効率的に使えるのに加え、I/Oバランスも均等化されるので、結果としてパフォーマンス向上にもつながる。この機能は物理ディスクを増設する際にも、都度有効に働く。
ASMは、前述したRACとの組み合わせで、企業システムを支えるプラットフォーム全般に多大な可用性、そして柔軟性をもたらすことになる。RACやASMをはじめとするOracleの機能がシステム内のどこで動いているかを俯瞰したのが次ページの図1-3である。
以前のOracleは本番DBサーバー上で稼働する1インスタンスだった。現在は、本番APサーバー上のインメモリーDBから、DBサーバー上でのクラスタリング、ストレージの仮想化、データの圧縮/リカバリ、テスト・開発環境、災害対策サイトまで、カバレッジは広がっている
進化したインメモリー技術
キャッシュ活用で性能向上
11g R2ではもちろん、パフォーマンスの強化も図った。ハードウェアの潜在能力を最大限に引き出し、結果としてユーザーが高いコストパフォーマンスを得られるようすることが我々のミッションでもあるからだ。
例えばバッチ処理に6時間、クエリーに30分かかる企業があるとしよう。解決しようにも、高価なハードの追加導入が不可避となれば、多くは二の足を踏んでしまう。ここで、バッチ処理を20分に、クエリーを10秒に短縮するような技術的ブレークスルーがあれば、企業は抜本から業務プロセスを見直すことができる。
そんな取り組みの1つが、In-Memory Parallel Queryである。昨今、PCサーバーはプロセサのマルチコア化や、メモリーの大容量化が加速している。これらのリソースを活用し、従来は、SMP(対称型マルチプロセシング)構成の高価なハイエンドUNIXサーバーでなければできなかった並列検索処理をインメモリーで実現するのがIn-Memory Parallel Queryである。
これまでのOracle DBはメモリー領域をソートやジョイン、つまり表を操作する領域として扱ってきたが、ここにきての大容量化と低価格化というメモリー事情の変化を受け、キャッシュ用途で積極的に活用する方針に切り替えた。先に触れたRACとデータ圧縮技術の組み合わせにより、3台のPCサーバーで1TB超のデータをメモリー上で処理することも可能である(詳細はPart4)。
計画停止も不要な環境を
運用にもカバー領域広げる
システムの運用や維持管理の局面においても、11g R2はコスト削減に直結する機能を備えている。
代表例の1つが、Online Application Upgradeである。これはシステムを止めずにアプリケーションの更新やパッチ適用に対処する機能であり、いわば計画停止すら不要にしてしまおうという発想の下に実装したものだ。この機能は当社にとって長年の夢。会長兼CEOのラリー・エリソンが数年前から開発陣に指示し続け、やっと最新版で組み込むことができた。
アプリケーションを更新したりパッチを当てたりする際、従来はシステムを一旦停止し、データベースの各種の定義変更やそれに伴う動作確認といった作業が必要だった。365日24時間動かし続けなければならないシステムの場合は、まったく新しいシステム環境を別途用意し、並行稼働させた後に切り替えるのが一般的。当然ながら、多大な費用が発生することにつながっていた。
これに対し、Online Application Upgradeは、DB内に「エディション」と呼ぶ仮想的なDB領域を複数併存させることで無停止による切替を可能としている(図1-4)。ビューを介してテーブルの変更を隠蔽する技術とも言えるだろう。新環境向けのエディションを作成してアプリケーション更新(あるいはパッチ適用)を実施し、正常な動作確認がとれた後に切り替える。この一連の作業を、実データが格納された本番用DB内でできるのである。E-Business SuiteやSiebelといった当社製アプリケーションに限らず、他のアプリケーションでももちろん利用可能だ。
本番DB内に「エディション」と呼ぶ仮想的なDB領域を複数併存させることで、無停止による切替を可能としている
もう1つ、Active Data Guardについて触れておきたい。これは、障害対策サイトなどに、本番データベースの同期レプリカを構成するオプション製品である。REDO情報のみを圧縮(Advanced Compression)して送信するため、遠隔サイトとの間を結ぶ通信回線の帯域を抑えることができる。広域WANなどに使う1Gbpsの回線は決して安くはない。Active Data Guardであれば、100M bpsあるいは10Mbpsを何本か束ねた回線でも十分に機能する。Oracle DBだけを使っている限りは、比較的高価なディスクミラーリングシステムを導入しなくても済むメリットがある。
待機系とはいえ、データベースの読み出し操作などは可能であり、さらに一時的にテスト用途で使用する「スナップショット・スタンバイ」機能も備える。待機系に負荷を分散することで、本番システムのパフォーマンスを高めることができる。
統合管理ツールを提供
利用者視点で細かい配慮
ここまでに概観してきた機能は、Oracle Database 11g R2のごく一部の特徴に過ぎない。単なるSQLエンジンの枠をはるかに越え、ミドルウェアやストレージ管理の領域にもどんどん守備範囲を広げている。それだけ全体の複雑度は高まり、運用にかかる人手や時間、すなわちコストがかかると感じるかもしれない。実際は違うし、むしろ運用負荷を軽減する統合管理ツールのEnterprise Managerをも用意する(図1-5)。
アプリケーションやミドルウェア、さらにサーバーOS、ストレージなども管理対象に運用業務を効率化する
データベースのみならず、アプリケーションやミドルウェア、さらにサーバー、OS、ストレージ…。企業システム全体の構成要素を管理の対象とする。構成管理や挙動の監視などに基づき、障害の切り分けやパフォーマンスのチューニングといった局面で有効に働く。とりわけOracle DBの内部ロジックについては、当社がもっとも熟知しているわけであり、キメ細かい管理が可能である。より効率的な、そして自律的な運用体制は、大幅なコスト削減とは切り離せない関係にある。
もっとも、Enterprise Managerは、システムの安定稼働のみを目的としたものではない。構成する製品群の中には、例えば、データマスキング作業を効率化するモジュールなども用意している。これは、テスト用データを作成する際、業務データ中の個人情報の匿名化などを迅速に処理するもの。テストデータの精度向上と個人情報保護の両立を支援する。
企業システムに求められる要件は、高度化、複雑化する一方だ。そんな中、システム開発・運用の現場で、担当者は何に困っているのか。常にその視点を忘れずに、オラクルは可能な限り技術のイノベーションで応えていこう。そうした想いが、Oracle Databeseを中核とする製品ファミリに結実している。
- 三澤 智光
- 日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長
- データセンター見積もりは「DC完全ガイド」
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