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ノーカスタマイズに強み、会計パッケージで次の成長を目指す[ワークスアプリケーションズ(証券コード 4329)]
ワークスアプリケーションズの強み
ワークスは、人事,会計、SCMといった企業の基幹システムで利用されるERPパッケージを開発・提供する。その最大の特徴は、カスタマイズの必要がないことだ。通常、ERPパッケージを導入する場合、企業固有の人事制度や会計制度などの業務内容に適応させるため、パッケージの修正が必要になる。これがカスタマイズだが、標準で提供されるパッケージ機能と業務内容と間に乖離があるほど、その工数および導入コストは増加する。ERPの導入費用が高騰する要因だ。
これに対しワークスは、同社のERPパッケージ製品「COMPANY」に様々な企業の商習慣や業務内容特性を取り込み、カスタマイズなしで対応することを基本コンセプトに据える。機能追加や法改正などの制度変更に対しては、定額の保守料金(年間でライセンス料の15〜20%程度)に全て含む。
HRでの成功パターン
ノーカスタマイズ+定額メンテナンス方式の最大のメリットは、コスト削減。特に大企業の場合、固有の業務内容を有するケースが多く、オーダーメード開発あるいはERPパッケージ+大規模なカスタマイズで対応せざるをえなかった。ワークスの場合、ノーカスタマイズ+定額メンテナンスであるため、従来の手法と比べて3分の1から5分の1の費用で導入可能という。
このコンセプトのもと、同社は1996年に人事(HR)パッケージを販売。「うちのような複雑な人事・給与体系の会社に、カスタマイズなしでパッケージが入るわけがない」という常識を覆し、2000年前後からHRの導入件数を拡大させてきた。経営戦略論でいう模倣困難性を活かして、2009年度(2009年6月期)におけるHRライセンス売上高は59.9億円まで拡大している。
大手企業向けの人事パッケージ市場の規模が100億円とされる中、同社のシェアは約60%になる計算だ。しかし2006年以降、HRの新規導入件数が伸び悩んでいる。ワークスのシェアが60%超え、かつ市場自体の拡大余地も乏しいことが理由として挙げられる。今後も官公庁などへのHR導入余地はあるものの、大きな伸長は見込めないと考えるべきだろう。
会計が今後の成長のカギ
HRパッケージに続く同社の次の一手は、2004年末から販売を開始した会計パッケージだ。企業の財務会計・資産管理・購買管理などを、HRと同じノーカスタマイズ+定額メンテナンス方式で提供する。同社にとってのメリットは単価の高さである。HR、会計それぞれの2009年度のライセンス金額を、導入件数で単純に割った1社当たり単価は、HRが2842万円、会計が4413万円と1.5倍の水準。企業の動脈とも言える会計システムの方が高い単価なのは当然とも言えるだろう。
とはいうものの、HRでの成功体験をそのまま会計で活かせるかといえば、そうともいかない。もっとも大きな障壁の1つが、大企業向け会計システムで圧倒的なブランド力を持つSAPの存在だ。SAPは20年以上にわたってERP製品を提供しており、大手企業での導入実績、ノウハウ、ブランドともに、ワークスの会計を凌駕する。日本IBM、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所などパートナー陣も強力だ。さらにERP市場でのシェア獲得を狙う日本オラクルなど、会計分野の競合相手は多い。この環境のなかで、ワークスは会計を販売してまだ5年、パッケージもHRほど成熟していない。
ワークスの業績動向
この点を踏まえて同社の今後の業績について考えてみよう。同社の売上は、1)HR,会計、その他のプロダクト、2)保守、3)サポートサービス、4)SI事業から構成される。保守、サポートサービスはプロダクトの売上によって増減するため、本質的にはプロダクトがどこまで伸びるかがポイントになる。HRに関しては、前述のようにマーケットシェアの6割を占めているので安定した収益が期待できる半面、大きな伸長の余地も少ないとみられ、10年度は09年度並みの推移(60億円)を予想する。
ポイントは会計の売上高動向だ。会社計画では、08年度は景況感の悪化で17.2億円(前年比▲33.7%)と大幅に落ち込んだものの、今期は引き合いが堅調として08年度並みの26億円程度の売上を見込んでいる。ただし企業がIT投資に慎重であることを考えれば、やや楽観的とみられ、筆者は21億円を予想する。これにより会社経常利益の計画37.8億円を下回る28.5億円を予想する。
ワークスの理論株価
では、中長期的にはどうか。2期先の2012年の会社中期計画では、プロダクト売上高150億円(08年の実績は107.9億円)、経常利益54億円を計画している。その牽引役は会計になる計画だが、現時点では極めて高いハードルだ。ただし新しい製品であるため、乗り越えるのが不可能というわけではない。着実に会計案件をこなして、そこで得られた知見をパッケージに盛り込み、さらに次の案件につなげるというサイクルを回せれば実現は可能とみる。
次に同社の理論株価を考えてみよう。2010年度の筆者予想経常利益28.5億円から算出されるEPS(1株当たり純利益)は3731円。ソフトウェアセクターの平均PERを17倍として、算出される理論株価は6万3442円。9月18日終値6万3200円であるので、今期の業績の下振れはある程度織り込んでいるともいえるだろう。むしろ、会社計画通りに達成できれば上値の余地はあるかもしれない。一方、来期の予想EPSは4877円、PER17倍で理論株価は8万2900円、まだ来期の水準まで織り込んでいないとみられる。
最後にSaaS、クラウド時代において、ライセンス販売を主力とするパッケージはもはや時代遅れと言われるかもしれない。実際、ワークスもクラウドサービスを検討しており、いずれはクラウドで提供するだろう。
ただし基盤がSaaS・クラウドになっても、同社が提供する基本コンセプトであるノーカスタマイズは大きく変わらない。そしてノーカスタマイズを実現するノウハウと人材を今後とも維持できれば、SaaS・クラウドといえども、同社の競争優位は揺らがないというのが筆者の見方だ。
- 長橋 賢吾
- ITアナリスト・博士(情報理工学)
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