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ドットコムの新進気鋭が集結、TechCrunch50現地詳細レポート(前編)
新生ドットコム企業の祭典、「TechCrunch50」が今年も開催された(2009年9月14、15日)。世界で2番目に多く読まれているブログ、そして、ITビジネスやサービスの話題を取り扱うテックブログとして最も有名なTechCrunchが、毎年9月に米サンフランシスコで開催しているイベントだ。アジアを含む世界の国々から参加した起業家やエンジニア達は、寝食を忘れて作った新サービスを手に、快晴の空の下、会場のサンフランシスコ・デザインセンターに集まった。
TechCrunchとは
「TechCrunch50」は今年で3回目を迎える。ブログ「TechCrunch」創始者のマイケル・アリントン氏と、数々のベンチャーを立ち上げ、現在は人力検索エンジン「マハロ(Mahalo)」のCEOであるジェイソン・カラカニス氏が2007年から開催している。直近1年の間に新しく開発されたITサービスを8つのカテゴリに分け、投資家や成功起業家を審査員に迎えて将来性や先行優位性などを採点し、最優秀賞を選抜する。
初回(07年)はサンフランシスコ中心部のパレスホテルで開かれた。その高い入場料(約17万~25万円程度)にもかかかわらず、回を重ねるごとに人が増え、現在では参加者数が2000名を超えた。ニューヨークやロサンゼルスに比べると、サンフランシスコには大人数を収容できる施設が乏しい。マックワールド・エキスポの開催などで有名なモスコーニ・センターくらいなものだ。そのモスコーニの年間スケジュールは常に満杯で、TechCrunch50は昨年の2回目以降、やや宿命的に倉庫街の家具売場を改装したイベントスペース「サンフランシスコ・デザインセンター」で開催されている。
この種のカンファレンスは、常に朝が早い。プレゼンテーションは現地時間の9時からスタートするが、8時前にはケータリングで用意された朝食を片手に、出場予定の応募者、デモピット(出展ブース)スタッフ、聴衆、メディア関係者、審査に当たる投資家らが会場の随所で談笑を交わしている。常々、国際会議や米国の会合で人々のコミュニケーション(俗にネットワーキングと呼ばれるが)が日本よりも盛んなのは、西洋人のオープンマインドもさることながら、地理的な事情も影響しているからなのだろう。日本ではIT企業の多くも東京都内に集中しているため、地下鉄を乗り継げば数十分で商談に行くことができる。これに対し、広い国土に点在する米国のIT企業や海外企業にとっては、移動だけで1日以上かかるので、TechCrunchのようなカンファレンスは、商談相手やビジネスアイデアを見つける絶好の機会なのだ。
時計の針が9時を少し回った頃、メインステージには、アリントン氏の姿があった。「会場のネットの調子はいいかい?」と尋ねる彼に、聴衆らは親指を立てながら「いいよ」と口ぐちに応える。この後も、事あるごとに、アリントン氏はネットの調子を聴衆に尋ねていたのだが、頻繁に質問を繰り返す彼には理由があった。
国際イベントでは必須、会場内の無料インターネット・サービス
日本とは異なり、米国や海外のカンファレンスでは、ネットにつながる無線LANサービスを提供することが、参加者サービスの一環として常態化している。テックイベントともなれば、参加者の多くはノートPCやモバイルブロードバンドを携帯しているが、海外からの参加者にとって、イベント期間中ずっと携帯電話会社に高いデータローミング料を払ってネットにつなぐのはストレスだ。したがって、国際イベントでは聴衆へのサービスの一環として、インターネット接続サービスを無料で提供するのだ。日本のイベントで、無線LANサービスがあまり提供されないのは、国際的でないからかもしれない。
ただし、無線LAN環境を配備しても、さすがに2000人が一堂に会すると、アクセスポイントがいくらあっても電波が輻輳してしまう。昨年のTechCrunch50では案の定、無線LAN電波の輻輳が起きてしまい、初日の午前中はプレゼンテーションの聴衆やデモピットの出展社は、ほぼインターネットが使えない状態が続いた。事態の深刻さに気付いたアリントン氏は、初日にネット設備を提供したベンダーを“クビ”にし、新たなベンダーに設備をやり直させるという対応を採ったのだ。ネットが使えないと、会場を訪れているメディアや有名ブログもTechCrunchのニュースをアップロードすることができない。ニュースが出なければ、スポンサーの露出も少なくなり、契約不履行とまではいかなくとも、クレームが寄せられることになってしまう。
昨年冬、フランスのテックイベント「ル・ウェブ」をアリントン氏が訪問したとき、彼はそこでも会場のインターネットが同じ理由でうまくつながらず、イベント途中にもかかわらず、早々にホテルに引き揚げて、自室で記事を執筆せざるを得ないという、苦い経験を味わっている。そして、数千人のイベントで、参加者に満足のいくインターネット環境を提供できる、イベント専門のISPベンダーを起業すれば、それだけで間違いなくビジネスとして成功するだろう、と述べているくらいだ。
過去の経験を良薬に、今年のTechCrunchでは無線LANに加えて、聴衆の各席にイーサネット・ケーブルが配備されていた。これなら、仮に電波の輻輳がおきても、聴衆は心おきなくインターネットに接続しながら、プレゼンテーションに集中することができる。
TechCrunchの模様は、生中継動画配信サービス「ユーストリーム(USTREAM)」で生中継された。トゥイッター(Twitter)で日本からの反応を見ていたところ、日本時間で未明1時の開始にもかかわらず、数多くの視聴者がイベントの様子を共有していたようだ。
セッション1:若年層向け&ゲーム
- Penn & Teller
- マジシャンが手品iPhoneアプリを披露。偽物のSMS(ショート・メッセージ)画面を使って、iPhoneユーザーが友人の引いたトランプの目を見ずに当てることができる。
- StorySomething
- 時間の無い両親が、子供のためにオリジナルの物語を作ることができるサービス。一方、プロの作家は、直接、自分の作品を読者に届けることができる。
- Clasemovil.com
- メキシコ発。OECD(経済協力開発機構)の統計では、ラテンアメリカは子供の学力が世界一低い。Webで小学生の子供達の教育を支援する。
- ToonsTunes
- 弾き方も知らない楽器をバーチャルに操ることでき、子供たちは作曲し、SNSで共有ができる。
- Seal Tale
- 韓国発。自分のブログに「シール」と呼ばれる、自分の興味を示すウィジェットを貼りつけることで、共通の興味を持つ者同士、横断的なネットワークを形成することができる。
眠い目を擦りながらプレゼンに聞き入り始めたら、最初に披露されたのがマジック関連の技術である。これで聴衆の眠気を一気に吹っ飛ばす、というのは、なかなか斬新なアイデアだ。Pen & Tellerは2人組のマジシャンで、ラスベガスで劇場公演し続け、全米ネットのレギュラー番組も持っていた。マジックの種明かしもしてくれるので、差し詰め日本で言えば、ナポレオンズのような存在である。被験者にわからないように、iPhone上にあるアプリのアイコンを押すパターンや順番で指示すれば、あたかも電話の向こうに居るマジシャンが、SMSで引いたトランプの目を当ててくれるかのように見える、ユーモラスなiPhone アプリである。
Seal Taleは、子供たちのみならず大人にとっても、ブログを通じてコミュニティを形成するのを助けてくれるツールになるだろう。共通のブログ基盤やSNSサービスを使っていなくても、共通のシールが貼られていさえすれば、互いの発言を共有することができる。我々が子供のころ、チャンネルの少ない地上波テレビ全盛の頃だからこそ成し得た共通体験、全国随所の小学校で休み時間に交わされた「昨夜のアニメ○○見た?」という会話は、Seal Taleのようなツールが触媒になって置き換えられていくのだろうか。現在、韓国語と英語のみのサポートだが、世界で数が多いブログは日本語であるし、日本語のブログ文化とは親和性が高いサービスのように思う。
セッション2:ニューフロンティア
- iTwin
- シンガポール科学技術研究機構が開発した、ファイル共有をするためのUSBデバイス。デバイスは2つがペアとなっており、離れて存在するPC2台にそれぞれを挿せば、共有したいファイルをドラッグ&ドロップするだけで、インターネットを通じて安全にファイルが共有できる。
- Fluidhtml
- 表現豊かなWebサイトを実現できる flashは、SEO(サーチエンジン最適化)できなかったり、Webブラウザの「戻る」ボタンで直前に見ていたところまで戻れないなどの問題が生ずるが、そのような問題を解決した flash用のスクリプトが生成できる。
- Toybots
- 離れたところに存在するおもちゃを、Webブラウザに表示されたキャラクタから動かせる。3GとGPRS(2Gのデータ通信規格)で接続可能。離れて暮らす祖母と孫の会話などに使うことを想定。
- Spawn Labs
- 専用機用ゲームをPC上で遊べるようにするデバイス。家に専用機を置いておき、出先からでインターネット経由でゲームを楽しむことができる。フリーロケーション・テレビのゲーム機版である。他ユーザーとのネットワーク対戦も可能。
- Clicker
- ネット上で流れている映像番組から、"偏向のない"番組表を作成できる「Clicker」。複数動画サイトから情報を収集し、ユーザーに番組批評をさせ共有する。
メールの添付ファイルには容量の上限が設定されているので、大きなファイルの転送には専用のASPサービスを使うのが一般的だろう。しかし、特定の2者間でファイルが頻繁にやりとりされるのなら、もっと効率のよい方法がある。インターネットにつながった端末に、iTwinなるUSBデバイスを突き刺せばよい。VPNやデータの暗号化を施す必要もなく、デスクトップ上で、iTwinのアイコンにドラッグ&ドロップするだけでファイルが遠隔地と共有できてしまう。SEが容易に出向けない、海外や遠隔地の自社拠点とのファイルのやりとりには重宝するツールだろう。パソコンに一切の設定を施す必要がないので、現地にiTwinを郵送して、ユーザにはPCへ突き刺してもらうだけでよい。1ペア(2個)あたり99ドル、2010年前半に販売が開始される予定だ。
Clickr は、Huluに代表される動画配信サービス(インターネット・テレビ)を横断的に取り扱う番組表サービスである。現時点でサービスはクローズド・ベータなので詳細は明らかにされていないが、将来、必要不可欠になるサービスとして、審査員からの評価は非常に高かった。ユーザーの番組批評や番組の評価機能がついていることは明らかにされており、番組の制作者にとっての、視聴率に代わる新たな評価指標となる可能性も高い。
- 池田 将
- コンサルタント/テックブロガー
- http://digitalway.iza.ne.jp/
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